事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 みどり美粧院(Z016) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 美容院
売上高 従業員数 資本金 設立
キーワード 美容院、ITリテラシ向上


会計ソフトを使って確定申告。
横着者の私にはうってつけです。


小見山さんが、友人に影響されてパソコンを始めたのは今から8年前。 今では顧客カルテや予約表、販促用のダイレクトメールなどもすべて自作。 3年前には会計ソフトも導入し、年度末の確定申告でもフル活用。




みどり美粧院 小見山 鈴子さん(68歳)

21歳で「みどり美粧院」を開業。以来50年近く、女手ひとつで店を切り盛り。地元きっての老舗美容院にまで育て上げた。 店は今も完全予約制。欠かさず利用するという固定客に支えられて経営も順調だ。

本当に大丈夫?ずっと不安だった導入前

 小見山さんは、人一倍好奇心が旺盛。新しいものに進んでチャレンジする気持ちを今も失わない。 パソコンを習い始めたのが、今から8年前、ちょうど還暦を迎えた年だったというから驚かされる。
 「お友だちがパソコンを習い始めたのに刺激されて、私も習いたいと思いました。でもアルファベットは大の苦手。 やっていけるだろうか不安で、なかなか決心がつかないままでいたんです」
 店の近くにあるパソコン教室の前をクルマで通るたび、『生徒募集』の看板が目に飛び込んでくる。 「習いたい、でも不安、どうしよう」。しばらくは思い悩む毎日が続いたという。
 だがそんなある日、どういう巡り合わせか、当のパソコン教室の営業担当が勧誘のために店にやってきた。
 「ローマ字ができなくても大丈夫ですか?と聞いたら、『大丈夫ですよ!そういう方もたくさんいらっしゃいます』と太鼓判を押してくださったので、 ようやく踏ん切りがついたんです。あのひとことがなかったら、きっと今でも迷っていたでしょうね(笑)」
 小見山さんの新たな挑戦が始まった。

触る時間を多くすることが上達するためのコツ

 小見山さんは、美容院が定休日の月曜日、月2回のペースでパソコン教室へ通い始めた。 最初に勉強したのは、『クラリスワークス』。ワープロやペイント、表計算などの機能をひとつにした統合ソフトだ。
 「はじめの頃は、アルファベットがキーボードのどこにあるのか、キー配列をおぼえるのにもひと苦労。 授業が始まる30分前には教室にいってベタ打ちの練習をしたり、 紙にキーボードの絵を書いてお客さまがいらっしゃるまでの時間にこっそり練習したりしていました(笑)」
 小見山さんにとっては、それがちっとも苦にならない。 知らなかったことが、ひとつひとつ頭の中に入っていくのが楽しみでもあった。
 「間違った操作をするとパソコンが壊れてしまうんじゃないかと最初は不安なもの。でも、めったなことで壊れたりはしません。 適当にマウスをクリックしているうちに、いつのかにか新しい操作をおぼえてしまうこともたびたびありました」
 まさに習うより慣れろ。少しの時間でも、パソコンに触れていることが上達の秘訣と小見山さんはいう。
 「パソコン教室の先生にも、ずいぶん助けられました。 コンピュータの"コ"の字も知らなかった私を、根気強く指導してくださったおかげです」

会計ソフトでラクラク経理、もっと早く導入しておけば

 『ワークス』をひと通りおぼえた小見山さんが、次に挑戦したのは会計ソフトだ。 小見山さんは開業以来、店の帳簿類を税理士にも頼らずすべて手書きで処理してきた。 それだけに、わずらわしい経理業務から解放されたいという気持ちは、他の自営業者と同じように強かった。
 「帳簿といっても、家計簿を詳しくした程度のものですが、それでも月末や確定申告の時期になるといつも伝票整理や記帳でバタバタしていたんです」
 会計ソフトを勉強したい―。その思いを強くしたのは、小見山さんが商工会議所主催の簿記の講習会に参加した時だった。 講師の税理士に、手書きの帳簿を見せたところ会計ソフトの導入を強く薦められた。
 「『これなら、いっそのことパソコンを入れてみては』といわれたんです。それで本格的に、会計ソフトを勉強したいと思うようになりました」
 小見山さんは、さっそくIBMのノートパソコン(Windows98)と会計のアプリケーションソフトを購入。 パソコン教室で基本操作を習ったあと、平成11年9月から本格的に使い始めた。
 「実際に使ってみると本当にラク。日頃からきめ細かく伝票入力さえしておけば、月末にバタバタすることもないし、何より確定申告の書類がワンタッチで作れます。 字が下手な私でもきれいな書類が作れるし、計算間違いの心配もありません」
 それ以来、会計ソフトは手放せない仕事の道具になった。 確定申告の時期が近づくとそれまでは気分までなんとなく重たかったという小見山さんだが、 会計ソフトを確定申告に活用するようになって気分的にもラクになったという。
 「会計ソフトは1本が10~15万円。サポートセンターの年間契約料も必要ですが、税理士の先生にお願いしてもそれくらいはかかります。 どうしてもっと早くに導入しなかったんだろうと、むしろ悔やんでいるほどです」
 小見山さんは、今年も確定申告の受け付け初日に、税務署への申告を終えた。

ワードを使って販促用のツールも自作

 パソコン教室では、会計ソフトの他にワープロソフトの「Word」も習った。この「Word」も小見山さんにとって、仕事で欠かせない道具だ。
 「お客さまのカルテや予約表、来店後のフォローのハガキ、 しばらくいらっしゃっていないお客さまへのお便りなんかは全部「Word」を使って私が自作しています。 美容院の定休日を書いた年間のカレンダーはお客さまからも喜ばれていて、ご自宅の部屋に貼ってくださっているお客さまもいらっしゃいます」
 パソコンを導入するまでは、そうした印刷物はすべて印刷会社に発注していた。印刷にかかるコストは、毎月大きな負担だった。 だが「Word」を使うことでそれも一挙に解消された。
 「『プリントごっこ』を試したこともありますが、1枚1枚用紙をセットするのに大変な手間がかかります。 その点パソコンなら、枚数を指定し"プリント"ボタンをクリックするだけ。あとはかってにパソコンが処理してくれます。 どんなに酷使しても、私が遊んでいても、文句もいわず黙々と仕事をしてくれるんですから、こんなに便利なことはありません(笑)」。
 しかも一度ひな形を作っておけば、あとは数字を入れ替えるだけで何回も使える。
 「感覚をつかむまでは少し時間もかかりますが、おぼえてしまえばあとはラク。私のような横着者には、まさにもってこいの機械ですね(笑)」
 パソコンはひとまず仕事で使えるまでには上達した。次は、デジカメにも挑戦したいという小見山さんだ。




【クラリスワークス(くらりすわーくす)】
ワープロ、データベース、表計算など6つの機能をひとつにした統合ソフト。 現在は「アップルワークス」として、「マッキントッシュ」パソコン(米・アップル社)に標準装備。
【会計ソフト(かいけいそふと)】
経理業務をパソコン上で処理するために作られた応用(アプリケーション)ソフト。
【Windows98(ういんどうずきゅうじゅうはち)】
「Windows」は多くのパソコンに搭載されている基本ソフトウエア(OSともいいます)の標準品。その1998年版が「Windows98」。 現在は「Windows2000/ME」を経て、「WindowsXP」が最新版。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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