事例企業 |
株式会社メイ(Z017) |
事例発表日 |
平成15年3月 |
事業内容 |
調剤薬局 |
売上高 |
- |
従業員数 |
37名 |
資本金 |
1000万円 |
設立 |
1984年 |
キーワード |
調剤薬局、ITリテラシ向上 |

パソコンなんてカンタン、カンタン。
私なんて自分で作ってますよ。
株式会社メイは、昭和59年に創業。現在神戸、明石、加古川に5店舗を展開する調剤薬局。
創業社長の赤澤さんは、無類のパソコン好きで、早くからパソコンを社内業務に活用。
業務の負担軽減や患者さんサービスの向上に役立ててきた。
株式会社メイ 赤澤 陽さん(64歳)
東京生まれの東京育ち。飯田橋で薬店を営む実家を飛び出し神戸へ。「アメリカンファーマシー」に勤務した後、神戸市内で一般薬局を開業。
昭和59年に株式会社メイを設立。調剤薬局の分野に進出。 |
『指導箋』を日本で最初にカラー化
調剤薬局で薬を処方してもらうと、薬といっしょに「指導箋」とよばれる文書を手渡される。
薬の用法、用量、効能など知りたい情報が写真を添えて分かりやすく記載されていて、とても便利だ。
今ではごく当り前になったこの『指導箋』を日本で最初に作ったのが、実は赤澤さんの経営する調剤薬局だった。
「薬を1錠1錠デジカメで撮ってパソコンに取り込み、プリンターで印刷・・・。大変な手間でしたよ。
しかも1枚印刷するのに15円のコストがかかる。まともな経営者だったら、誰もやらないでしょうね(笑)。
これだけの手間とコストをかけても、売上に直接結びつくとは限らないんですから」
あくまで患者さんのためを思って始めたサービスという赤澤さんだが、『指導箋』は最近になって保険適用を受け、診療報酬の対象になった。
時代を一歩先駆けた赤澤さんだった。
「薬剤師は薬を処方するだけが仕事ではありません。
その薬が何の薬なのか、どういう使い方をすればいいのか、患者さんに正確な情報を添えてお渡しすることが本来の役目だと思うんです」
『指導箋』をカラー化するにあたっては、高性能のコンピュータやプリンタを買い揃えるのに3000万円近いお金を注ぎ込んだ。
だが赤澤さんにとってはそんなIT投資も、患者さんへのサービス向上の一環なのだ。
グループウエアを導入、円滑なコミュニケーション
赤澤さんはこの他にも、従業員とのコミュニケーションや業務効率化にITを最大限に活用している。
平成8年にはグループウエア(Lotus Notes)を導入。5つある店舗をネットワークで結んだ。
「導入して最初にきたメールが、『私の給料はいつ上るんですか?』(笑)。
初めの頃は従業員もどう使えばいいのか分からなかったみたいですが、
今では電子メールが互いの情報交換に欠かせなの頃は従業員もどう使えばいいのか分からなかったみたいですが、
今では電子メールが互いの情報交換に欠かせないの情報交換に欠かせないツールになっています」
グループウエアで店舗をネットワーク化したことで、経理の数字を離れた場所からリアルタイムで遠隔監視できるようにもなった。電子掲示板もフル活用だ。
「"私語をなくそう"とか"笑顔がいちばん"とか、毎日のように従業員全員にメッセージを発信しているんです。
従業員の査定ともリンクしていて、返事を送ってこなかったり、返事があったとしてもピントはずれな意見だったりすると、評価は下がります」
赤澤さんの調剤薬局には、現在薬剤師が30名近く。人の命に関る仕事だけに、モチベーションをどう高めていくかは重要なテーマだ。
「メールや掲示板はそのためのツールとしてとても有効に機能しています」
薬剤師の業務報告も、今ではすべてメールの添付ファイルで送られてくる。
また個人の患者さんがこれまでにどんな薬を服用してきたか、どんな副作用があったか、すべての情報を記した「薬歴」も、
すべてコンピュータの中にデータとして記録されている。
「ほんの10年前まで、この世界ではコンピュータをまったく信用していないと公言してはばからない人がたくさんいました。
それが今年からフロッピーディスクに記録された文書が公のモノとして認められるまでになった。やっとこの業界でもIT化が始まったんです」
赤澤社長には、そんな時代を先駆けてきたという自負がある。4年前には、ネットワークを光ファイバーに切り替えた。
調剤薬局でここまでIT化が進んでいる例は、おそらく全国でも稀だろう。
