事例本文(アラコ)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:7 アラコ(株)   事例発表日:平成11年7月13日
事業内容:車両・自動車部品製造・特装
売上高:3239億4400万円
2001年3月
従業員数:5047名
2001年3月
資本金:31億8800万円 設立:1947年7月
キーワード 車両及び部品製造、特装、、
会計制度のレベルアップ、経営管理、
パッケージ利用
経営管理(会計)システム構築事例─経営判断へのタイムリーな情報提供を目指して
  
アラコ(株) URL:http://www.araco.co.jp/

アラコ(株) 取締役情報システム担当 本 輝恒
プロフィール

石川県出身
1967年4月 荒川車体工業(株)に入社 経理機械計算課に配属
(1988年7月 アラコ(株)に社名変更)
1972年9月 労働組合 出向 (書記長、副委員長を歴任)
1977年9月 技術管理課に復帰し、技術関連(CAD/CAM/CAE)システムの導入、整備に注力。
1990年4月 情報システム部 部長
1998年6月 取締役に就任
現在(1999年6月28日より)、技術管理部部長、情報システム部担当

~トヨタグループの中にあっても自社に適用した情報システムを追求~

長年、情報システム部門に携わってきた本氏に、企業の命題として与えられたのが経営管理システムの構築である。資本や売上のほとんどをトヨタ自動車が有する独特の企業形態であり、けして進めやすい環境ではない中で、情報システムの真の意義を問うような真摯な取り組みで、見事2年間のスケジュールを完遂させた。大きな仕事を成し終えた感想も交えて、奮戦の流れを語っていただいた。


■トヨタグループとして国内外に拠点、そこに時代の新しいニーズも加わってきた
まず、アラコという会社について紹介いたします。
1947年設立。すでに50年以上の歴史があります。資本金は31億8800万円、98年度の売上高3454億円、従業員数5687人となっています。88年7月に現社名に変更しました。主な生産品目は、車輌(トヨタランドクルーザー100等)、部品(セルシオ、プログレ等)、特装(福祉車輌、キャンピングカー等)これらは全てトヨタの製品です。また、トヨタの世界市場だけでは厳しい状況が考えられるので、電動カー・エブリデーという電動三輪車を自社ブランドで最近販売しています。
アラコの拠点は、基本的に愛知県でございます。本社・吉原工場、寿工場、猿投工場が豊田市に、豊橋市に豊橋工場があります。
その他、国内では九州に100%子会社のアラコ九州があり、シート等内装の工場として業務を展開しています。
海外拠点としては、今はどこの企業も海外進出をしていますが、アラコの場合は基本的に合弁会社という形で進出しています。現地プロダクトの会社と合弁でやっています。アメリカでは、デトロイト事務所、TMI(ケンタッキー、モデスト 等)、ロス事務所。ヨーロッパはブルッセル事務所。中東はバーレーン事務所。アジアでは中国に天津華豊汽車装飾有限公司、台湾に新三興、インドにAPL、インドネシアにカデラAR、そしてオーストラリアにオーストラリア事務所がございます。
私どもの資本の75%がトヨタ自動車です。ですから、ほとんどトヨタ自動車の管理のもとにアラコの経営が進められているといっても過言ではありません。その中で「アラコは非常にお金のかかる情報システムに主体的に力を入れてやってきた」ということがある意味で我々の誇りにもなっています。トヨタグループの中で「どうやって当社のトップに理解していただいて、どうやってアラコの社内システムを整備していくか」ということが課題ですが、当社には「トヨタ自動車がこうやっている、トヨタ自動車がこうやれと言っているから我々もやらなくてはならないのだ」という風潮があり、この様な説得をする事が情報化を進める上では効率的であるため、そうやって進めています。
会社をとりまく環境としては、自動車産業の国内市場のパイ縮小もあって、この先、トヨタ自動車以外の仕事もやらないとこれからのアラコはない、と全社をあげて新規事業に取り組んでいます。
こうした当社の現状を理解していただいた上で、システムによる成果を説明したいと思います。

