事例本文(ヒューマングループ佐世保産業)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:34 ヒューマングループ佐世保交通産業   事例発表日:平成12年10月27日
事業内容:自動車学校、観光バス
売上高:不明 従業員数:66名 資本金:1600万円 設立:1953年
キーワード 観光事業、自動車学校運営、
経営情報、コールセンター,全員経営全員コンピュータ、
情報共有
全員経営全員コンピュータ

ヒューマングループ佐世保交通産業 URL:http://www.humangroup.co.jp/

ヒューマングループ佐世保交通産業 代表取締役社長 内海和憲氏
プロフィール

 1973年法政大学経済学部卒業。佐世保交通産業入社。1978年専務取締役及び教育部長に就任、1989年ヒューマングループ代表取締役に就任。

~現場スタッフも皆、経営とコンピュータを理解し生産性の高い企業に~

 先代社長である父の急逝で経営者のポジションに立った内海氏は、なかなかのアイデアマン。自動車学校、観光バス運行という事業において現場のスタッフまでも全員がコンピュータで情報を共有し、経営がわかるような企業に育ててきた。失敗は山ほどある、と笑う氏だが、厳しい経営環境の時でもできるだけ教育やコンピュータ導入等をしてきた結果が実を結びつつある。


■社長になったが経理がわからない、それがきっかけの全員経営全員コンピュータ
  ヒューマングループは、昭和28年創立、もともと自動車学校を運営してきました。1989年、社長であった父が心筋梗塞で急逝し、認可制度の事業ですのでその日のうちに長男の私が社長に就任しました。その後、観光事業にも進出し、貸し切りバスなどを運行しています。従業員は、私が社長になった当時は85名、今は69名です。売上はその当時よりも若干上がっていますが、主力の自動車学校は30%落ち込んでいます。
  突然社長になっていちばん困ったことは、経理がわからない、数字が読めない、決算書が読めないということでした。それで、当時の経理主任に全てを聞いて勉強していこうと考え、1年半やってみましたが全然ダメでした。「先代がやっていたように経理をやってくれ」と頼むと「全て先代社長の指示を受けて仕事をしてきました」との返事で愕然としました。
  そこで自分が勉強するしかないと考え、せっかくだから私一人が勉強するのではなく、みんなにも一緒に勉強してもらおうと考えたのです。ネットワークでいつでも情報をオープンにして共有し、いつでも引き出せる環境を目標としました。そのために経営ということ、数字を理解することをみんなに身につけてもらわないといけない。そうか、全員が経営を身につけたらすごい会社になるなと考えたのが1990年のことです。
  しかし、そう簡単にはいきませんでした。原価償却ひとつにしてもややこしく、私自身よくわかりませんでした。それで、マネジメントゲームを開発した西 順一郎先生には面識があったので相談しました。「全員経営をするためにはこのマネジメントゲームがいちばんいいよ」と勧められました。あわせて、「マネジメントを全員でやるんだったら今からはコンピュータだよ」と言われ、さっそく導入しました。しかし、自動車学校の指導員、貸し切りバスのドライバー、整備工など現場のスタッフから、自分たちは経営をするためにこの会社に入ったのではない、コンピュータなんてとんでもない、という声が上がってきました。そんな状況から始めて10年やってきた取り組みをお話します。

■さまざまな部署で活用されているネットワークによるコミュニケーション
  まず、コンピュータを3人で1台くらい設置しましたが、メールを打たない社員に「どうしてやらないのか」と聞くと、他の人が使っていたせいにするので、すぐに台数を増やし、現在ではパソコン保有率は137%にまでなりました。近い将来さらに増やす予定なので、150%近くになるでしょう。若手ほど自腹を切ってコンピュータを購入する傾向もあります。このように自己投資をしたスタッフには、アメリカ研修をはじめ、色々な研修に参加させています。
  では、現在どのように「全員経営全員コンピュータ」が実現されているのか、各分野において紹介しましょう。
1) 自動車学校の指導員が生徒さんと通信した事例
・ 指導員A
  東京で研修中に、受け持ちの生徒が終了検定を受けることになり、まず会社のPCから指導員Aのiモードに、合格したという知らせが入りました。さっそく、Aは「おめでとう、学科もがんばってね」と生徒さんにメールを送信すると、それを受けた生徒さんは、先生は今、東京に行っているけどメールが来た、と感動する。これがまさしくヒューマンコミュニケーションです。
・ 指導員B
  自分の休暇中に受け持ちの生徒が技能検定合格したと会社から報告があった。早速「合格おめでとう」というメールを打ち、その中で学科試験においてのアドバイスをしました。
・ スタッフは学科の教材などもコンピュータを使って自ら作成できる、授業もパワーポイントなどを駆使してできるまでのレベルになっています。
2) アメリカ研修
参加したスタッフは必ず毎日、何を見た、何に感動した、ということをデジカメで撮った写真を添付して送信することが義務づけられています。
3) 東京での研修
講演を聴きながらその内容を入力して、講演終了と同時に会社に送信しています。
4) 経営情報
常に日次決算まで公開され、数字が見られるようになっています。目標値に対して現状はどうなのか、損益分岐点は、など経営情報が読みとれます。私どもの会社に入社しても、マネジメントゲームをやっていないと経営がわからず、せっかく公開してある情報を見てもチンプンカンプンということです。
5) コールセンター
私のところに都合の悪い情報が上がってこないのを苦慮してコールセンターを設けました。自動車学校に入校されたら「入校ありがとう」「仮免合格おめでとう」「卒検合格おめでとう」などのメッセージを送ります。するとお客様から生の声が驚くほど集まって来ます。それをデジタルデータ化して会社にフィードバックし、より顧客満足に向けて活用します。
6) ヒューマントラベルから仕事が入ると、バスは言われたままに動いていたものが、今ではヒューマントラベルの受注、お客様との打合せのプロセスを情報共有で把握できるようになりました。

■マトリックスな組織で、感動を提供する事業をさらに発展させたい
  よく組織は文鎮型かタテ型かと言われますが、私がコンピュータを使ってわかったのは、そのどちらにも自由自在にできるマトリックス組織ができるのだなということです。ありとあらゆるコミュニケーションが自由自在にネットワーク上でできるのです。「全員が経営計画書を作成できるようにしたいね」とやってきましたが、利益だけでも営業利益、経常利益、純利益などがあり、むずかしいです。それが、マネジメントゲームをやることで自然と理解をしていきました。すると利益目標が明確にでき、それに向かってチャレンジするようになりました。
  また、私は常に社員と飲み会などを通じて、何をしたいかを明確に伝えてきたことが成功の一因だと考えています。トップダウンのやり方です。
  私どもの商品は物ではありません、スタッフこそが商品です。お客様に感動を与える、それが当社の目指すものなのです。だからこそ、スタッフの質が向上し、経営のスリム化により人数は減っても生産性があがったのです。
  今後の取り組みも描いていて、すでに準備を進めているものもあります。
  自動車学校の卒業生から「私がお世話になった先生、最近どうしていますか?」とよく聞かれるので、だったら近況報告をインターネットで伝えようということになりました。今は、入校する生徒さん全員にメールアドレスを配り、在学中は指導員や会社のコールセンターとメールでやりとりできるように準備を進めています。佐世保自動車学校では、再来年を目処にパワーマックをずらっと並べて生徒さんに開放する予定です。
  システムについては、情報系から基幹系に入ったのはやりやすかったと思います。事務の効率化、業務の合理化はもっともっとできると思いますので、今後の課題のひとつでもあります。

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