事例本文(ダイカ)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:13 ダイカ(株)   事例発表日:平成12年2月25日
事業内容:日用品卸売商社
売上高:1564億8700万円
2001年7月連結
従業員数:1284名
2001年8月
資本金:38億653万円 設立:1969年8月
キーワード 日用品卸売、
粗利管理、原価率コード、物流設備の強化、
社内開発、物流システム、リアルタイム在庫
当社のC&L戦略
 

ダイカ(株) URL:http://www.daika.co.jp

ダイカ(株) 代表取締役社長 大 公一郎

プロフィール

昭和13年4月 函館市に生まれる
昭和32年3月 函館私立東高等学校卒業
昭和36年3月 一橋大学商学部卒業
昭和36年4月 レナウン商事(株)本社入社
昭和38年2月 同社退社
昭和38年3月 大加十全堂(株)入社
昭和42年4月 取締役営業部長に就任
昭和44年8月 7社合併によりダイカ(株)となり専務取締役就任
昭和54年10月 代表取締役社長(現任)
平成元年11月 (株)ヘリオス取締役副社長(現任)
   <団体の役員歴>
昭和55年6月 北海道卸粧業連合会副理事長
昭和58年5月 共同組合札幌総合卸センター理事(現任)
平成2年5月 全国日用雑貨・化粧品卸連合会副会長
平成5年6月 北海道卸粧業連合会理事長
平成9年5月 札幌卸商連盟会長(現任)
平成12年5月 全国化粧品日用品卸連合会会長(現任)

卸にとって物流の戦略化が決め手。コンピュータとの融合で、物流はどこまで進化できるか

資本金36億円、従業員数約1200名、売上高約1300億円強。北海道・札幌に本社を位置するダイカ(株)は、全国各地に営業拠点を有する卸売業者である。扱う商品は細々した日用品や衛生用品など。業界に先駆けて、戦略化を推進してきた大氏は、先進的感覚に優れた経営者である。


■これからの卸は物流が戦略のポイントと感じた
当社は、化粧品、歯磨き、歯ブラシ、石鹸、洗剤、家庭紙、衛生材料、日用雑貨、ファッション用品、小間物、装飾品をはじめとするコスメティック、トイレタリィ、ペットフードなどの卸売商社です。
今から15年くらい前、東京で仕入先のメーカー様に集まってもらった折、私は社長として経営方針等をお話しました。特に当社の物流システムについて少し詳しく話したのですが、後で出席していた同業者の方から「社長が物流の話を長々とするなんて・・・それは部長クラスがやることじゃないか」と批判されました。私は一言、「物流は卸にとって今、戦略だよ」と応えた記憶があります。その頃はまだ問屋にとって売上を稼ぐ営業が花形で、物流は裏方さんというイメージがあり、ただ注文を受けた品を得意先にお届けする作業という認識しかされていませんでした。
私が「これからは物流が卸の競争の要になる」と思った背景には、得意先からの注文がだんだん細かくなってきたことが挙げられます。世の中が進歩して豊かになってくると、消費者の要求も多様化してきました。たとえばシャンプーを例にしてみても、以前は家族皆で使うファミリーユースが1種類あればよかったのが、今は若い女性は香りのあるシャンプー、お父さんはトニック効果のある男性用とか、傷んだ髪用とか、ヘアスタイルに合わせてとか、さまざまなものが出てパーソナルユースへ事情が変わってきました。そのように品種は増えていきますが、小売屋さんの売場面積は限られていますから、1品当たりのフェースも少なくなり、発注が細かくなってきました。1品当たりの発注量が少なくなって頻繁に注文が入ってくるようになったわけです。いわゆる多品種、少量、多頻度納品です。
このことは、問屋の物流コストから見ると、大幅にコストが引き上がる要因になります。今までダンボール単位で取引していたものが、その中の小箱単位になり、さらにその小箱から2個3個と取り出さなくてはならないような少量になってきました。倉庫から品物を出す仕事をピッキングと言っていますが、これはパートさんがやっています。倉庫から出した品物が伝票と合っているかどうかの検品もパートさんの仕事です。こうした仕事がどんどん増えて行くと、パートさんの人数も増えていくわけで、人海作戦ではもうコストが上がりすぎて経営が成り立たないようなことになってきました。