■経営管理システムと命名した背景
経営管理取り組みの経緯としては
・業務改革としてどこから着手するか?
・決算日程短縮が当社に必要か?
・経営判断のサポート
ということがポイントとなりました。経営管理といっても、99%がトヨタ自動車に対する売上であり、生産計画そのものも全部トヨタ自動車の土台に乗ってやらされています。そんな格好ですから会計処理や、原価計算といったって何をやるのか、ということがいろいろありました。
我々コンピュータ屋としては、オフィスワークと生産の交通整理を、という会社の命題に対して、仕事の流れはいちばん下流工程の人が上流工程からデータを入手して進むだろうということで考えました。それで、私は経理部門の仕組みから手をかけようと考え、会計システムという提案でトップに上申しましたが、会計という表現では経理屋しか手伝ってくれないぞ、何かいい名前を考えろ。と言われ、どうせ大きく言うなら「経営管理システム」にしよう、経営管理とすれば何でも入るだろうということで、このネーミングになりました。
取り組みを始めてみたら、とてもじゃないが経理ではできないと抵抗があり、大変でした。出てきた月次決算の数字が正しいか正しくないかわからず、その検証のために、5月の連休頃は大変苦労しました。月次を翌月の稼働日7日ということで目標をたててやったのですが、実際には数字がかたまるのが12日頃、徐々にチューニングアップをして今は何とか稼働日の7日に数値がかたまるということは実現できています。会計処理にかかわる人員も50人から30人に削減できました。その他にも、監査法人の要求する基準のクリア、一流企業レベルの会計制度確立、会計情報の活用など課題はいろいろありました。
課題解決の考え方としては
・短期に開発を完了
・一流企業レベルの情報提供
・データベース統合化への基礎をつくる
などがあり、こうした課題に対するテンプレートとして統合パッケージソフト(Oracle Applications)を利用しました。

■若いパワーで新しい仕組みを!をテーマにプロジェクトを構成
プロジェクト体制は、まず社内体制の確立を図り、若手で新しい制度、技術にチャレンジしようと志気を揚げ、具体的には情報システム部主導による推進をベースとしました。
コンサルティング会社の選定、SI会社の選定なども課題として対処しました。
プロジェクトの構成は、制度設計/業務設計グループ、パッケージソフト設定グループ、導入推進グループ、周辺システム変更/インターフェースグループ、システム基盤グループから成っています。その統括役として、プロジェクトリーダー、プロジェクト責任者がおり、サポート基盤として事務局。プロジェクト責任者にはアドバイザーがつき、その他にも情報システム開発部隊がサポートするという体制でプロジェクトを構成しました。
実施スケジュールについては、95年2月から開始し、現状の問題点調査に取り組みました(2カ月間)。4月からはホストシステム日程短縮を図り(5カ月間)、新会計制度、業務概要設計を進めながら(6カ月間)、パッケージ選定と開発提案も推進(6カ月間)。96年4月より制度設計(5カ月間)、8月からシステム設計(3カ月間)、9月から詳細設計(2カ月間)、11月からはいよいよ大詰めとなり、ドキュメント作成(3カ月間)、教育・移行(2カ月間)、総合テストなどを行いました。
では、こうして完成したシステム評価についてはどうだったか。
会計制度のレベルアップは外部コンサルタント評価により、ほぼ目標達成を果たしたということになりました。

■情報は特別技術ではない、全て情報で仕事をしているのだ
私どもの会社は製造業ですが、開発部門、オフィス部門、発注部門、生産管理部門を含めて、全て情報で仕事をしています。情報以外何も扱っていないとも言えます。企業のモノづくりのおおもとは確かにモノを作っていますが、他のところは全て情報で仕事をしているのです。情報を扱って、情報を収集し、加工し、提供してお金をいただいているのです。設計も今では紙の上からCADに変わりましたが、これもすなわち情報です。良く考えてみるとオフィスワークは全て情報処理なのです。私の部署は情報システム部となっていますが、別にコンピュータを使わなくてもいいと思っています。コンピュータを使ったほうがより効率的によりスピーディで正確だから、コンピュータを使えばいい。もしもコンピュータを使うよりも遥かにいい情報が得られる方法があるならそれでも結構なのです。そういう仕組みづくりをするのが情報システム部の仕事なのです。
私はずっと情報システムに関わってきました。
今から50年くらい前にコンピュータというものが出てきたのですが、最初の30年間くらいは効率化の道具として使われていました。1985年から95年くらいになって、経営に有効な情報を与えるという形でコンピュータによる情報システムが使われるようになり、先進的な企業が取り入れていきました。
ところが、その後どういう状況が生まれたかというと、経営そのものをコンピュータシステムを使っていく、経営のためのインフラ、ツールとして情報システム、コンピュータが存在するという時代になりました。
ですから、今の時代、情報をうまく使って経営を進めないとその企業はたぶん淘汰されてしまう。経営者の皆さんは好むと好まざるとに関わらず、情報化に関心を持っていただいて情報化に取り組んでいくことが必要です。経営そのものをどうやって情報システムを使ってやっていくか、スピードをあげて精度をよく、いろんな戦略をたてて、経営に情報システムを役立てることが重要なのです。
情報化に取り組まないと、21世紀になると企業は淘汰されてしまうということを申し上げて終わりといたします

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