「おもてなし規格認証」におけるITコーディネータへの期待

掲載日:2016年12月22日
一般社団法人日本CSR協会
事務局長 秋庭 英夫
 
■背景にあるものとは
「お・も・て・な・し」は、2020年東京オリンピック招致のプレゼンで有名になった言葉で皆様もご存じでしょう。「おもてなし規格認証」は初めて耳にしたことと思います。あまり一般に広くPRされていないので当然です。
経済産業省が創設した制度でその背景には「日本のGDPの75%を占めるサービス産業は、製造業に比べ労働生産性が低い」があり、特に中小規模のサービス事業者の足腰を鍛えていくことが重要課題でありながら、この部分への公的な支援が不足していました。
そこで、今回の制度の目的は以下の3つにあります。

 1、中小サービス事業者の間接業務を効率化し生産性を高める(ハード面の強化)
 2、サービス品質を高める(ソフト面の強化)
 3、その結果として、経営品質向上が見込まれる(ブランド力が強化される)

また、2020年のオリンピックには、訪日外国人旅行者が今年の約2倍となる4千万人が見込まれています。このインバウンド(訪日外国人旅行者)を新しいマーケットとして大きく期待しています。そのためにも、サービス産業におけるこの「おもてなし規格認証」が重要であると言えます。
 
■「おもてなし規格認証」とは
登録、C認証、B認証、A認証に分類され、それぞれの事業者の現状から上位の認証を目指すことができます。

<規格認証の種類>
  「登録」 : おもてなし規格認証制度に賛同し、チャレンジすることを自己宣言する
  「C認証」: 基本的な期待に応えるサービス提供者
  「B認証」: 独自の創意工夫が凝らされたサービス提供者
  「A認証」: 期待を大きく超える「おもてなし」提供者
 
登録(おもてなし規格認証2016)はこの制度へチャレンジするためのエントリーで要件(※1)を満たせば、無料でマークと登録証を取得することができます。その上位であるC認証以上は、審査機関による審査に合格する必要があり審査手続きは有償です。
この認証では、それぞれのランクで要求される事項が異なりますが(ハードルが高くなる)、基本的には以下の3つが重要視されています。
 
 ・ITによる効率化が図られていること
 ・サービス品質が「見える化」されていること
 ・人材育成のしくみがあること
 
2016年8月25日からこの制度の登録が開始されました。審査を伴うC認証以上の運用は2017年4月からになります。2020年に30万社が登録していることを目標にしています。

※1
登録(おもてなし規格認証2016)は、定められた規格30項目のうち15項目以上が該当することで自己適応宣言(既に適応済み、あるいはその意志がある)により登録できます。30項目の要件や認証制度については、「おもてなし規格認証」で検索すると関連する色々な情報が入手できます。ただし、C認証以上は詳細検討中です。
 
■ITコーディネータへの期待とメリットは
「おもてなし規格認証」では、“ITによる効率化が図られている”。ここが重要なポイントです。特に中小企業では、間接作業に多くの時間がとられサービスの品質までは手が回らないのが現状です。これでは本末転倒です。そこで「ITコーディネータ」の登場が期待されます。これはITコーディネータしかできないことです。私の思うメリットは、こんな感じです。
 
1、お客様と方向性を共有できること
業務改善など提案してもお客様にはその効果を中々ご理解頂けない場合が多いと思います。今回は30項目のチェックリストがあります。これを利用できます。そしてあるべき姿、将来像を共有化し今何をすべきかを浮き彫りにすることができます。
 
2、新規のお客様へ提案のし易さ
「おもてなし」という言葉は今や市民権を得ています。オリンピックに向けてその言葉は色々な場面で使われていくでしょう。でも、お気づきのように、今回の規格認証は生産性向上にあります。生産性向上、効率化はITコーディネータの実力の見せ所です。ここへ導くツールとして活用できます。
 
3、わくわく感
今までと違ったアプローチですので、難しさもありますが、楽しさを見つけることもできるように思います。
 
以上ですが、残念ながらこの規格認証自体が無条件にメリットを生むわけではありません。ITコーディネータの知恵で輝くものと思います。
 
■費用面からの工夫は
2017年4月から本格的に始まる「おもてなし規格認証」は審査機関による認証制度(C認証以上)なので、認証やその継続には費用がかかります。詳細はまだ検討中で明記することはできませんが、今回の制度導入では以下のような補助が予定されています。
 
 ・「サービス等生産性向上IT導入支援事業」(補助率2/3)
  →ITツールの導入に際し、費用の3分の2を補助(上限は40~50万円)
    (2016.11.22 日本工業新聞記事を参照)
 ・IT専門家の派遣事業により専門知識やノウハウの乏しい小規模事業者の支援
  →従来のミラサポの継続

これらをうまく活用することにより、サービス事業者に負担を少なくIT化による効率化が図れます。
 
■サービス事業者のメリットは
重要なのは、この制度がいかにサービス事業者にメリットとして受入れられるか、という点です。考えられる点は以下のとおりです。
 
 1、公的支援がうけやすい(補助金や公的融資など)・・・まだ可能性の域
  →この取組みを政府、自治体などが公的補助の要件にする可能性がある
 2、サービス品質の「見える化」
  →事業継続(差別化されたサービスの提供)や事業承継(後継問題)には有効
 3、人材育成が効果的に取組める
  →安定した雇用や従業員満足度を高めることが期待できる
 4、インバウンド対応への効果が見込める
  →認証シールは、外国人旅行者への安全・安心の担保となる
 
 
■今後の予定、特記事項
この制度は、現在は登録(無料)が既に開始されています。2017年4月からC認証以上が開始されます。この時、C~Aと言った名称は、「星の数」などわかりやすい表現にかわる予定です。
「おもてなし規格認証」の取組み、制度内容の詳細は、この名称で検索すると今までの経緯をはじめ、登録方法など知ることができます。また、2017年1月1日の日本経済新聞にPR広告が予定されています。
 

参考URL:
経済産業省が発表したお知らせ
「おもてなし規格認証」の運用を開始します
~サービスの品質を見える化し、生産性の向上を実現!!~
 
おもてなし規格認証(一般社団法人 サービスデザイン推進協議会)
 

 

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