事例本文(高知豊中技研)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:1 (株)高知豊中技研   事例発表日:平成11年12月2日
事業内容:ガス関連機器製造
売上高:4億円 従業員数:44名 資本金:5000万円 設立:1990年
キーワード ガス関連機器製造、電子機器開発、
経営情報、購買、
業務データの利用、社内開発、情報共有、経理システム
情報を活用した経営革新  
株式会社高知豊中技研 URL:http://www1.odn.ne.jp/ktg/

(株)高知豊中技研 取締役 山中邦昭
プロフィール
(株)高知日産サービスを経て、1988年(株)高知豊中技研に入社。工場のセッティング及び工程管理、生産管理に携わる。1997年取締役就任と共に生産管理のシステム構築の推進役となる。社員一丸となって取り組み、現在ほぼ完成させている。
~経営者がリアルタイムに経営分析できることを目指して、情報システムを社内で開発~
ガス関連機器の製造メーカーである高知豊中技研では、製造にあたって各製品ごとの部品をセレクトするのに多大な間接工数が必要だった。情報システムの構築を決断し、業務の特殊性や将来性を考えて、あえて業者に外注せず社内での開発の道を選択した。スタート時には購入したソフトを使える人材さえいなかったが、それから、今日までの歩みはまさに手作り感覚。今後はその達成感とノウハウを強味に、システムのさらなるパワーアップを目指す。

■当社のシステム黎明期
当社は、平成2年6月設立、資本金5000万円、従業員数44名、事業内容としてはガス流量制御器及び関連部品の製造、電子機器等の開発をやっています。
当初、私どもが情報システムを手がけた目的は、作業効率のアップでした。我々受注メーカーは受注した製品の製造工程において、機種や部品の点数が非常に多く、部品展開に多くの複雑な計算を要していました。いろいろ計算するためのデータベースになる多くの資料を元に、電卓を使って人間が計算していかなくてはならない状況でした。この間接業務にコストが非常にかかり、これらをコンピュータにさせよう、業務システムを開発しようということになったのです。
最初のシステムはまだネットワークで結ばれておりませんでしたので、情報システムと呼べるような内容ではありませんでした。むしろ業務システム。現在は完全な生産システムとは言い切れないまでも情報システムとしての考え方が実現していて、この時の業務システムの延長線上にあると考えています。
まず、情報システム構築前の環境について。業務システムには、開発当時のMS-DOS上で動いていたデータベースソフトを使っています。ただし、OSはMS-DOSからWindows3.1、あるいは95と移行しつつあり、市販ソフトのオフィス関係のもの、例えばワープロや表計算などをWindows上でどんどん使っていました。業務システムと切り替えるためにはパソコンの再起動を行っていました。各パソコンはスタンドアロンであったために、パソコン上の情報はフロッピーディスクもしくはプリントアウトさせたペーパーでやりとりしていた、というのが現実です。
■情報システム構築を決断、社内で開発を選択
その頃、お客様から品質についての資料作成、製品のプロセス、請求がどうであったか、データ成績がどうであったか、というようなことを要求されることが増え、また発生した不良についての資料作成などにパソコンを使う機会が非常に増えて来ました。そこで、先ほどお話したようなシステム環境でしたが、1998年4月にOSにWindows95を使用して、ピア・ツー・ピア(サーバーを持たないネットワークで数台のマシンを接続するLAN構築手法)でありますが、ファイル共有型のネットワーク構築を行うことにしました。DOS版のデータベースソフトで使っていたものを全てこのWindows95のOS上で動くようにしました。
その際、この業務システムの開発を社内でするのか、社外に依頼するのか、という選択があり、社内でやろうということになったのです。使用するソフトをどういうものにするかなど問題は出てきましたが、市販ソフトを利用したほうが後々のメンテナンスを考えあわせれば得策ではないか、という判断をしまして、ACCESS(データベース開発用ソフト)というソフトを使用して社内で開発を開始しました。
社内での開発にあたり、使用するソフトについて従業員が習得にかかるコスト時間を懸念しました。しかし、業務内容が特殊なので業者に発注すると融通がきかなくなる、顧客の要求に答えるためには社内で柔軟かつ迅速な対応が必要である、ということを重視し決断しました。さらには、これまで構築している業務システムのノウハウがそのまま利用できる、開発に関わる社員は新しいソフトに対する技術を習得でき、スキルアップが図れる、これにより他業種への展開も可能になるのではないか、などのメリットも考えました。
■情報システム構築の目的
情報システムを構築するにあたって、次のような目的を掲げました。
・業務システムと資料作成を同じ環境(OS)で利用することにより、業務システムのデータを作成する資料に利用できるようにすること
・ネットワーク化により社内メールを利用した回覧、または共有フォルダに回覧文書をファイルしておくことで、情報の共有化を図ること
サーバーはWindows95をOSにした1台、クライアント側はWindows95を8台とした情報システムを構築しました。システムとしては生産及び購買システムを99年4月に稼働、サービス業務のためのサービスシステムは99年6月に稼働しました。
現在(99年12月)の情報システムの構成は、サーバーは同じでWindows95を1台、クライアントはWindows95を8台、Windows98を1台、さらに次の目的があり、そのためにWindowsNTを1台入れて現在開発中です。
■経営者がリアルタイムに経営分析できるように、来期に向けて開発中
現在、開発中ですが、4月以降はこういった形で動かしたいということについて、説明したいと思います。

