事例本文(サンプラス)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:31 サンプラス(株)   事例発表日:平成12年10月24日
事業内容:水道機材卸、住宅機器販売・施工
売上高:20億円 従業員数:42名 資本金:5000万円 設立:1947年
キーワード 機械工具・水道機材・住宅機器販売、
営業利益重視、社員の意識改革、人事制度の再構築、評価制度の改善、
情報共有
私はこうして不況打開をIT導入で業務改善した

サンプラス(株)

サンプラス(株) 代表取締役社長 海田孝雄氏
プロフィール

昭和44年大阪立売堀で実家の機械工具関連商社で4年間修行後、出雲機工㈱入社。昭和60年社長に就任。創業50周年の平成9年社名をサンプラス㈱に改め現在に至る。

~ITを活用し、全社一丸となって新生を図ることに成功~

 バブル崩壊で業績が著しく悪化して苦しんでいる企業、経営者は少なくない。サンプラス(株)も然りであった。しかし、海田社長は、このどん底の中で大幅な業務改善を行い、IT導入の経費を絞り出すことを決意した。この英断と努力は、社員の意識とレベルの向上、ひいては利益向上という成果となってあらわれてきている。


■会社概要
創 業 昭和22年
資本金 5千万円
社員数 42名
売上高 20億円
事業内容 機械工具/水道機材卸・住宅機器販売及び施工
営業地域 出雲市・平田市・松江市及び周辺地域

■21世紀に生き残れる企業への再生を目指して
  バブル期の拡大ムードに乗り、売上とともに借入金も増やしていた当社は、バブル崩壊後、このままでは倒産もあり得るようなドン詰まりの事態となってしまいました。そんな時、コンサルタントの指導を受け、トータルな業務改善を進めることを決意したのです。
  まず、言われたのが、基本的に社員の意識改革をやらないと、いくら機械の導入やIT化を図ろうとしても何にもならない、ということでした。そこで、さまざまな部署の若手を中心にプロジェクトチームを結成し、その中で問題点を抽出していくことにしました。役員もまた勉強会などに積極的に参加するなど、自らの意識改革を実践しました。全社一丸となり業務改善に取り組む方向となっていきました。その上で、パソコンサーバーを導入することにより、フレキシブル、かつスピーディな対応を目指し、平成9年からはじめて現在に至っています。投資の決定は平成10年で、投資額は3,000万円です。開発期間に1年を要し、平成11年10月に運用を開始しました。
  部分的なことでは効果がないと判断し、総合的に取り組むことを決意してスタートしました。企業存続が危うい危機感の中で、社員のやる気を喚起し労働意欲を高めたい、今後の市場環境に通用する実務体質を養成したい、厳しい環境下で利益が生めるようにしたい、つまり、21世紀に生き残れる企業体質を目指したのです。

■ステップ1/IT化の前準備、業務改革
(1) これまで計画の立案はトップダウンで行ってきましたが、それは社員の主体性をなくし責任感が非常に薄くなるという、デメリットがありました。売上が上がらなくても、利益が上がらなくても自分には関係ないというような部分が感じられたのです。そこで、部門主体で事業計画を考える体制に変革をしました。上期、通期で事業計画の反省会を行なうようにしました。上期にこれからの新しい事業計画を、各部門ごとに検討したものを発表させ、それを通期に渡って結果発表させました。すると、やはり社員の自覚、責任感に変化が見られるようになりました。
(2) 社員の質を向上させるため、教育の機会も増やし、管理教育、現場教育などを充実させました。
(3) 売上重視から営業利益重視へ考え方をシフトしました。
(4) 担当の常務が引き受けていた部分を、各部門の部門長に責任を持たせ、マネジメント能力を高めるように図りました。
(5) 営業マンの個々の業績評価を変え、営業能力、付加価値能力を高めるようにしました。
(6) 各部門の実態と決算予測が見られるようにしました。
(7) 社員のやる気を喚起するため、人事システムを再構築。成果主義賃金制度、能力主義を導入。また、コンサルタントに賃金の低さを指摘され、まず底上げとして、県内の平均賃金に近づけるよう全社員の昇給を実施しました。
(8) 複雑な職制や名前だけの職位を廃止しました。
(9) 不採算部門の撤退、本社統合などにより大幅なコストダウンを実現。しました

