事例本文(誠新産業)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:41 誠新産業(株)   事例発表日:平成12年11月21日
事業内容:電力・電設・通信・制御機材販売
売上高:不明 従業員数:約200名
(関連含む)
資本金:2億円 設立:1951年5月
キーワード 産業用資材販売、
営業支援、経営情報、
営業支援システム、情報共有、モバイル端末
中小企業の生き残りをかけたITへの取り組み

誠新産業(株) URL:http://www.bcc-net.co.jp/kigyo/seishin/

誠新産業(株)代表取締役社長 坂本悦夫氏
プロフィール

 昭和11年生 熊本市出身。誠新産業株式会社 代表取締役社長。
元 電力会社 理事資材部長。電力会社時代はEDI、電子資材調達・決済などを推進。趣味はテニス、ゴルフ、囲碁。

~ITを活用することで、新時代を勝ち抜く企業体質へ改革しよう~

 中抜きの時代、電設建設関連の資材及び機器工具の商社である誠新産業も新たな展開を図るべき時を迎えていた。その局面において、坂本社長の選択した方法がIT活用による企業体質の改善、物を仲介する商社から情報を仲介する商社(情報エージェント)への転換である。まずはどこから着手し、どのように進んでいるのか、現場の声を届けていただいた。


■会社概要
本社所在地 福岡市中央区薬院2丁目19番28号
営業所 札幌、仙台、新潟、東京、名古屋、大阪、広島、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島
関係会社 誠新物流株式会社、沖縄誠新株式会社
資本金 200,000千円
社員数 約200名(関連会社含む)
業務内容 電力・電設・建設及び通信・制御用資材・機器工具の仕入、販売
その他 ISO9002認証取得(CI/1749、2000年8月10日)

■システム構築の前に会社の抱える課題を洗い出してみたら・・・
  誠新産業(株)は昭和12年創業。業務内容は、電力、電設、建設及び通信制御用資材、機器工具の販売をしています。北は北海道から南は沖縄まで営業所や関連会社を開設しています。我々は商社であり中抜きが進んでいく中で、いくつもの課題を抱えていました。商社として生き残りをかけるにはどういったことが必要なのか。トップの経営判断を求められております。では先ず第一に、トップの経営判断に必要な情報は何なのか。第二に、従来の馴れ合いの中で仕事が確保できる時代は過ぎ、情報や提案力を持ち合わせた者が仕事を得られる時代において、営業マンに必要な情報は何なのか。この解決のために営業支援システムを開発しました。システム屋に作らせるのではなく、あくまでも我々が求めるニーズに対応したものを作ることで、そのシステムを活用しています。
  基本的には社内の情報を多面的に利用、活用することで構築されており、当社では社長、役員以下全員が携帯パソコンとPHSを持ち、何時、何処でも情報の発受信がされ、インターネットができ、情報の共有化が図られています。
  このシステム構築に取り組む前に、まず現状の経営面、営業サイド面での問題点を徹底的に洗い出しました。
[経営の問題点]
  ①営業マンの動きが見えない
  ②売掛金の管理が行き届いていない
  ③実績が出るのが遅い
  ④部門を超えた情報の流れがない
  ⑤現場の声が届かない
  ⑥最終的な物件ごとの収支がよくわからない
等が洗い出されました。
[営業サイドの問題点]
  ①見積・受注・手配・納品・請求・入金の管理が必ずしも連携されていない
  ②業務日誌・報告書が書きにくくて活かされていない
  ③売り上げ状況がタイムリーにわかっていない
  ④データを自由に見に行くことができない
  ⑤取引先に対する営業の実際の経緯がわからない
  ⑥引き継ぎがうまくない
  ⑦仕入先からの請求書の照合が大変、売掛金の情報がタイムリーでない
  ⑧売れ筋商品が見えない
  ⑨報告業務が迅速にできない
等問題点がたくさん出てきました。これらをどういった形でITで支援しているかということが今日のお話です。

