| 図書名: TOC・スループット経営  | 
推薦日:2003/03/24  | 
 
 
| 書評者: 宮田 和義  | 
所属先: マイクロソリューション株式会社  | 
 
 
 
【要約と書評】
| 要  約  | 
 
  エリヤフ・ゴールドラット氏が、著書「ザ・ゴール」・「ザ・ゴール2」で提唱されたTOC(Theory of Constraints:制約条件理論)
・スループット会計・思考プロセスについての入門書として、最適な図書である。 
 TOCの活用を、通常の生産管理の部門に限らず、さまざまな多くのビジネスの機会へ応用するための考え方も説明されている。
 まず、基本概念である「ボトルネック」についての理解を深め、「スループット会計」の章では、従前の原価計算の考え方とは根本的に違う原価概念を導入し、
今後は、スループット重視の管理方法を構築する必要性のあることが理解できる。 
 また、さまざまな問題を解決するときの解決方法のひとつとして、「思考プロセス」という問題解決の手法が説明されている。 
 全体に、図解等を多く取り入れ、非常に読みやすく、わかりやすく、解説されている。  | 
 
| 書  評  | 
 
  経営改革プロジェクトを推進するとき、ITCが支援活動を行うプロセスフローの中の「経営戦略策定フェーズ」において、
BSC(Balanced Scorecard:バランス・スコア・カード)等とともに、
問題解決・分析の手法として活用されるTOC(Theory of Constraints:制約条件理論)
-ボトルネック・スループット会計・思考プロセス等-が解説されている。 
 実際、BSC4つの視点等を考慮しKGIの摘出後、CSF/KPIの抽出を行うことになるが、このときにTOCの基本的な考え方を理解し、
そのTOCでいうボトルネックという概念についての認識を踏まえて、CSF/KPIを抽出することは、新たな観点が発見され、
本来の目的(KGI)の達成に寄与するものと思われる。 
 この書では、TOCの基本的な考え方から始まり、個別最適と全体最適との関連が、従来の考え方とTOCの考え方では、どのように違うかを説明し、
そして、結果としてのスループット(すなわちキャッシュフローの極大化)の重視を強調している。 
 また、ボトルネック(制約条件)については、それを発見し、徹底活用し、その後、その能力を向上させることによって、
そのボトルネックを解消して、スループットの極大化を目指す。 
 その際、バッファーの管理が重要であることも説明されている。
また、プロジェクト管理にもふれ、PERTなどの管理手法や安全余裕という概念に内包するバッファーについても、そのバッファーの管理による解決策が説明されている。 
 また、スループット会計の説明があり、管理会計としてのスループット会計を採用することにより、従来のいわゆる原価計算・財務会計などでは存在しなかった、
新しい業績評価指標を入手することができるのではないかと思われる。 
 つぎに、このTOCという理論を問題解決手法にも適用できるように進化させた、いわゆる思考プロセスと言われるもについての解説がある。 
 TOCの制約条件は、最初は、ボトルネックという概念があり、そのボトルネックという概念を利用して、
生産性の向上、スループットの極大化・キャッシュフローの極大化を目指す。 
 そして、思考プロセスという問題解決の手法では、UDE(Undesirable Effect:好ましくない結果)
・RC(Root Cause:根本原因)を列挙し、あたかも、生産管理の現場での工程管理のごとく、その因果関係を分析し、
そのCP(Core Problem:中核原因)-ボトルネックという概念に近いもの-を発見し、そして、それを解消することにより、問題の解決を目指す。 
 具体的に説明すると、「現状問題の構造ツリー=問題点の発見を行い」、次に「対立構造図=解決策の発見」、「未来問題構造ツリー=解決策による新たな問題の発見」、
「前提条件ツリー=解決策実行時の障害と中間目的の設定」、「移行ツリー=解決策の実行計画」の5つのツリーで構成されていて、これらツリーを利用して問題解決を行なう。 
 最後に、このTOCにより、経営は全体最適をその目標とし、キャッシュフローベースでもその業績の評価が行われるようになり、
また、市場の需要がボトルネックとなった場合は、プロダクトアウトからマーケットインへその指向を変化させることで解決策を見出し、
目標の具体的な設定と、スピード経営が可能になると結んでいる。 
 この目標の具体的な設定とスピード経営は、ITCにとっても非常に重要なことであり、戦略の策定や、活動・成果のモニタリング/コントロールにおいても、
効力を発生するものと思われる。 
 また、全体を通じて言えることだが、従来の考え方(JIT・SCM・ABC)も言及しながら、それらとTOCとの相通ずる点や異なる点についての解説もあり、
図解等を多く取り入れ、非常にわかりやすく解説されており、TOC(Theory of Constraints:制約条件理論)
・スループット会計・思考プロセスについての入門書として、最適な図書ではないかと思われる。  | 
 
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