2013年度IT経営カンファレンス開催地概要報告(福岡)

 

2014/4/23
ITコーディネータ協会
事業促進部 田口  千鶴

 

 

2013年度IT経営カンファレンス開催地概要報告(福岡)

 

 

講演内容
講演1

【わが社のIT経営戦略】
『~IT経営による継続的なビジネスの成長を目指して~』
株式会社森鐵工所 代表取締役社長 森 春樹 氏
(中小企業IT経営力大賞2013 経済産業大臣賞)

講演2

「IT経営力大賞受賞企業によるIT経営実践紹介」
鳥栖倉庫株式会社 代表取締役社長 高田 信哉 氏
(中小企業IT経営力大賞2013 日本商工会議所会頭賞)

講演3 株式会社松島機械研究所(2014/4/1より株式会社 マツシマ メジャテック に社名変更)
常務取締役 村上 義弘 氏
(中小企業IT経営力大賞2013 中小企業庁長官賞、審査委員会奨励賞)

 

 

・参加人数 72名(経営層:11名、ITC:49名、講演者その他:12名)
 

2013年度のIT経営カンファレンス。トリを飾るのは福岡です。
福岡は九州の中でも一番ITCが多い地域。開催の様子をお伝えします。

当日の講演は、経営者の方のお話のほか、支援に携わったITC自身からもお話がありました。

 


 

 

 

当日は晴れ!福岡開催のIT経営カンファレンスは去年に引き続き2回目。
昨年は市のHPをFacebookに改築したことで有名な佐賀県武雄市の樋渡市長と、自社サイトを無料で作成できる「みんビズ」を活用し経営危機を乗り越えた福井県の吉田桶樽商店さんと、支援をしたITC先織氏にご講演頂き、SNS活用やHP活用の事例のご紹介でした。
今年は中小企業IT経営力大賞で2013年度に受賞した3企業さんにご講演頂きました。3社とも地元九州の企業様です。

基調講演の前に、まず今回の主催者挨拶で福岡県ITコーディネータ推進協議会会長の栗脇氏よりご挨拶がありました。
今回は「IT経営への取組と実践成功事例紹介」をテーマに、昨年度、九州で初めて大臣賞を受賞された企業様、また上位の賞を受賞された3社様に実際IT経営とは何なのかということをお話頂きたい。また、実際にIT経営を実践されている地元の経営者のお話を聞いて、我々ITCも参考にしたいと思っているとお話されました。

 

 
 

 

 

来賓挨拶 九州経済産業局 地域経済部 情報政策課長 田志 招則様

昨年まとまった国の成長戦略の中で、地域ごとで着実に実行していくために、九州では「九州・沖縄地方産業競争力協議会」というところで来月を目途に九州版の成長戦略の取りまとめ作業を行っているそうです。
この中で情報通信技術は各分野の基盤的な技術という位置づけがあり、いわゆる九州経済の成長エンジンとしての役割が期待されているとのこと。
日本のITインフラは世界最高レベルまで達しているが、その利活用が十分ではなく、今後そのIT利活用の裾野を広げていくことが必要になってくるそうです。特に地域経済を支えている中小企業のIT経営実現によって生産性を向上させ競争力を強化することは、地域経済活性化の観点から非常に有意義だと思うとのことでした。
 
また、田志様は、福岡ITコーディネータ推進協議会においては、IT経営の普及拡大に向け、これまで以上にご尽力頂きたいということと、九州経済産業局も皆様と一緒に取り組んでいきたいとのことでした。
最後に、2/6に今年度の補正予算が成立し、この中で、革新的なものづくり、サービスを提供(チャレンジ)する中小企業に対する支援策が入っており、今年度からIT分野も活用できるようになったのでぜひ積極的にご活用頂きたいとお話されました。

 


 

講演1 株式会社森鐵工所 
代表取締役社長 森 春樹 氏 
金属製品製造業(タイヤ成型ドラム) 

 

IT経営のきっかけは、超円高、顧客の海外進出、海外とのコスト競争が厳しくなったため。
社員が休んでいる間も工場は稼働させたい。そのためにはどうしたらいいのか。
世間の技術力も昔に比べたら進歩している。工場の機械を最新にしたら、従業員は少人数のまま出来るのではないかと考えた。
機械導入費用は行政の補助金を活用した(ものづくりバックアップ)
商品(製品)はメンテナンスフリーを実現し、社員が現地に行かなくても、現場で現状復帰できる仕様にした。
 
