事例本文(ニュヒーロー)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:26 (株)ニュヒーロー   事例発表日:平成12年10月17日
事業内容:自動車整備、中古車販売
売上高:3億2800万円
1999年度
従業員数:22名 資本金:2150万円 設立:1972年
キーワード 自動車整備中古車販売、

インターネットオークション
IT時代における企業戦略と経営者の役割

(株)ニュヒーロー URL:http://www1.ocn.ne.jp/~hero/


(株)ニュヒーロー 代表取締役 城間勇清氏
プロフィール

 軍雇用員などを経て1972年浦添市内でヒーローモータースを設立。20代で独立し、以来一貫して自動車整備および、中古車販売を手がける。経営者としてのリーダーシップを発揮し、いち早く情報化を推進。平成10年からはインターネットオークションに参加し中古車の買付/販売を行なっている。

~映像とデータで見せるインターネットオークションで、質が不安な中古車販売のネックを解消して、売上アップ。~

 沖縄ではお馴染みのヒーローモータース。城間社長は20代で会社を設立し、今日まで一貫して自動車整備、中古車販売の事業を手がけている。県内ではいち早く自社の情報化とともに、インターネットオークションに参加して中古車の買い付け、販売を行っている。車の状態をいかにチェックするかという点で中古車販売はむずかしい。そこで城間社長が見出した方法とは?


■窮状打開の策として情報化時代への対応を決意
  ITについて専門的な知識など何ひとつない私がここでお話する場を与えられたのは、インターネットオークションに取り組んでいるからだということからですが、実はこれは窮余の策だったのです。5、6年前、会社の経営状態がかなり悪化しました。バブル崩壊後、車検台数も中古車の販売台数も落ち込みました。この危機を何とか乗り越えるか、店をたたむか、という瀬戸際にありました。そこへ、産業振興公社さんに手を差し伸べていただき、経営指導等のアドバイスを受けて大変お世話になりました。そのご縁から、情報関係にくわしい経営コンサルタントをお願いすることになり、毎月1回当社に来ていただきました。これがとても役立ち、半年間の予定を1年に延ばしてもらったほどです。
  その戦略的な経営を考える部分で、これからはパソコンの時代だ、情報の時代だと考え、社内への情報投資を図ることになりました。社内には非常にパソコンに詳しい幹部が何名かいて、私が戦略的にこれからこうしたいのだと話した内容をすぐにキャッチしてくれ、実践面で活躍してくれました。
  その後、また他のコンサルタントの方を何人も活用して、最終的には当社とマッチングしたコンサルタントの方と出会えて、営業戦略、販売戦略を構築することができました。

■情報で車を売る
  「情報とは情(なさけ)に報いる、つまりごまかしがきかない、嘘がつけないことが情報化時代の真髄ではないか」と、何かの講演で聞いたことがあり、その考えを私自身も持っています。当社のインターネットオークションは、ネット上で情報を見て車を売り買いするものですが、中古車は値段があってないようなものです。ブローカーまで含めると1000社くらいある中で、ほとんどその車の仕入れ先、車の履歴、車輌状況などが雲にかかってわかりません。お客さんがいくら安いと思って買っても、本当にその値段が適正だったのかな、ということになります。新車だったら定価があり、値引き幅があり、とちゃんとした規定があります。しかし、中古車の値段はトップの胸三寸のようなところがあって、非常に消費者を惑わしているのです。
  当社も10年間ほど、在庫を100台ほど抱えて新聞、ラジオなどかなり広告宣伝費をかけましたが、最終的に何千万円か目減りしてしまいました。30年近く整備工場もやっているから、まがいものを売ったりしたらすぐにクレームが来るし、整備工場にしわよせが行きます。しかし、たくさんの在庫を抱えて、経費がバカになりませんでした。
  そういう泥沼状態のところに、情報で車を売るオートバンクを知りました。そこで、ネットワークのテレビオークションを活用して、ユーザーに真の情報を流そうと考えました。社内で何度も経営会議を重ねて、納得ずくめでやろうと準備を進めました。社長室には端末機が1台ありましたが、1日1回も使わないような状況でした。せっかくアクセスして色々ビジネス情報とか下見検索に使えるのに、毎月リース代を払っているのがもったいないほどでした。これも何とか活用できないかなと考えました。こうして、平成10年2月から中古車のインターネットオークションを立ち上げて、平成11年の6月頃から非常にお客さんが増えてきました。

