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出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 小林種苗株式会社(Z011) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 農業種苗生産卸
売上高 14億円(H4.1) 従業員数 45名 資本金 3000万円 設立 1948年5月
キーワード 農業種苗生産卸、ITリテラシ向上


机の上のノートパソコン。
これが私の新兵器なんです。


明治43年に創業、以来90年あまりにおよぶ長い歴史を有する小林種苗。 その4代目社長の小林忠子さんは、バンキングシステムのトレーニングでパソコン教室へ。 Excelをマスターし、営業日報システムを自作、販売データを直接一元管理している。




小林種苗株式会社 小林 忠子さん

独自に品種改良を重ねたオリジナルの種子を、国内はもとより世界各国にも輸出する小林種苗。 小林さんはその4代目社長。パソコン教室でのトレーニングを通じてITの可能性を再認識した。

パソコンに占領された社長のデスク

 社長の月末は忙しい。小林社長もまた、例外ではなかった。月末になると取引銀行まで足を運び支払を済ませ、入金を確認するのを常とした。
 だが、昨年から小林社長の月末は、いたって平穏な日になった。 企業決済をオンラインで処理できるバンキシングシステムに加盟。銀行へ、直接出向く必要がなくなったのだ。
 「便利になったもんですよね。机の上にあるコンピュータの操作ひとつで、支払や社員の給与振り込み、海外への送金までできるんですから」
 小林社長は、ITの飛躍的な進歩に、目を白黒させている。
 バンキングシステムの導入にともなって、小林社長の身の回りの様子もずいぶんと変化した。 いちばん変わったのは、デスク回りかもしれない。最新のノートパソコンがならび、バンキングシステムの端末がどっかと腰を据えている。 デスクトップは、さながらハイテク機械に占領されてしまったかのようだ。周囲の社員も、驚きをかくせない。なにしろ小林社長は、大の機械オンチなのだ。
 「でも大丈夫なんです。ちゃんと教室で、パソコンの勉強してきましたから」
 インターネットの技術が駆使されているバンキングシステムを操作するには、パソコンの操作にも習熟しておく必要がある。 小林社長は銀行の紹介で、1年半前から近くのパソコン教室でみっちりレッスンを積んできたのだ。

Excelを使ってやりたかったこと

 レッスンは週1回。「Word」「Excel」をはじめ、メールやインターネットなど、パソコンの基本的な機能やその操作方法をひと通り学ぶプログラムだった。 小林社長は、社長業の合間をぬって通い続けた。
 「先生のマンツーマンで教えていただいたんで、機械が大の苦手な私でも何とか操作をひと通りマスターすることができました」
 レッスンでは、テーマを決めて実際にモノ作りをしていく。例えば一昨年の暮れは、お正月にちなんでWordで「箸袋」と年賀ハガキを作ることになった。
 「きっと教室の先生が気をきかせてくれたんでしょうけど、ホントのことをいえばあんまり関心がなくて(笑)。 内心では、早く「Excel」やってくれないかなと思ってたんです(笑)」
 小林社長が「Excel」を早く勉強したいと思ったのは、「Excel」を使ってやりたかったことがあったからだ。
 「どの取引先に何を何個販売したのか、利益はどれくらいなのか、毎日の営業の売上げ日報を私が直接セールスから報告を受け、 週単位、月単位で集計できるようなシステムを、「Excel」でつくりたかったんです。 パソコン教室に習いにくることになったのは、バンキングシステムの導入がキッカケなんですけど、 本当の目的は先生に相談しながらこのシステムを実現したかったからです」
 「Excel」の授業が始まるや、小林社長は人が変わったように熱心になった。
 「教室の先生からは、目の色が違いますねっていわれました(笑)。 確かに覚えるスピードは、「Word」のときと比べると断然早かったかも知れませんね、ハッハッハ」
 小林社長が待ち焦がれた営業日報のシステムは、昨年暮れにようやく完成。 今では毎日夕方、セールスからの報告を受けその日の売上げを数字でパソコンに打ち込むのが小林社長の日課になった。

現行システムとのドッキングでよりきめ細かい情報管理

 小林社長は、将来的には自作のこのシステムを現行の販売管理や在庫管理のシステムとドッキングさせていきたいと考えている。
 「当社は、野菜や果物の栽培に必要な種子を交配によってつくり出しているいわば「種のメーカー」。製品は海外にも輸出しています。 扱う種子は多品種にのぼり、例えば大根だけでも600種以上あります。 そうした多品種の商品の在庫を効率的に管理するために、10年前に在庫管理と売上げ管理のシステムを導入。 これが当社の本格的なIT導入の先駆けでした。 このシステムと、「Excel」でつくった営業日報のシステムを組み合わせれば、今よりもっと詳細な数字をリアルタイムで管理できると思うんです」
 大の機械オンチという小林社長だが、バンキングシステムをキッカケにしてITに対する可能性に気付き、いまでは積極的にそれを経営に取り入れていこうとしている。

ITへの取り組みはまだ始まったばかり

 小林社長は、この一連の取り組みの中でITのもつ可能性について再認識したようだ。
 「実はパソコン教室の先生にもお願いして、ホームページの制作も手伝ってもらったんです。 最初はどれくらい効果があるだろうかと少し疑問に感じていたんですが、思わぬ反響があったりで驚いているんです。 金額は決して大きくないですが、一般のお客さんからも多数注文をいただいているんです。 新しいルートを通じて、私たちが丹精込めてつくった種が広がっていってほしいですね」
 小林社長は、「Word」「Excel」のレッスンをいちおう終了した。次はメールに挑戦するという。
 「近い将来には、一人に1台のパソコンを実現したいんです。 一人1台端末をもつことで、社内のコミュニケーションを活発にしていきたい。 また販売管理システムに自由に入力できるようにして、 ボタン操作ひとつで売上順にランキングが出るようなシステムができないかなとも考えているんです」




【メール(めーる)】
コンピュータのネットワークを通じてやりとりする電子的な手紙。コンピュータによるコミュニケーション手段として、今や世界中でごく日常的に使用されている。
【バンキングシステム(ばんきんぐしすてむ)】
企業と銀行とをオンラインで結び、ネットワーク上で決済を行うシステム。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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