事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 割烹森繁(Z018) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 割烹料理店
売上高 従業員数 資本金 設立 1926年(創業)
キーワード 割烹料理店、ITリテラシ向上


一家はみんなパソコン好き。
すっかり私も手放せなくなりました。


いったんはあきらめながら、ひょんなキッカケからパソコンに再挑戦。長い間の夢だった自作のホームページも1年前についに完成。 仕事がひけた深夜、イタリアから届く息子のメールが待ち遠しい。




割烹森繁 宮永 二三夫さん(64歳)

「森繁」は、昭和元年創業の地元で老舗の割烹料理店。宮永さんは昭和39年に2代目を継いだ。 遠く京都や大阪から、「森繁」を訪ねてやってくる贔屓の客も少なくない。

スイッチを入れるのはもっぱら11時を過ぎてから

 宮永さんのお店の営業時間は午後11時まで。だが12時を過ぎても、いつもお店には煌々と明かりがともって途絶える気配がない。 理由は簡単。宮永さんが、パソコンでインターネットをしているのだ。
 「昼間は店の仕込みで忙しい。もっぱらインターネットをするのは仕事がひけて、夜12時を回ってからになります。 まわりも静かだし、これがけっこう快適なんです。夜は私の時間なんですよ(笑)」
 今年のはじめには、宮永さんの下の息子さんが料理の修業でイタリアにわたった。時間差の関係で、電話での連絡はとりにくい。連絡はもっぱらeメールだ。
 「こっちからパソコンと私のデジカメをもっていってるんで、2~3日おきにメールが届きます。 ろくにイタリア語も分からないままでいっているから、メールが入っているとホッとします。 最近は向こうも景気が悪いらしくって、親としては心配なんですが・・・」
 愛用のパソコンは、最近になって上の息子さんがくれた。「Windows XP」を搭載した、最新鋭機種だ。
 「本人は、マッキントッシュのパソコンを買ったばかり。この間、私の作ったホームページを見たっていってましたね。 立ち上がりが遅いって、文句いわれましたよ(笑)」
 宮永一家は、みんなパソコンが大好きなのだ。
 「すっかり手放せなくなりましたね。もうこれからは、パソコンなしではやっていけないんじゃないでしょうか。 私の周囲でも、今年になって何人かパソコンを始めましたよ」

買って帰ったその日にもう挫折

 宮永さんが、パソコンと出会って、もうかれこれ10年がたつ。出会いは、とあるスーパーだった。
 「電気製品のフロアをぶらぶらしていた時に、偶然に見つけたんです。『これ私でも使えるかな?』と訪ねたら、店員さんが『もちろん使えますよ』。 それならというので、ひとつ買って帰ったんです(笑)」
 だが当時のパソコンは、プロでも扱いが難しい。接続するだけで一苦労。 仮に接続がうまくいったとしても、今どきのパソコンのようにカラフルなGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)ではない。 わくわくしながら帰宅した宮永さんだったが、案の定挫折した。
 「すぐに、私の部屋の置き物になりましたよ(笑)」
 それから、パソコンは部屋の片隅でずっとホコリをかぶったままだった。
 転機が訪れたのは、それから2年ほどが過ぎたある日、宮永さんは近所のパソコンディーラーから仕出しの注文を受け配達に出向いたときだった。
 「まだ1回も使ったことのないパソコンの話をしたら、あちらの 社員さんが『最近後継OSのWindows95が出たんで、 なんとかなるんじゃないですか』というんですよ。じゃあってことで、セッティングに来てもらったんです」
 かくしてホコリにまみれたパソコンは、息を吹き返した。そしてここからが、宮永さんの本当のパソコンライフの始まりだった。

早すぎてもいけない、ゆっくり確実に

 1995年は、日本でインターネットの一大ブームが巻き起こった年だった。 宮永さんも、お店のホームページを自分の手で作ってみたいものだと秘かに企んでいた。
 「それで、パソコンを復旧してくれたディーラーさんがパソコン教室をやっているっていうんで通ってみることにしたんです」
 レッスンは週1回。ワープロソフト「Word」を手始めに、「Excel」へと進んでいく。
 しかし宮永さんは、早くホームページが作りたくて仕方がない。 いよいよ我慢ができなくなった宮永さんは、別の教室の「ホームページ作り方講座」にも出かけてみることにした。 「Homepage builder」でホームページの作り方を学ぶ短期集中型の講座だ。
 「いちおう6日間すべての授業に参加して、修了証なるものをいただきました。でも身に付いたものはゼロでしたね。 時間が限られているから、先生がどんどん前へ進んでしまって追いつけないんです。 自分の中できちんと消化するには、週1回くらいのペースが一番いいのかも知れませんね」
 勉強は早すぎてもいけない。自分にあったペースで学んでいくことが大切と宮永さんはいう。

1年前についにホームページが完成

 宮永さんは、仕事が忙しくて一時レッスンを中断した期間も含めて、パソコン教室にはトータル4年通った。 その間に宮永さんがマスターしたのは、「Word」「Excel」「Homepage builder」の3つのアプリケーション。 途中、期間限定の短期集中講座で年賀状の作成も勉強した。それらはいま、仕事にプライベートにフルに活躍している。
 「Wordは、オリジナルのメニューやチラシ、従業員の出勤表なんかを作るのに使っています。Excelはもちろん経理。 1年前には、「Homepage builder」を使ってとうとうオリジナルホームページも立ち上げました」
 お店やメニューは愛用のデジカメで自ら撮影した。デザインやキャッチフレーズも、自分で考えた。何もかもが宮永さん手作りのオリジナルだ。
 「思わぬところから注文や問合せがあるんで、自分でもビックリしています。 この間は岡山のお客さんが観光バスで来られたし、鳥取や京都のお客さんが旅行帰りに来られたりもしています。 こんな遠くのお客さんから問合せをいただくなんて、今までなかったことですよ」
 インターネットの威力にいちばん驚いているのは、ホームページを作った当の宮永さんだ。
 「去年の暮れは、インターネットを見たといっておせち料理の注文をいただいたお客さんもいました。 それがなぜだかご近所のお客さんなんですよ。近場から遠方のお客さんまで、いろんなところでいろんなお客さんが見てくれてるんですね」
 来年は、「Excel」で確定申告に挑戦したいという宮永さんだ。




【GUI(じーゆーあい)】
グラフィカル・ユーザー・インターフェースの略。ウインドウやアイコンなどの画像を表示し、マウスやペンなどのポインティングデバイスで操作する。 GUIが登場するまでのパソコンは文字ベースの画面で、キャラクター・ユーザー・インターフェースと呼ばれる。
【OS(おーえす)】
オペレーティングシステムの略。コンピュータ本体を動かすための基本ソフトウエア。 ファイルの管理、メモリの管理、入出力の管理、ユーザーインターフェースの提供などを行う。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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