■予想外に高額車が売れる
  在庫管理にかかる経費は従来の10分の1程度です。
当初の予測と大きく違ったのは売れる車の価格帯です。沖縄は小さい島ですが通勤、通学などの交通手段として車は必需品で、従来、安い車がたくさん売れていました。県内の中古車店舗では200万円、300万円の車をおいているところはまずありません。ところが、実際にインターネットオークションを立ち上げてみたら高額車が売れるのです。最高で小売価格489万円、だいたい150万円から200万円くらいが多いですね。車に詳しいプロやほんとの車好きの方々が来てくれました。そういう方々はお金も持っている優良なお客さんです。そして、高額車だとクレームがほとんどありません。自社の整備工場側も、今までは社長がかなり使いこなされガタがきたを買ってくるのでこっちを苦しめる云々、文句がありましたがそれもなくなりました。
当社は、2つの業界団体に所属していますが、インターネットオークションを行うにあたり、業界の風当たりは相当なものでした。
  もう同業他社からみたら信じられないことなのです、卸値を見せて商売するのかと。企業の経営バランスからいうと、そういう正規のものも売りながら、かなり使いこなされガタがきたものも売って、その埋め合わせをするというか、リスクの部分を補うやり方をしてきました。当社は整備工場の部分である程度生活できるし、ある意味販売業はプラスアルファ的な部分なので、専業のところと感覚が大変ずれてしまうのです。
  私も自分の持論を持ち出して懸命に説得しました。業界団体の理事会などで私が「これからはこういう時代、IT時代だ」と言うと、みんな「IT時代だというのはよくわかる」と言うのですが、続けて「でも10年後だ」と。まだ早いと言うのです。だから私にもインターネットオークションは10年後にやってくれ、と指摘されたりもしました。
  そうこうしているうちに、中古車販売大手のガリバーは進出してくるし、ドルフィン、アップルなども沖縄に進出してきました。わずか1年半ぐらいの間のことです。私はそれを見て、情報化時代の1年は通常の7倍の早さでというのは本当だなあ、と実感しました。
  さらに、最近はiモード、モバイル時代ということで、私もiモードの携帯を持っていますが、これに甘んじてはいられないと思っています。

■映像文化で育った若い世代にフィットした商法
  当社に来ていただければわかると思いますが、800万円くらいかけてインターネットカフェテラスとしてパソコンを8台入れてあり、東京のビッグスリーと、そのビッグスリーに属するオートバンクとか、カーバンクを全部そこに設置しています。客層は若い世代から40代くらいまでいらっしゃいます。そこでアクセスして見てよく車を買っていただいています。
  テレビショッピングやインターネットショッピングは、注文した物が来てみないと完全にはわからない部分があります。そこが消費者にとってまだ不安なところだと思います。しかし、このネットワークビジネスで、私が手がけているものは会社が全責任を負うということで、1年保証付き等をしています。お客さんがオークションで競り落とした車が、何月何日どこのオークションで出品ナンバー何番とちゃんと記されています。決して嘘のつけない仕組みですから、実際に車が来てから問題が生じることはほとんどありません。映像オークションと呼んでいますが、車を肉眼で見るよりも映像で見たほうがさらによく見えようです。
  ことに若者は小さい時から、ファミコン、パソコンをやってきて映像文化で育ってきていますから、映像を真実として見ています。我々が車を仕入れに行く時はパソコンを使わずに、実際に現場まで見に行きます。ところが、彼らはパソコンをいじって、ボッシュのアルミがついている、ナカミチのカーコンポがついている、これは時価50万円はするとか、こういった情報をぽんぽん仕入れています。映像オークションに対する戦略的なものを持っているという気がします。そういうことで、このインターネットオークションによる中古車販売は今非常に好評を博しています。
  私はパソコンはワードさえ打てないレベルです。しかし、当社の若い社員たちは使いこなせます。パワーポイントで会議もやっていますし、社内LANも1年半前に入れて、IT化は県内の町工場では当社がトップではないかと自負しています。要するにビジネスは儲かるための仕組みですから、どういうことに主眼をおいてこのITなるむずかしいことに挑戦していくかが我々の課題ではないでしょうか。

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