■物流設備とコンピュータ情報を融合させたC&L戦略
そこで考えたのが、倉庫を広げて、いろいろな棚を設置し、コンベアー、垂直搬送機、フォークリフトなどの物流設備の導入を図ることです。また、倉庫から出荷した商品を配送方面別に整然と並べて配送トラックに積み込むためのスペースを我々は「プラットホーム」と呼んでいますが、これを広く取りました。その結果、仕事はやりやすくなりましたが、まだ十分ではありません。これに、コンピュータ情報をうまく組み合わせてやることによって、受注から配送に至る一連の流れがぐんとスピードアップし、ローコストで、しかも正確に仕事を処理できるのです。
具体的に言いますと、お得意先から受けた注文をそのまま倉庫へ流すのではなく、いったんコンピュータの中で倉庫内のロケーションに合わせて並べ変えます。そして打ち出されたピッキングリストを持って倉庫に入ると、床にはこの順路で歩けという矢印がついているので、それに沿ってピッキングリストのロケーションナンバーの棚に行けば必ずその商品があるという仕組みです。これなら今日入ったばかりのパートさんでもちゃんとその商品のある場所にたどり着くことができます。コンピュータのデータによってどのような商品配置をすれば最も効率よく出荷できるかの配慮がされていますが、このシステムを導入する前は、新しく入ったパートさんが倉庫の中のどこにどの商品があるか覚えるまでに3カ月から半年かかっていました。しかも注文はランダムに入ってきますから、受注伝票を手にして、この商品はいちばん奥だったから最後にしよう、これは手前にあったから先に出そう、などと頭の中で考えながらやっていたわけです。
この、ベテランでなくても最も早くピッキングを完了させられるこの仕組みを札幌支店オーダーエントリーシステムの頭文字を取りSOES(ソエス)と名付けました。物流設備とコンピュータ情報をうまく組み合わせて最も効率よく業務を行うのがC&L戦略です。
もうひとつ、SOESの例で、大きく変わったのは配送のやり方です。それまではできあがった納品伝票を手にして配送担当者、つまりトラックの運転手と助手が、自分たちの配送ルートを頭の中で描きながら、この店に先に行って次にこの店というふうに、伝票を調合していました。それが済んでから伝票の束を持ってプラットホームに行き、積み込みをする。当然配達する順序の逆に、いちばん最後に配達する物をいちばん最初に奥に積み込んでいくわけです。トラックの運転手の判断に頼ったやり方でしたから、伝票の調合に時間がかかり、その頃はトラックが会社を出発するのはだいたい10時半から11時という状態でした。これでは配達できる件数が少なくなるし、運転手もトラックもたくさん必要になります。そこで、コンピュータに南方面なら南方面に最適な配送ルートを記憶させて、その日に届ける物について最適ルートの順に沿って配送日報を出しました。運転手はこの配送日報を持ってその通りの順序で回ってくればいいのです。もうひとつ、トラックに積む順序を打ち出した車積リストも出しました。これを元にどんどん積み込めばいいので、専門家でなくても、アルバイトの学生でもできるようになりました。この仕組みによって、トラックの出発時間は1時間半くらい早くなり、大きなコストダウンにつながりました。
この他にも、いくつも仕事のやり方が変わった部分がありました。物流設備とコンピュータ情報を融合させ、卸売業の受注から配送に至る一連の業務を最も効率よくローコストで行う仕組みの実現により、他の同業者との差別化を図り、得意先が要求する多頻度少量の高度な仕事にも応えられたということです。これが当社のC&L戦略の最初の形でした。
今話したようなことは現在では決して珍しくなく、多くの会社でやっていることでしょう。しかし、今から16年前にこのようなシステムを導入したこと、しかもこれをほとんど自前で開発したことは、評価されるものだと自負しています。