社内の改革では、挨拶の励行、社員教育、技の継承、人事制度の見直し、国際事業展開(リスク分散)を行った。挨拶の励行を行った結果、社内の雰囲気が良くなった。

合理化出来る部分はIT化し、無人化操業を実現した。
IT化はスムーズにはいかない。社員から出来ない理由を聞いて納得してはいけない。社員自身が今の生活を守るにはどうしたらいいのか。時には厳しいことも乗り越えていく強さが必要。そのための会社として日本にある最新の機械を社員に与え、ツールとして使い、それで実現していけるという信念のもとにIT経営を実践している。
工程管理は専門のソフトを使わずofficeを使っている。設計部門は高価なCADソフトを入れている。このようなものを総合的に駆使している。
工場が2つあり場所も離れているが、テレビ会議を導入し移動の時間を省略。24時間繋げているため、工場同士での会議を容易にした。
社員の不平不満も見えるようになり、IT化の効果を実感している。

iPadを使っての営業力強化。カタログから関連資料をリンクで繋ぎ見やすく説明しやすくした。
結果、お客様が求めている事への回答がその場で可能になった。出来ない場合も将来はこうなるという想定の上で話が出来るようになった。営業、設計、社長自身も歩いてお客様と交渉している。
無人加工時間を活用すると1月あたり800時間~1000時間あたりは無人で出来る。800時間は1人の1カ月の時間(160時間)の5倍である。これをパラレルでやれば1600時間~2000時間が可能になる。新聞でも書かれていますが、このようなものを本気で実践し効率化していけば、日本で作ったのが一番安くなる。それは正確で且つリスクも低い。

3次元CAD-CAM-NCでの機械加工を一連化。コスト削減、納期短縮、新製品開発へ
~株式会社森鐵工所~(IT経営ポータル)

 

支援をしたITC栗脇氏からのコメント
 ・森鐵工所様とのきっかけは経営力大賞の書類作成支援(ITCAからの依頼)。審査書類はほぼ社員の女性2人が作成した。
・HPが存在しない。理由は企業情報より機密情報漏洩防止のため。
・ITはツールだとよくご存じの経営者
・ご自身の戦略がしっかりしていて、そして実践をしている。
・投資するときは投資する。
こういった決断力が今回の受賞の理由なのかなと感じた。

 

講演2 鳥栖倉庫株式会社
代表取締役社長 高田 信哉 氏

 

 

もともと倉庫業のみだったが、前社長より「将来、倉庫はなくなる」という話があり、物流一貫システムを目指すようになった。倉庫を増やさず売り上げを増やすためにはどうしたらいいのかを考えた。
IT活用は1988年までは計算のみ使っていた。前社長が先導し1988年から物流一貫システムとして進めてきた。
 当社の強みは物流一貫システムの提供。一貫してコンピュータで管理している。
 

人材面では、鳥栖地域に住むのパートさんが少なくなってきたため、今後の事を見据え、人がいなくても問題ないように加工場を造った(医療用品の組み立てなどを行う)。人間の手で組み立てるのは簡単だが、機械で運用するのはとても難しかった。

配送面では、大企業さんがやっていることを我々も出来ないかと考え、各県の運送業と協力して、九州、列島の配送を構築。中小が大企業さんと対等になるには、グループを組んでやる。(20年近くかかった)
貨物の追跡調査システムでは、携帯電話で管理している(ドライバーが下5桁を入力)。GPSも検討したが予算が合わず。
現場力UP。バーコードシステムを導入し作業の効率化。
倉庫の空き情報も情報化し共有
業務支援情報システムの開発。自社でシステム開発をしている。
社員のカードにもバーコードを付けて、(この)管理システムに連動し作業員の生産性状況を把握可能にした。
荷主別作業収支など昨日の数字が翌日にグラフでわかるようになっている。
結果、良かったところ、悪かったところが浮き彫りになった。荷主に対しても提案資料が出せるようになった。
生き残るためにはどうしたらいいのかを必死に考え実践し現在に至る。


情報システム開発力を強化し、3PLを推進。新規荷主の獲得で売上を伸長
~鳥栖倉庫株式会社~(IT経営ポータル)

 

支援をしたITC大串氏からのコメント

鳥栖倉庫様とのきっかけは、ITCAから話が来たことがきっかけ。

物流作業の倉庫業務はパートさん中心にやっている。パートさんの人件費は変わらないが、発注先の企業さんにはコストメリットを出さないと仕事が来ない。このような中で、当初は厳しい状況で受注しながら作業効率アップでコストを削減していく。
パートさんの作業効率を上げるため、従来はそれぞれ異なっていた部署ごとの作業内容を同一にし、パートさんも動きやすく(応援にいきやすく)変更した。また、作業のピークが異なるような受注をとっているため、ピークの度に人を動かせる。


多様化するニーズに対応
1、 お客様に貢献するためにはどうしたらいいのか常に考えている。
2、 荷主の出荷部門、製造部門として視点でお客様に提案している。結果として、お客様にいろいろな提案が出来ている。