コンピュータとの出会いは20年近く前
赤澤さんのコンピュータとの付き合いは、もうかれこれ20年近くにもなる。
昭和59年に最初の調剤薬局をオープンした時、レセプトコンピュータを導入したのが最初の出会いだった。
「まだパソコンという名前が一般にはほとんど認知されていなかった頃、20万円でノートパソコンを衝動買いしたこともあります。
でも肝心のOSが入ってなくて動かないんですよ(笑)。1年くらいホコリをかぶったままでしたね」
そんなある日、赤澤さんはTV番組でさる高名な評論家がインターネットの将来性を盛んに訴えているのを見た。
いても立ってもいられなくなった赤澤さんは、パソコンショップに駆けつけてマッキントッシュパソコンを手に入れた。
「確か平成6年でした。この界隈にまだプロバイダが2社しかなくて、悪戦苦闘しながらインターネットにつないだのをおぼえています」
その後、震災のあった平成7年にはマッキントッシュパソコンからWindowsパソコンへと切り換えた。
パソコンの進化と歩調をあわせるように、キャリアを積んだ赤澤さんだった。
「でもこれまでパソコン教室に通ったり、ガイドブックや取り扱い説明書を読んだことは一度もありません。
すべて独学です。ただ、友だちに一人パソコンに詳しいやつがいて、動かなくなった時なんかはよく電話で相談してました。
そういう友だちを作っておくことも大事ですね。自分のまわりにいないという人は、パソコンショップで詳しい店員さんと懇意になればいい。
私にも何人かいますよ、そういう人が・・・」
6万円でできる自作パソコン
何事も自分の手でやってみないと気がすまない赤澤さん。最近は既製品のパソコンでは飽き足らず、とうとう自作するまでになった。
「そう言うとなんだかとても難しそうに聞こえるかもしれませんが、そんなことはない。
実にカンタンなんです!ロジックボードとかハードディスクとか、パーツを買ってきてつなぐだけ。ウソだと思うんなら一度試してみてください」
最近も自作パソコンの中身を大幅に入れ替えた。マイクロプロセッサは最新のPentiumⅣ(4.5GHz)だ。
「これだってマザーボードとハードディスク買っただけですよ。予算はわずかに6万円。パソコンショップで店員さんに聞いてやれば、誰でもできます」
自作のパソコンは現在2台。仕事だけでなく、プライベートでも大活躍だ。
「ゴルフが大好きで、シニア大会で競技員をしたりしているんですが、スコア表なんかも全部パソコンで作っています。
名簿をスキャナーで読み込んでOCRでテキストファイルに落とし、Excelで処理すれば簡単に作れます」
デジカメで撮った写真などは、CD-Rに記録。オリジナルのラベルをつけて大切に保管している。
「パソコンは生鮮食料品なんです。次々に新しいのが発売されて、旧型はすぐに賞味期限が切れてしまう。
だからいつ買っていいか分からないという人もいますが、新しいのが出たら古いのは原価でさっさと処分して買い換えるようにすればいい。
時代はどんどん進んでいますから、なんとかついていくことが大事なんじゃないでしょうか」
【グループウエア(ぐるーぷうえあ)】
電子メール、スケジュール管理などの機能を持ち、ネットワークによるグループの作業を効率的に行うためのソフトウエア。
米のソフトメーカーLotus社の「Notes」が代表的。
【電子掲示板(でんしけいじばん)】
コンピュータでメッセージ交換ができる機能。発信されたメッセージをネットワーク上にあるユーザーが閲覧し、自分の意見などを書き込むことができる。
【マイクロプロセッサ(まいくろぷろせっさ)】
コンピュータの演算処理機能を1枚のLSIに集約しチップ化したもの。パソコンのいわば心臓部にあたる。
「Pentium」や「Celeron」などが有名。CPU(中央演算処理装置)という言い方をする場合もある。ほぼ同義語と考えてよい。
<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
(株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー
本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503) |
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