事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 有限会社小川ビル(Z007) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 ビル賃貸、管理
売上高 従業員数 資本金 設立
キーワード 不動産業、ビル管理、ITリテラシ向上


機械オンチの私でもできるとは
まさか思ってもみませんでした。


いつも誰かの手に頼ってばかりいた自社ビルの入居契約書や管理台帳の作成。 それを自分で出来るようにしたいと、2年間教室に通ってパソコンをマスターされた小川さん。 毎年創作活動でヨーロッパに出かけられるご主人との間でメール交換するのが夢だとか。




有限会社小川ビル 小川 孝子さん(57歳)

JR大久保駅前に所有する土地にテナントビルを建設。ビルを管理する有限会社小川ビルの代表を務める。 ご主人の小川英紀氏は東京芸術大学美術学部在籍時に小磯良平の指導を受けた風景水彩画で知られる。

負担をかけるのがいやでパソコンを勉強しようと決心

 JR大久保駅前は、ここ数年の間に大きく様変わりした。駅舎はモダンなデザインに生まれ変わり、駅前にはターミナルや大型商業施設が完成。 週末ともなれば多くの人で賑わう。
 そんなJR大久保駅の北側ターミナルに、最初にできたテナントビルが「小川ビル」。 周辺一帯が区画整理事業の指定を受けたのを機に、土地の所有者の小川さんが6年前に建てた鉄筋5階建てのテナントビルだ。
 現在小川さんは、このビルを管理する「有限会社小川ビル」の代表取締役。テナントとの折衝、契約などを一手に引き受けている。
 「ビル管理の仕事では、たくさんの事務書類が発生します。入居の契約書、テナント管理の台帳、駐車場の契約書、電気・水道の請求書。 書類ではありませんが、駐車禁止の貼り紙や注意書きのステッカーなども作らないといけません。 初めの頃は、それをワープロをもっている主人や娘に頼み込んで作ってもらっていたんですが、いつまでも負担をかけるわけにはいかず、 ずっとパソコンを習いたいと思っていたんです」
 だが小川さんは、機械が大の苦手。家にパソコンはあっても、触ったことすらない。 パソコン教室に通うことも考えはしたが、それがとてつもなく難しいものに思えて二の足を踏んでいた。
 「そんな時、偶然に4階フロアをあるパソコン教室にお貸しすることになったんです。 契約の話し合いなどを通じて教室の方とも懇意になっていたので、思いきってお世話になることにしたんです」

最初不馴れだったローマ字入力、忘れないための宿題も

 小川さんは週1回のペースで教室に通い始めた。最初はワープロソフト(Word)を使って、五十音順にひらがなを入力。 慣れると今度はローマ字入力に挑戦だ。
 「ローマ字なんてもう何十年も使っていないので、最初は戸惑いました。でもだんだんローマ字入力の方が打ちやすくなっていくんです」
 ひと通り文字の入力ができるようになると今度は文章のレイアウト。そして表や簡単なイラストを挿入し書類としての完成度を高めていく練習へ進む。
 「授業では毎週宿題が出るんです。だから1週間ほど間が空いても、習ったことを忘れてしまったりしない。次のステップにも進みやすいんです」
 こうして「Word」が終わると次は表計算ソフト(Excel)。段階をふんで使い方をおぼえていく。
 「授業は上手にプログラムがたてられていて、とても分かりやすかったですね。お友だちにも紹介して、楽しく勉強することが出来ました」
 もちろん苦労がないわけではない。
 「ある程度予備知識があるならともかく、通い始めた頃は簡単な用語すら知りませんでした。 言葉の意味を教えてもらうところからスタートしたので、ひと通り習得するまでには時間もかかりました。 でも苦労したからこそ、身につくものもいっぱいあるんだと思います」

あらゆる書類をパソコンで、今や仕事に欠かせない道具

 2年間、根気よく教室に通った小川さん。今では、簡単な書類なら1時間程度もあれば作れるようになった。もう人の力を借りることもない。
 「電気料金や水道料金の請求書は、「Excel」を使って作りました。 最初に計算式を作っておけば、あとは検針の数字を入力するだけで消費税も含めた請求金額がほんの一瞬で出てきます。 本当に便利ですよね。時間もかからないし、何より計算間違いをしてしまう心配がありません。 それまでは自分で電卓を叩いて集計していましたから、間違っていないかいつも不安でしかたがなかったんです」
 請求書だけではない。例えば物件案内のような、細かい表組みがたくさん出てくる事務書類なども今やお手のものだ。
 「これはこの間作ったばかりの物件案内です。こちらは入居の契約書と駐車場の契約書。 本当なら、こうした書類はみんな不動産屋さんが作ってくれるんですが、最近は自分で作る方が早いのでぜんぶパソコンで作っているんです」
 また小川さんは、パソコンの良いところは一度作ったデータをフロッピーディスクなどに記憶させて、コンパクトに保管できることだという。
 「不意にテナントさんから問合せがあっても、フロッピーからすぐに呼び出せるから即座にお返事ができるんです」

インターネットやデジカメはプライベートでも活躍

 パソコンの操作とソフトウエアの使い方に慣れた小川さんは、仕事だけでなく最近は「Word」で手紙を書いたり、プライベートにも大いに活用している。
 「調べものをするときも、最近はインターネットを使うことが多くなりました。 このビルが不動産会社のホームページでどんなふうに紹介されているのかを確かめたり、何かと重宝しています」
 最近は、デジカメも始めたばかりだ。
 「娘の結婚式の時は全部デジカメで撮って、お気に入りの写真だけをアルバムにしまってあります。好きなものだけ残しておけるし、 画質も現像写真とほとんど変わりません」
 いずれはデジカメで撮影したビルの写真を使って、写真付きの物件案内なども作ってみたいと小川さんはいう。
 「主人はパソコンの操作は知りません。だから今は立場が逆転して、私が主人の仕事に必要なものをいろいろと作ってあげたりしているんです」
 ご主人は、毎年夏の休みを利用してヨーロッパに写生旅行に出かける。いつかヨーロッパ滞在中のご主人と、メールでやりとりするのが小川さんの夢だ。
 「子どもの頃からずっと機械とは縁遠い環境で過ごしてきました。だから私がパソコンを習っているというと昔を知っている友人なんかはみんな驚くんです」
 時間があれば、将来はホームページの作成などにも挑戦していきたいという。




【フロッピーディスク(ふろっぴーでぃすく)】
磁気で情報を記憶する記録媒体。現在は3.5インチが主流。 パソコンでよく用いる外部記憶媒体には、他にMO(光磁気ディスク)、CD-R(記録できるCD)などさまざまな種類がある。
【デジカメ(でじかめ)】
画像を0と1のデジタルデータで記録するカメラ。データをパソコンヘ移し、プリントしたりインターネットでメールとして送ることもできる。 ここ数年の間に価格も下がり、従来のアナログ式カメラに急速にとって変わりつつある。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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