■初めてのコンピュータ導入で、粗利管理を実現。原価率コードを考案。
当社が初めてコンピュータを導入したのは昭和46年10月です。北海道内の7社が合併して今のダイカ体制になってから2年ほど経った時期した。このコンピュータ導入の推進役が私でした。内田洋行さんのユーザックという機械を導入したのです。確か毎月のレンタル料が15万円ほどだったと思います。紙テープにパンチをしてそのデータを機械に読み込ませる代物で、記憶容量は今のパソコンに遙かに及ばない貧弱なものでした。それを使って何をやったかというと、粗利管理です。私がこの業界に入って感じたことのひとつに、売上はわかるが粗利がつかめないということがありました。決算時に棚卸しをすると総体の粗利益は出ますが、管理上必要な月次の粗利がつかめない。そして、セールス別、得意先別、商品別にいったいその商売でどのくらい利益が出ているかがわからない状況でした。手作業でできないことはありませんが、膨大な人手を要してしまうので出来ませんでした。結局、売上しか出てないから、安売りでも何でも売上の大きいセールスマンが大きな顔をして、コツコツ回って利益はがっちり取っているものの売上が上がらないセールスマンは小さくなっているようなことも見受けられました。これでは科学的な商売とはいえません。何とか商売の一つひとつについて粗利益を出したいというのが私の願望でした。
しかし、当時でも3000点から4000点の取り扱い商品がありましたから、これだけの商品の粗利計算は大変なことでした。そこで私が考えたのが、原価率コードです。普通は3000点の商品があれば3000の商品コードを用意しなければなりませんが当時は無理でした。しかし、よく考えてみたら、例えば「キスミー」という化粧品には口紅やマニキュアなど色別でいろんな商品があり100アイテムくらいあります。しかし、小売価格(定価)に対して何掛けで当社に入っているか調べると、これは2、3種類しかないのです。6掛け、6.5掛け、7掛けとか、せいぜいそのくらいです。そこで、メーカーコードを2ケタ取り、その後に6掛けであれば60、6.5掛けなら65という数字を置き、最後にチェックデジットを入れて5ケタの商品コードを作りました。メーカーの数が200くらいでしたから、1メーカーで仮に3種類の掛け率があったとしても600の商品コードがあれば一応その原価は計算できることになります。納入価格は得意先によってばらばらですから、納品伝票に1行ごとに商品コードを記入して、定価、納品価格、数量、これを紙テープにパンチします。するとコンピュータの中で定価と掛け率を掛けて、仕入れ価格が出るのです。それと納入価格の差額を計算するというやり方で粗利益を出すことができました。これをセールスマン別、メーカー別、得意先別に出すことで粗利管理ができるようになったわけです。
各セールスマンには売上予算のみならず粗利予算も持たせて、上司がチェックしては「安かったじゃないか」「利益が少ない」などと言わなくても、自分で管理できるようになりました。自律経営という私の考え方に沿ったやり方です。
こんな昔話をしたのは、極めて性能の低いコンピュータでも業務を絞って工夫をこらせば何とかやれるものだという例になれば、と思うからです。

