図書名: 業務別データベース設計のためのデータモデリング入門 |
推薦日:2003/04/12 |
【要約と書評】
要 約 |
ER(エンティティ・リレーションシップ)図について基本的なことは分ったけど、実際にER図を作るにあたり、どのように考えたら良いのか分らない、という方にお勧めの本。
業務システムを構築した経験が豊富な筆者がデータモデリング(ER図の作成)にあたってのポイント、注意点を、豊富な具体例を交えながら解説している。
経営系の方にとっては、会計管理、販売管理など業務システムの具体例が多く、実務をイメージしながら読むことができる点で、理論だけの参考書よりも読みやすいと思う。
また、情報系の方にとっては、実際のシステム構築にあたっては理論通りには行かないということを認識できる点でお勧めできる。
|
書 評 |
ITコーディネータのコンサルティングフェーズの中には、DFD(データフローダイヤグラム)の作成とともに、ER(エンティティ・リレーションシップ)図の作成がでてくる。
研修で基礎的なことは学習したのだが、実際にER図を作成したことがない方には、「実際はどのように考えて作成するのか?」、
「どの会社でもほとんど同じER図になるのでは?」、「そもそもなぜER図が重要なのか?」などの素朴な疑問が沸いてくると思う。
この図書はそのような疑問を解消し、実際にどのように業務システムが設計されているのかをイメージすることができる良書です。
第一部「データモデルとは何か」、第二部「業務別データモデル用例集」の二部構成になっており、第一部では、データベースの歴史から始まり、
なぜデータモデルが必要なのかについて述べている。
特に、プロジェクト失敗の原因の多くは、システム屋と業務屋のコミュニケーション不全にあり、データモデルは「共通言語」として有効であることを述べている。
第二部「業務別データモデル用例集」では、実際の業務を例としたデータモデルの用例集となっている。
商品管理、在庫管理、販売管理、購買管理、取引先管理、会計管理の6つの業務分野について、「単純だけど硬直的」なモデルから、
「複雑だけど柔軟」なモデルへと発展させながら解説している。
実際のデータモデル設計において、どのような点がポイントとなり、どのような点が苦労するのかというのがイメージできる。
実際のシステム構築に即して解説してある良書なのだが、ただ一つの注意点は、ER図の書式(表現の方法)が一般的なものではないことである。
一般の書式よりも少ないスペースで多くの情報が表現できるようになっているのは良いと思うが、
書式が異なると一般のER図の書式に慣れている技術者とのコミュニケーションがスムーズでなくなるので残念である。
本書の書式だけでなく、一般の書式にも慣れておく必要がある。
しかし、上記の注意点を除けば、実際のデータベース設計、データモデル設計がイメージできるという点においては他に類を見ない。
ITコーディネータ全員がER図の設計をできる必要はないのではないかという意見もあるが、システム技術者が作成したER図を読解して評価できる程度の能力は必要だと思う。
そのような能力の取得のために本書はとてもためになる本と言える。 |
|
|