■最新のサポートシステムを構築
  こうした業務改善の結果に基づくサポートの仕組みを情報化したのが当社のIT化です。現場の導入事例を掲げてみますと、
(1) 営業マンが今まで個人化していたお客様のデータや、情報をパソコンサーバー導入により共有化。売上予測、受注計画を進めていくうちに、情報のオープン化につながりました。これにより、担当者の不在時に顧客から電話があった場合でも、アシスタントがパソコンを見ながら「先日の御見積の件でしょうか」などと適格な対応ができるようになりました。
(2) パソコンを1人1台体制にし、業務効率を高めました。
(3) 水道機材部には、毎朝7時50分から9時頃まで、水道設備業者が商品を取りに来ます。従来は、各業者が紙に書いてきたメモを見ながら女子社員が品物を出して伝票を起こし渡していましたが、間違いがあったり業者によっては、伝票の手間が違ったりして時間的ロスが大きい状態でした。これもパソコンサーバー導入により、あらかじめおおかたの品物をインプットした上で、その場で即時に伝票に打ち込んで商品がすぐ出せるようにしました。

■さて、その評価は?
  では、業務改善及びIT化による成果を、改善前と改善後を比較してみてみましょう。売上は、改善前は22億7,700万円、改善後は21億1,300万円で減少してはいるものの、粗利率が15.4%から16.3%にあがっているので、内容的には悪くないと思います。経費は、年間約3億3,900万円から、現在では3億円を切るまでになりました。利益は1,900万円だったものが現在は3,600万円。自己資本率は10.5%から13.9%へ増えていて、30%を目標としています。また、財務体質を高めるために未処分利益の中から別途積立金を多くしようということで、未処分利益中の別途積立金の占める割合が59%から71%にまで増えています。
  社員の評価としては、予算達成者が増加しました。19名の営業マンがいますが、57期にはそのうち4名が予算目標を達成しました。それが58期には19名中10名が達成と伸び、社員の質の向上を実感しています。
  在庫は、年間の在庫がだいたい9,700万円だったものを7,500万円に、つまり2,200万円の圧縮を実現しました。仕入担当者はデータを活用して売れる物はそのまま、あるいはたくさん買うようにし、売れない物はほとんど仕入をしない、というようなメリハリをきかせたやり方ができるようになり、在庫の適性化が図れました。
  また、オフコン時代の指定伝票を書いたり、もう一度書き直してインプットしたりするなどロスの多い作業が解消されたので、3名の間接人員を省力化し、営業へ配置転換を行いました。

■IT導入を振り返って
  こうして4ヶ年のIT化を柱とした業務改革推進を行ってきた中で、結果を恐れず勇気を持って推進することが大切なのだと実感しています。意識の改革というものは、経営者である私、及び社員、特に古い社員の意識を改革していかなければできないと思います。また、能力の開発とともに、社員それぞれが自主的な取り組みを行うような仕掛をやっていくことがポイントです。会社としては具体的な表示をすることです。例えば、「今度から給料をこれだけ上げます」「自己資本比率を30%に上げます」というように。家族手当の見直しまで実施し、明確に表示しました。
  結果的に、IT導入において、目的を明確にして総合的に取り組んだことにより、目に見えて実績が上がったのだと思います。あの時、平成9年に苦しい中でこの導入を決意しなかったら、恐らくもっと事態は悪化していたのではないでしょうか。IT化にはお金がかりますが、やっていかないと時代に取り残されて脱落していくのではないでしょうか。企業の課題を解決するためにはこのITが本当に不可欠なものだと確信しています。

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