システム概要

図「システム概要」に示したようなネットワークにするために、WindowsNTで開発を進めています。WindowsNTにする理由は、セキュリティは当然のことで、現状のシステムに経理部門を加えて購買・生産システム上のデータを経理ソフトに接続する考え方に基づいています。業務システム上のデータの有効利用を図り、なおかつ経理上での処理をリアルタイムで行うことによって、経営分析まで行えることを目標としています。経営状態のリアルタイムの把握ということが非常に重要な時代です。現在、当社でも経理はソフトを利用していますが、他の部門と全く接続していませんので、単独で処理しているのが現状です。例えば物を買いますと納入書が回ってきます。納入書に基づいて打ち込みをしていけば日次とまではいかなくても週次決算くらいはできるかと思うのですが、手直しが発生することを考えますと、請求書が回って来た後に確実にデータをインプットして月次計算を出すことで精一杯です。しかし、それでは経営者はリアルタイムの経営分析ができません。予算を組む、中期状況がどうだ、売上がどういうふうになる・・・そういうことが実際のところまだまだリアルタイムにほど遠い。
現在は、図「システム概要」に示す経理部門と経営陣の部分は繋がっていない状況です。生産指示は取引先から電子メール、または郵送、ファックス、宅配等で入って来ます。それらを全てに展開をし、生産・部材部門の管理、CS部門のサービスする情報、購買に繋がっています。また、共有化していかなければならない議事録や書類関連のデータ、こういったものを全部繋げていますので、生産そのものに関わる情報は全て連携しています。必要に応じてインターネットも利用しています。
ですから、現在開発中というのは、経理の部分と経営陣が判断する経営分析に使えるソフトの2つということです。
■導入効果と初期費用~一番かかったのは教育費用~普及には遊び心を入れて
情報システムを導入した効果については、直接売上増をもたらしているとは言えません。導入前と後で経費もたいして変わっていません。
しかし、当初に目的としていた間接工数については効果があったと思います。当初から生産に関わる間接人員はずっと1人ですが、この業務システムがなければ3~4人の増員が必要だったはずですから。(¥300000/月程度の削減)
それに、人間が電卓を叩いて計算をしたり、選択をしたりするのではないため、コンピュータのデータベースさえしっかりしていれば熟練者でなくても全て判断でき、計算ミスがありません。
先にお話しましたように私どもの製品は全て受注生産です。1台1台、流量も違えばガスの種類も違いますので、製品毎に600点くらいの部材から15点くらいをセレクトしますが、その際特殊な計算方式で割り出していかなくてはなりません。ある程度熟練した人間でないとできない仕事です。それがシステム導入により、社員教育の短縮、人件費の削減に効果が出ていると思います。
初期費用は約250万円。
内訳は、コンピュータ購入費、ソフト購入費。これらはそんなにかかりません。
一番大きな支出は教育でした。最初からこういうソフトが使える人材がいませんでしたので、専門学校や講習に行って勉強させました。社内開発を担当させる人材は中堅クラスから選びました。主任、係長等だいたい30歳前後で、生産現場のトップで仕事をしている人たちです。社内全体の普及には、遊び心を入れると若い世代がついてきます。インターネット、Eメールを使わせると非常に興味を示します。興味を示すと、どんどん入り込んできますから、教えなくてもある程度自分で学んで使えるようになります。そうなると、業務システムはリンクされていますから必然的に入ってくる環境になるわけです。年配の人には、上のほうから押しつけるのではなく、遊び心で覚えた若い社員たちに教えさせます。50歳くらいでコンピュータをいじったことのない者にも、20歳くらいの社員に責任を持って教えさせ、うまくいっています。
あとはランニングコスト(¥6000/月)。インターネットや電子メール使用にあたってのプロバイダーとの契約料、光熱費などです。
■来期のシステム構築では経営状態のリアルタイム把握を目指す
来期の情報システム構築による効果について(見込み)お話します。
購買システムのデータを即日で経理ソフトに接続していきますので、日次決算が可能になり、経営状態がまさにリアルタイムで把握、分析できます。サーバーをWindowsNTに移行するので、セキュリティをアップできるという効果もあります。インターネットによるウィルスなどの懸念も増えている現在、予防を含めたセキュリティも考えていかなくてはなりません。
費用としては160万円ほどと考えております。ランニングコストは変わらず、¥6000/月です。
これからさらに発展させた形でのシステム構築を推進していきたいと考えております。

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