■計画的・効率的に業務を推進するシステムづくりの実際
  では、具体的にどのように問題解決していったのかお話します。
  基幹システムとして、人事、総務、労務から一般的な情報処理システム、会計処理システムまで可能な範囲カバーリングできるような形を確立しております。営業マンへの情報提供のツールとしては「件名管理」で、全国の建設件名情報などの把握、提供、営業活動中の物件などについては「見積支援」「販売状況管理」システムに加えた会計システムで業務を網羅し、グループウエアとして全体のシステムが出来上がっています。私どものシステムが最終的にどのようにネットワーク化が進められているのかといいますと、福岡市にホストコンピュータがあり、PCのサーバーがあり、社員全員がモバイルを持ち、活用しています。極端な言い方ですが、モバイルですから、会社に出て来なくて何処に行ってもゴルフに行っていてもいいよ、その代わり直行直帰で目標を全部達成しなさいと言っております。東京のスタッフは車に乗っている移動時間のロスが多く、なぜかというと客先からいちいち営業所に帰って書類を書いているのです。それをPCから落とせるようにしたことでホテルでもどこでも書類作成ができ、効率よい業務が進行できます。
全体的に計画的な業務を支援すること目的とした、「スケジュール管理」があります。これには営業全員の訪問活動などの行動計画を入れ、実動面は業務日誌とリンクしており、訪問予実が管理されております。「取引先管理」は、取引条件、取引実績等、お客様の状況を把握できます。「売掛金管理」は、得意先別、部門別、担当者別に入金の遅れがないかなどを把握できます。
全体的な「営業支援」システムとしては、業務日誌、受注支援、見積支援、リテールサポート機能があります。日誌から色々な切り口で見えるようにし、スピン、リンクができるようになっています。日誌に敬語なし、3行以下とし、3行以上のものは添付ファイルにせよ、とできるだけ短く入力することにしております。
「受注支援」は受注状況の把握、「見積支援」は見積書の比較、過去の見積とのデータベースの比較、「リテールサポート」とはメーカー、小売各社間のネットワークなどサポートしております。

■情報提供業務で営業力を強化
  こうした計画的業務、支援業務と並んでもうひとつの柱が情報提供業務です。これは経営者、営業マンにとって必要な情報を定量的・定性的に提供しております。定量的には受注明細、受注から入金までの販売の得意先別・商品別・部門別・担当者別・月別等の販売実績の確認、見積の状況の把握、定性的なものとしては、件名情報、工事概要、取り組み状況、行動計画、行動予定、活動状況、業務日誌、取引先情報の会社概要、キーマン情報などがあります。非常に盛りだくさんのようですが、これはみんな必要な情報であります。今まではこういうものがなくても会社はやってこれましたが、これからはITを利用することによって非常にスピードアップし、効率よく活用できるようになっております。
  そこで我社は、需要減、競争減に対する営業力強化を図るために、仕事のやり方を改革しようと立ち上げました。今までは会社に来てマジメにやっていればよかったが、今後は就社から就業という意識の変化が求められ、営業が営業という業務に一層注力をこらすべきであります。これからは会社にいなくても業務が遂行できるモバイル態勢を展開しております。当社がシステム確立を図った要因の一番大きなことなのです。現在ではペーパーレス化も着々と定着しております。

■ISO取得、国際会計基準にもIT活用、そして新時代の企業へと変化を目指す
  このように会社の仕組みを再構築し、今年ISO認証を取得することができました。世界に通用する企業として会社の品質の向上を目指すなか、このISO取得に取り組んできたのですが、審査を受ける時にIT技術が大変功を奏しました。あの資料はありますか、この記録は残っていますか、会議のこれはどうなっていますか、と言われた時に、全部このパソコン上で、これです、あれです、と言えます。必要な情報が大部分データベース化されたものが活用されております。
また、いよいよ来年から始まる時価会計に伴う国際会計基準に対応できる会計システムの導入も図っています。現金幌馬車隊のような古い体質ではもうダメであり、連結などの税務会計、時価会計基準に対応した企業でなくてはなりません。
  最後に、ITの活用はISO取得、国際会計基準導入を容易に実現でき、これにより業務効率化、企業の体質改善を図り、ビジネスチャンスをさらに拡大できるものと実感しています。
  現在は未だ不況の中にあり厳しい経営環境ですが、私は今の時点で、会社の仕組みを21世紀のIT時代に向けた構築を図るということで進めております。将来的には電子カタログ、当社のホームページからメーカー様、NECさん、東芝さん、松下さんなどのホームページに行けるとか、動画を使って過去にあった色々な作業条件(雪、風雨の中での作業状況など)情報を提供し、商社の生き残りをかけております。
  仮想ショッピングも早くやらなくてはと思います。さらに商社として、我々のシステムを、アプリケーションプロバイダ的に売るのではなく、それぞれの切り口を使いませんかという事業展開も考えています。最初からこれだけのものを作るのは大変お金のかかることですから、我々が作り上げたものを上手に活用してくださいとアピールしています。
 今後は新商品、新製品のニーズをお客様、メーカーに提案していくリテール機能業務に変換していく必要があると思っています。つまり、物を売る仲介業から、情報エージェント、情報仲介業へと変化するところに生き残る道を見出し、そのためにもITは欠かせないツールとなっているのです。

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