事例企業 |
進皎不動産株式会社(Z012) |
事例発表日 |
平成15年3月 |
事業内容 |
不動産業 |
売上高 |
- |
従業員数 |
9名 |
資本金 |
1000万円 |
設立 |
1987年2月 |
キーワード |
不動産業、不動産売買・仲介・管理、ITリテラシ向上 |

まず発想を変えてみる。
そこからが始まりだと思うんです。
進皎(しんきょう)不動産は、賃貸に特化した不動産サービスの会社。
不動産会社の多くが長期低迷を余儀なくされる中で、業績好調を維持している。
その好調を支えているのが、実はインターネットだということを多くの人が知らない。
進皎不動産株式会社 前川 豊さん(51歳)
ハウスメーカーの営業として活躍。17年前に賃貸の入居斡旋と管理、集金代行などのサービスを行う進皎不動産を設立。
不動産の賃貸業は、不動産ビジネスの原点というのがポリシー。 |
インターネットで情報武装
不動産の仲介サービス業は、本来いらない業種―。前川社長の口グセだ。だからこそ、情報武装しなければならないというのである。
不動産会社の販売促進としてもっとも多く利用されるのは折り込みチラシだ。
だが前川さん率いる進皎不動産は、ここあしかけ3年、折り込みチラシによる宣伝活動は一切行っていない。
ではどうやって情報武装を実践するのか。前川さんが選択したのが、インターネットだった。
「当社のホームページには、現在400件以上の当社管理物件が登録され、場所、家賃、間取り、タイプなど、さまざまな検索条件で検索できます。
ホームページは、ヤフーをはじめとする国内の代表的なインターネット検索エンジンのほとんどとリンクが張られ、いつでも、どこからでも、
そして誰でもアクセスすることができます。
インターネットでアクセスしてこられた方の成約率は30~40%。昨年が15%でしたから、急速に拡大しつつあります」
実際、同サイトには、全国からアクセスがある。
これまで遠く離れた地域の物件を探す場合、現地に直接出かけ下見をするか、あるいは地場の不動産情報誌に頼るほかはなかった。
進皎不動産のサイトには、転勤や進学で加古川に転居を希望する人のアクセスが引きもきらない。
一方、進皎不動産では、携帯のiモード電話から物件情報にアクセスできる専用のサイトも設けている。
「現場の物件に番号を表示。携帯でその物件番号を入力すると、当社管理物件のすべてについて、
外観の写真とテキストで間取りや家賃などを確認することができます」
まさに、ITが可能にした新しいビジネスモデルということができる。
進皎不動産はこの独自のビジネスモデルによって、ここ数年で大きく業績を伸ばしている。
「私の息子が横浜に転居する際、事前に情報誌を取り寄せてめぼしい物件をピックアップし、現地へ下見にいったところ、
ピックアップしていた物件はことごとく入居済み。苦い経験をした記憶があります。
でももうそんなムダなことをする必要もないんです。ITの力って、ほんとスゴイものだと私自身思っています」
年間1000万の広報宣伝活動
前川さんは元ハウスメーカーの営業担当。17年前に脱サラ、進皎不動産を設立した。
だがインターネットを使った独自のビジモデルを築き上げるまでには、さまざまな曲折があった。
「当社でもかつては、年間を通じて相当な広告宣伝費を支払い、定期的にチラシ広告を打って営業活動をしていたんです」
進皎不動産がインターネットを使った販売促進活動を本格的にスタートさせたのは今から4年前。
しかしそれ以前には、年間で1000万円近い費用を広告に注ぎ込んでいたという。
「例えば、月に1回新聞折り込みのチラシを10万部刷ると、1回当りに要する費用は1枚6円。
つまり毎月60万円、年間720万円がかかる計算になります。それだけではありません。
住宅情報誌への出稿、地域情報誌への出稿なども含めると、年間で1000万円の投資を行っていました。
しかしそれだけのお金を注ぎ込んで、いったいどれだけの効果が期待できるのでしょう。特に若い人は新聞離れが進んでいます。
年輩の方でも、見るのはテレビ欄とスポーツ欄だけという人が少なくありません。
もうすでに新聞がメディアとしての役割を果たさなくなってきているんです。
なのに私たちだけが、昔はこのやり方だったからという理由だけで既成のワクから出ようとしない。それでは時代に取り残されていくばかりです」
そんな時、前川社長が出会ったのがインターネットだった。
1年365日、休むことなく働き続けるコンピュータ。そして国境を超えて広く世界にまで情報を発信できるインターネット。
前川さんは、思いきって方向転換することを決心した。
想像した以上の成果、初契約は仙台のお客さま
前川さんは、地場のあるコンピュータディーラーを何のアポイントもとらず飛び込みで訪れ、ホームページの制作とそれを運用するシステムの構築を依頼した。
「何で知ったかは、もう今となっては記憶が乏しいんですが、あちこちのホームページを見てその中で目に止まったのがそのディーラーだったと思います」
前川さんは、これから自分がやろうとしていること、ホームページのコンセプト、システムに関する要望などを伝え、ディーラーを後にした。
後日、ディーラーからプレゼンテーションを受けたシステムは、ほぼ前川さんの要求を満たすものだった。
「当社管理物件をデータベース化し、キーワード検索で好みの条件にあった物件を捜し出せるシステムというのは、今でこそ当り前ですが、
きわめてめずらしいものであったことは確かだと思います」
システムの運用が始まると、想像した以上の成果だった。
「一人目が確か仙台のお客さんだったと思います。すんなり成約になりました。
その後奈良、大分など、コンタクトのあったお客さんは全員遠方のお客さんでした。
これはもしかすると、大きく化けるかも知れない。その時に勝利を確信しました」
最大で月間に3000件のヒット数
その後もアクセス数は確実に増えた。だが情報の更新を怠ると、たちまちアクセス数は減少傾向をたどった。
お客さんは確かに見てくれているんだ・・・。前川さんは、その時そう感じたという。
「こんなお客さんもいました。ある日、一人の年輩の方が来られていくつか実際の物件を見せてくれとおっしゃるんです。
見ると、ホームページの画像をプリントアウトしたものを5枚ほどもっておられた。
つまりホームページを徹底的に洗い出して目星をつけ、それから当社に来られたんです。
しかもその方は地元の方。それを見て初めて私は、遠方だけでなく地元の人たちも見始めていることを確信しました」
 
それだけホームページの存在が、地元にも定着し始めたことを表していた。
ヒット数はその後も着実に伸びて、いまでは月間で最大3000件、最少でも1000件におよぶ。
「このほかにも当社は、地場の同業不動産会社5社と提携し、2ヶ月に1度情報誌を発行。専用のWebサイトを立ち上げています。
費用は1社当り、1回10万円です。もう昔ながらの不動産の売り方は通用しなくなったんです。
不動産業だけではありません。あらゆる業種で、同様の現象が多かれ少なかれ、おきています。
私たちは、そのことをもう一度再認識すべき時が来ているのではないでしょうか」
【Webサイト(うぇぶさいと)】
Webによるサービスを提供しているホストコンピュータや、そのコンピュータを運営している団体。
【ヒット数(ひっとすう)】
パソコンからホームページにアクセスした件数。ヒット数によって、ホームページの人気度を推し量ることができる。
<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
(株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー
本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503) |
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