自社でシステム部門をもつこと。
自社で情報システム部門を持つことがはたしていいことなのか疑問だったが、鳥栖倉庫さんが上手くいっているのは常に新規システム開発をやっていることだった。(開発要員)
企業内の情報システム部門であると、運用のみになってしまう場合がある。上手く開発案件を突っ込んでいる。
計画的にシステム要員を採用している。
他社のシステム開発も行っており、SEの設計能力も高い。また、実務を知っているためデータ分析が非常に強い。

 



講演3 株式会社松島機械研究所
(2014/4/1より株式会社 マツシマ メジャテック に社名変更)
常務取締役 村上 義弘 氏

 

基本方針→社長のIT経営の重要性と思いと5つ効果を狙っている。
1、製品の昨日短縮による競争力の強化。
2、工程進捗状況の迅速な把握。
3、在庫精度の向上と訂正在庫量の把握。
4、経営判断のための資金の流れ及び決算情報開示の迅速化。
5、業務効率化に伴う組織力の強化。
その中でのシステムの方針は生産管理システム概要を中心に、経営トップの基本方針、外部要因、を元に要件対策を展開、実務施策、システム施策へ展開している。


推進体制をしっかりしておくのは大事。
社内体制、IT顧問、外部の支援体制で回している。
その中でも社内の体制をどうするべきか考えた結果、プロジェクト責任者は村上さん、その下にプロジェクトリーダー、プロジェクトメンバーと構成した。
私は(村上さん)ITを良く分からない。その中で骨格になったリーダーと事務局が良くやってくれた結果だと思っている。

どのように運用するのか。
新システム入れただけではだめ。稼働後の改善をどのようにするのかを隔週に会議をした。関連部門とやりとりと実際に操作をしながら話を進めてきた。ここは大事なところなので非常に長い時間を使った。
ここが上手くいった一つの要因だと思っている。
また、自分たちだけだと出来ないので、外部からも意見を交換しながら進めた。

IT化を進めるためには、コミュニケーション力が必須と実感した。
システムを組むにしても、何をやるにしても、人が中心なのが一番大きなポイント。
94項目、96項目の解決は非常に面倒だった。小さなことから大きなこと。簡単に解決することもあれば、時間がかかるもの。そういうものをまず聞いたうえで、ひとつずつ解決していく。
それから、何かをするためには、まず何かを決めないといけないと思う。
それぞれの立場によってレベルの差があるので強化していきたいと思っている。


新システムの導入で新体制へ。製品の開発設計に注力
~株式会社松島機械研究所~(IT経営ポータル)

 

ITC中村氏よりコメント

・資料の保管の整理が非常によくできていると強く思った。
・情報管理の基本を良く分かっている。組織の情報処理能力を含めて、組織および経営にとって中核的能力とまで言われている。企業を運営していくうえでは、とても重要なスキルとなっている。
・松島機械研究所様がIT経営にシフトしたきっかけは、時代の流れとお客様の要望の変化。そこで、時代にあったIT経営システムへの移行と活用が必然だと考えた。そこでそれを実現することが松島社長の悲願と信念となった。
・松島社長の悲願。ファクトリーオートメーションとオフィスオートメーションこれらを一緒にしたコーポレートオートメーションという概念のもとに、新IT経営システムの構築を契機にモノ作りの場と情報作りの場を一体化させ、連携させた。この生産管理情報を起爆剤に松島機械研究所の活性化と成長拡大を図ろうとしたもの。
今回の応募で少し残念だったのは、IT経営中長期計画の半ばでの応募だった。したがって、計画そのものがすべて完成していない状況だった。先日の表彰式では、関係者の方より「完成したらぜひ再度応募してほしい」という評価を受けました。相当インパクトのあった案件だったようです。





 


 

 

 

最後に、共催者挨拶としてITコーディネータ協会の播磨会長よりお話がありました。内容は「中小企業におけるイノベーション経営」。ITの進展による市場と経営環境の変化や中小企業のIT導入状況、イノベーション事例と事例からの気付き・経営者の一言などをお話ししました。

 
 

 


 

 

 

【開催情報】
セミナータイトル IT経営カンファレンス2014 in 福岡
開催日時 2014年2月22日(土)13:00~17:30
主催 福岡ITコーディネータ推進協議会
共催 特定非営利活動法人ITコーディネータ協会
後援 九州経済産業局、一般社団法人福岡中小企業経営者協会、
公益財団法人福岡県中小企業振興センター、福岡商工会議所、
一般社団法人福岡県情報サービス産業協会、一般社団法人九州志士の会
株式会社日本政策金融公庫、独立行政法人中小企業基盤整備機構九州本部

 

 

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本件に関するお問い合わせは、ITコーディネータ協会 事業促進部 山川まで。
 

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