事例本文(ヤマトヤ)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:43 (株)ヤマトヤ   事例発表日:平成13年1月17日
事業内容:ファッション専門店
売上高:不明 従業員数:不明 資本金:不明 設立:不明
キーワード ファッション専門店、
ダイレクトメール、
購入履歴データ活用、デジカメ
1人のお客様のために

(株)ヤマトヤ URL:http://island3.matsuronet.ne.jp/yamatoya/

(株)ヤマトヤ 代表取締役社長 江頭紘一氏
プロフィール

 昭和38年 青山学院大学 法学部卒業。同年、株式会社三愛に入社MD(マーチャンダイザー)として3年間勤務。
  昭和42年 株式会社ヤマトヤ入社、現在に至る。
  唐津中央商店街会長、唐津観光協会理事、唐津商工会議所常議員なども就任されている。.

~一人一人のお客様の購買履歴を活用したレジシステムで、コミュニケーションによる販売戦略を展開~

 激動の時代、変化の激しい社会において、繊維業界もまた淘汰の波に洗われている。佐賀、唐津の駅至近の場所に創業90年の専門店を経営する江頭氏は、このまま専門店、小売店の形態で存続できるのかと危機感を募らせる。そして、生き残るには顧客の求めるもの、好みを的確に把握することこそ重要と考え、そこにデータ活用を用いている。


■繊維業界を震撼させるSCM
  私はIT、パソコン、インターネットなどはよくわかりませんが、少しでも皆様のご参考になればとお話させていただきます。
  うちの店は創業90年になります。30年ごとに大きな変化が来ています。厳しい時代であり、企業が生き延びていくためには相当の努力が必要ですが、ここ2、3年ははたして乗り切れるのかなと、私はとても不安で道に迷った状態でした。
  私はソウルの国際見本市に招かれ3日前まで韓国にいました。そこで印象的だったのは見本市よりも、400坪くらいの広さに400台くらいのパソコンがあり若い世代の人々が順番待ちしている光景でした。韓国では2人に1人がインターネットを使っています。日本では10人に1人くらいでしょうか。あのパワーがそのまま進んでくるとすれば日本はやられてしまうと思いましたね。
  その韓国でも日本でも、繊維業は中国にやられて非常に厳しい状況で、企業がどんどん潰れています。アメリカでは、小売店サイドが、SCM(サプライチェーンマネジメント)で工程から上がったものを全部集約して物を生産していこうという状態が起こっています。それが顕著に出ているのがSPA(製造小売)です。つまり自分で作ったものは自分で売る、メーカーが小売店を出すというものです。ユニクロなどもそうですね。
  SCMが出てくると中抜き現象がおきて、卸しや商社などがなくなります。このような枠組みの中で、我々のような専門店も小売りだけの形で生き延びていくのはむずかしいと私は危機感を持っています。
  では、専門店や小売りがどのような形で生き延びていくかと考えると、やはりお客様一人一人の好みを把握して対応していかなくてはならないということになります。メーカーもまたお客様が何を欲しているかという情報を持っていないと物造りができません。

■新人類社員にもできるお客様応対のための方法を求めて
  私は今度60歳になりますが、私たちの世代は「キネマ世代」というのだそうです。50歳前後が「団塊の世代」。35歳くらいは、情報は週刊誌やファッション誌から選ぶという「hanako世代」。27、8歳が、団塊の世代の子どもたち、「団塊ジュニア」。20歳前後が「プリクラ世代」と呼ばれています。
  若い世代はどんどんiモードを利用しています。こうした人たちがこれからは日本の文化を創って日本を引っ張って行くのだから、そういう人たちの気持ちを我々は知らないといけないなと思いました。彼ら、彼女らはものをしゃべらなくても書かなくても意志を伝達する手法を持っています。丸文字もそのひとつでしたし、言葉も独特のものがあり、メールでの伝え方も絵が入ったり色々です。
  うちの店にもそういう若い世代の新入社員が入ってくると、まずお客様の顔を覚えられない、会話ができない、相手が何を言いたいのかその気持ちを理解する力が非常に弱まっているのを感じます。そうかといって、このお客様はこういう方ですよといちいちやっていたら大変な作業です。
  そこで2度目の御来店の時にはお客様のお名前を呼んでさしあげてキチンとした接客とサービスをしようと話しあいました。うちの店ではお客様にコーヒーを出したり、お誕生日に花を送ったりというサービスもしていますが、やはりいちばんのコミュニケーションはお客様をお名前でおよびすることが基本だと思います。そのために何か、彼女たちの世代のゲーム感覚の中でできるいい方法はないだろうかと考えました。

■お客様の好みをデータ化できるレジシステムの構築
  実は20年前に、NCRのPOSを導入したことがあります。その時かなり費用を使いましたが2度失敗しました。というのは、データが上がってきてもメーカー側の商品がもうない、ファッションは常に入れ替わっているのでデータを読む努力をしてもどうしようもない、色で管理したこともありますがそれも失敗してしまいました。それからしばらくはパソコン、POSに対するアレルギーがずっと残ってしまいました。このへんが、私が情報化に若干出遅れた原因かなとも思っています。
  今回はまず、季節を先取りした展示会にデジタルカメラを持参していくことにしました。今ですと今年の夏物の新作商品の展示会が行われています。そこでデジカメで商品を撮ってきて1人のお客様のためのDMにして、「お客様にこのような商品を仕入れてきていますがいかがでしょうか。到着するのは5月くらいになります。連休頃にご来店いただけませんか」というアプローチをするのです。1人のお客様のためにDMを出せるソフトを活用しました。
  そして、それをやっていくには、お客様の好みや属性がわからないとむずかしい、全く的のはずれた商品をお勧めしてもいけない、ということで、バーコードで単品管理をして過去にお客様が買われたもの、好みがわかるシステムを求めたのです。
  バックヤードではなくフロントでやりたい、若い新入社員が入ってもすぐ使えるようなソフト、新入社員でも誰でも同じように接客サービスができるシステム、こんなワガママを取り入れてもらって実現したのが現在活用しているレジシステムです。
  まず代金に関する部分はレジで処理して、伝票が入った段階でバーコードプライスカードが出てきます。後は読み込み機で入れていくというやり方です。仕入れの時点でタグの半券を回収し、残りのタグの半券は購入時に回収しお客様個人個人に対しての売上という形でコンピュータにデータを蓄積していきます。そのお客様が何を買われたかというデータはずっと残っていきます。例えばあるお客様が今回はパンツを買われたとします。次回は何を求められるかと考えると上着のほうを勧めて、パンツとセットアップという形で着こなしを提案するという接客の形ができるようになります。
  今は決められないというお客様には、試着したものをデジタルカメラで写真を撮り、印刷して差し上げています。これにより持ち帰ってから娘さんと相談するとか、ご主人に見せてみるから、というようなことでサービスの一環となっています。
  また、ホームページの作成も考えているところです。お店は唐津駅から1分のところにありますので何かございましたらお出かけください。どうもありがとうございました。

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