ITCA推薦図書

ITコーディネータに役立つ図書の推薦と書評

図書名: チェンジ・ザ・ルール! 推薦日:2003/03/24
書評者: 碧木 和直 所属先: 

【要約と書評】
要  約
 ERPソフト製作会社の主人公が顧客から在庫削減の目的で導入したERPが当初の目論見から大きくはなれ、在庫削減どころか在庫が増加したとのクレームを、 顧客と一緒になって原因を突き止めて、当初の予想を上回る効果を挙げていく過程を小説として描いた内容となっている。
 なぜ、在庫が増えていったのかを一つ一つ検証していく過程で、ERPとは何かを根本から考えさせられる内容となっている。
書  評
 あのTOC理論の提唱者でベストセラーとなった"ザ・ゴール"の著者であるゴールドラットの第三作目の著書で、 一作目から、業務改革を志すものには大変に参考になるTOC理論をわかりやすく、かつ楽しく理解できるように小説で説明されたシリーズの最新作である。
 一作目の"ゴール"は業務改革、特に工場内における生産性の改善に大きくヒントとなる考え方をわかりやすく説明しているが、 今回の作品である"チェンジ・ザ・ルール"はITC、ITCを目指す人および、システム関係者、経営者に必読の一冊になると思われる。
 何のためのシステム導入か?
 なぜERPが必要か?
 ERPは効果があるのか?
 本当に効果の出るシステム導入(IT化)とはどうあるべきかを主人公ERPの開発責任者の目を通してさまざまな懸念、抵抗、危機、葛藤などの障壁を克服していきながら、 システム導入のあり方の根本を問いただす内容となっている。
 これからERPの導入を考えている人、ERPを導入したが効果が出ていない企業関係者にはぜひ読んでほしい一冊である。
 内容の形態は、シリーズ一作目から変わらず、わかりやすく、楽しく問題が身近に感じられるようにディテールまでこだわった完成度の高い小説となっており、 小説を楽しみながら、問題の本質を考えさせる内容形態は一冊目からなんら変わらずとても理解しやすい。
 小説を読み進めていくうちにERP導入がなぜ失敗するのか?ERPの効果を本当に発揮させるにはどうすればいいのかを、 主人公と一緒に読者が考えて行けるのが、ただの入門書と大きく違い、真のIT化、効果の出るIT化とはどうあるべきかを考えさせられる。
 また、ERP開発者の現状抱えている問題、通常では知りえない苦悩までが、ひしひしと伝わってくる内容も新鮮で面白い。
 最近のERPは多機能ではあるがユーザーフレンドリーではないと感じている諸兄も多かろうと思われる。
 かくいう私自身も一ユーザーではあるが、大いに不満を持っていた。
 なぜこのような複雑なつくりになっているのか長らくの疑問であったが、その原因のついても言及し、その対策についてわかりやすく解説してあった。
 企業が本当にシステム導入で効果をあげたいのなら、安易に各部門の要求をシステムに取り込むのではなく、「真に」効果のでるビジネスモデルの構築が必要不可欠であり、 これは、要求を掛け合わせたものではなく、また、各部署の部分最適を求めるのでもなく、ビジネス全体を通して全体最適が重要であり、 これなくしてはERPを導入しても決して効果は出ないことを、わかりやすく理解できる内容である。

 この論旨はなにもERP導入だけの問題ではなく、著者ゴールドラット氏がシリーズを通して全体最適の重要性を一貫して主張してきたものである。
 彼はこれらの内容をTOC理論とし、その理論を提唱してきた。
 今回の内容が、ITCと直接かかわる企業のIT化を問う内容であるばかりか、実際にありそうな問題までもシュミレートした内容となっていることが、 大きな目玉になっているように感じるのは私ばかりではないだろう。

 シリーズ一作目から通して読まれるとTOC理論について理解できると思われるが、この著書だけでも読まれれば、 現在ERP導入局面で抱える問題点とその解決のためのヒントが得られること請け合いである。

 ぜひ一読をお勧めしたい一冊である。

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