■他社との差別化の武器を得るべく、自社開発にこだわる。
皆さんコンピュータ導入されていると思いますが、あるいはシステムを変更する場合など、あれもこれもと欲張らずに、最も緊急を要する、または成功の可能性のあるものから順次取り組んでいくことが当然なやり方だと思います。私は今、原価率コードの話をしましたが、これでは在庫管理はできないわけですね。在庫管理は後回しにして業務を絞りました。とかくコンピュータメーカーやソフトウェアメーカーは、「これもできますよ、あれもできますよ」と言うのですが、私は彼らの話は5掛けで聞きなさいと言っています。
当社の開発したコンピュータシステムもSOESから「ADONiS」へ、そして「DARWIN」と発展してまいりましたが、それをシステムアップして、昨年2000年問題のクリアということでさらに分散処理を進めました。本体負荷を軽減して柔軟な現場に対応できるシステムとして、「DARWIN2000」に進歩させたのです。いちばん最初のコンピュータ導入時からずっと自社内開発です。もちろんコンピュータメーカーの力は十分借りましたが、あくまで中心は当社の情報システム部員です。外部に委託するとノウハウの蓄積ができないという私の考えで自社開発にこだわってきました。現在はそれがベストかわかりませんが、少なくとも今までは、これにより他社との差別化の武器となり、どんな得意先の要求にも直ちに応えられるので営業活動に大いにプラスとなったと思っています。
得意先からの受注方法は、90%オンライン受注が主です。直接コンピュータに入ってきますから、いちいち人手をかけて受注内容をインプットする必要がないので大きなコストダウンに繋がっています。この業務も、10数年前を振り返れば、電話で注文が入ってきたり、セールスマンが回って注文を取ってくるのがほとんどでした。
当時、こんなことがありました。あるドラッグストアから注文が来ると電話で30分かかるのです。こちらの女性社員は一生懸命電話で聞きながら注文内容を手書きで書き取り、次に商品コードをつけてコンピュータにインプットするので大変な時間がかかる業務でした。そのドラッグストアは販売力が非常にある得意先ですので、何とかしなくては、と考えたのが、ドラッグストアに発注端末機を無償で貸し出し、それを使って発注してもらうことでした。発注の際に端末機で商品の棚札をなぞる方法でした。
そういうことをやっていた時に、札幌の卸業者が集まり、情報化時代の卸は何をすべきかという研究会を開催したのです。私も参加し、その縁でできたのが地域VAN会社、(株)ヘリオスです。ヘリオスで扱うのは、ひとつの端末機でいろいろな取引先に発注できるというものです。先のドラッグストアで当社が単独でやったことを共同で事業として立ち上げたわけです。これにより、小さな店でも非常に簡単にオンライン発注ができ、合理化ができるようになりました。受ける卸ももちろん合理化できます。99年12月にはヘリオスの設置台数が1000台を越えたと新聞記事になりましたが、全国で最も成功している地域VANだそうで、これは北海道の卸が皆で力を合わせてやった成果といえましょう。

■卸機能の進化を追求してやまない
当社は、平成3年に、リアルタイムの単品在庫管理をスタートしました。全部で30000アイテム、その中には紙とか洗剤など非常に出入りの激しい商品も含まれているわけですが、その全アイテムをコンピュータ在庫と実在庫とぴたっと合わせるのは、理屈では簡単ですが、実際は大変むずかしいことです。私もそのむずかしさをよくわかっていましたからしばらく手をつけないでいたのですが、平成4年に株式店頭公開を予定していたこともあって、その前年から実施の運びとなりました。現在は絶対誤差0.61%まで精度が高まり、月次決算はコンピュータ在庫を基にしてやるところまで来ています。当社の仕入先無返品制度も、単品在庫管理がなくては実現しなかったと思います。
また、台車にパソコンをつけてピッキング時に検品を併せて行える「DREAM」という機械や、二人でやっていた検品作業を一人で済ませられるスキャン検品機「アッテル」という物流機器を、機械メーカーと共同で当社が自社開発しました。これらも成果を上げていて、コンピュータと物流のひとつの接点になろうかと思います。
いろいろお話しましたが、卸機能をどこよりも、ローコストで果たすための戦略、C&L戦略を、これからも進歩発展させ、永遠に世の中のお役に立ち続ける卸商社を志向して、がんばっていく考えです。

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