事例本文(関西カーゴ軽自動車運用協同組合連合)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:49 関西カーゴ軽自動車運送協同組合連合会   事例発表日:平成12年12月14日
事業内容:運送業
売上高:不明 従業員数:47名
(組合員)
資本金:不明 設立:1985年9月
キーワード 運送業、物流子会社の再編成、物流の隙間産業、

カーナビ
運送業界におけるIT戦略化事例

関西カーゴ軽自動車運送協同組合連合会

関西カーゴ軽自動車運送協同組合連合会 代表理事 小川勝生氏
プロフィール
1961年 大谷高校卒業後 電機材料専門商社入社
1981年 軽自動車運送業を開始後、関西を中心に軽自動車運送協同組合を設立
1999年 関西カーゴ軽自動車運送協同組合連合会設立
2000年 中国カーゴ軽自動車運送協同組合設立。現在に至る
~物流はより利便性追求、より柔軟な体制が求められている。だからこそIT活用を~

 軽自動車の赤帽運送サービス業、というと物流の一端を担う定番。しかし、ここにも新しい物流の流れが起こり、大きく変化を遂げている。その現状と未来構想を語っていただいた。


■組織概要
組織名 京都カーゴ軽自動車運送共同組合
住所 京都市下京区中堂寺壬生川町10
TEL:075-344-0881 FAX:075-344-0883
設立 昭和60年9月20日
代表者 理事長 小川 勝生
組合員数 47名(従業員140名 関西250名)
関西カーゴ連合会
参加組合
阪神カーゴ軽自動車運送協同組合滋賀カーゴ軽自動車運送協同組合中国カーゴ、中国カーゴ岡山支部

■軽運送の信用力強化を目指し、組合を発足
  私どもは、インターネットをバリバリやってとか、ITをガンガン使って、という業界ではなく、どちらかというとアナログの業界です。その中で、私どもがやってきたことをお話することがひとつの情報提供になるのかなと思います。
  まず、当社の概要と事業内容をお話します。私は25年前に電気材料の専門商社を脱サラしました。そのきっかけは、電気材料は現場に合わせて届けなければならないので非常に忙しく、注文に対して納期遅れも日常茶飯事でした。ある時、前から頼まれていた品物をメーカーが遅れて大変な問題になった折に、軽運送のパイオニアである赤帽さんがその荷物を持ってきたことです。それで事なきを得たのですが、私が今まで思っていたのとは違う運送というものに気が付きました。その時の会社にずっと勤めていても社長になれるわけでもいないので"運送"というものを勉強して開業したのです。
  当時はお客様に「こういう便利な運送業がありますよ」と言っても「そんな軽自動車で」と全く相手にされずにつらい思いもしました。だんだん軽運送が認知されるようになったものの、私は小川運送という会社をやっていたのですが、受注という面で非常に不安定な部分があり、採算ベースにのせることができない状態が続きました。色々悩んで最終的には徹底的に利便性を提供していこう、必要な時に必要なだけ使ってもらえる軽運送を目指すことになりました。そして、何とか社会的認知をされる形にして信用力の増強に努めなければ営業力に結びつかないと考えて協同組合を作りました。こうして16年前に7人の仲間と共に国の認可を受けるべく、京都カーゴ軽自動車運送協同組合を発足しました。我々には引っ越しや宅配をするだけの力がないために、何か強みとなるサービスを提供しなければならないと考えました。そこで、必要な時に必要なだけ30分以内に伺って商品を運ぶ「緊急配送(スポット)」と、配送業務に限らず、注文、集金などの業務も行う「ビジネス定期」の2つを柱に事業をスタートさせました。

■荷物を3時間以内で東京へ届けられる強み
  始めはビジネス定期が全売上の7割ぐらいを占め、スポットは3割でした。現在では、スポットが9割、ビジネス定期が1割です。全くゼロからのスタートで今では月商5億円にまで成長しました。当初は利便性を徹底的にお客様に提供するというコンセプトに終始しました。その中で「ハンドキャリー」という、飛行機・新幹線等を利用して物を運ぶ方法を関西では私どもが最初に実現しました。これは荷物を預かってから3時間後に東京に届けるもので、これから大手の宅配業者にも勝てる物流の隙間産業の部分です。新幹線に乗るので手で持てる範囲の荷物に限られますが、関東に着いた時は関東の軽運送業者の方とネットを組んで瞬時に配送できる仕組みです。
  また、私どもは協同組合の組織のために国の認可を取得し、信用力を高めました。この信用力が営業力となり、全国屈指のコンビニエンスストアの関西一円の情報を毎日運ばせていただいています。コンビニエンスストアの本部と私どものコンピュータを結んで、出てくる情報を関西にある500店舗に運ぶのです。また、コンピュータメーカーの商品の緊急配送、一部商品の保管・管理を含んだ緊急配送も24時間体制で行っています。
  人材面では、発足当時から営業の芯になる人材を募集していましたがこれという手応えのある人がいません。そこへ入社してきた女性の活用がきっかけで売上が伸びたことから、現在では本部のスタッフは営業も配車も経理もオール女性です。ほとんどがパートですが、それぞれの条件に合った勤務形態にすればかなりいい人材が採用でき、会社としても人件費が安くすみます。

■物流が変わるほどビジネスチャンスが拡大している
  運送業界は完全なアナログ業界で労働集約型といえます。私どもは京都だけでも運送用の軽自動車が180台あり、軽自動車の分野で1番2番といえるのは、大きな情報ネットワークがあるからだと実感しています。去年の11月、あるコンピュータメーカーからコンビニにATMの設置をする話が来ました。ATMは24時間稼働です。私も工場へ見学に行きましたが、お金が出る部分が一番故障しやすいとのことです。データによれば関西なら500店舗で1割の50店舗に故障発生の予測がたつそうです。その分担を京都、神戸、大阪に分け、京都なら10店舗分のATMのストックを私どもが持ち、24時間体制で故障した部分に応じたものを2時間以内に現場に届ける体制を組みました。故障が発生したら我々のところに情報が来ると同時にコンピュータメーカーの技術者にも届き、現場で入れ替え作業をします。このように物流が変われば変わるほど、我々にチャンスが巡ってくると実感しています。
  また、主要得意先であるコンピュータメーカーから、来年度よりペーパーレスの実行を言われています。これに対応しないと取引ができないような状態です。
  通販のメーカーさんからもオファーが来ています。大手企業などからは、アメリカの会社が一部部品を供給しているので、その部品をこちらで預かり、ネット上で指示通りの期日と個数を確実に届けてほしいという話が来ました。これにはびっくりしました。今まででしたら、私どものような零細組織にはこんなお話はこなかったでしょう。そういう意味である種の産業革命に近いものになってきたと思います。便利に安くサービスを提供する体制が整っているところであれば、小企業といえども受注できる事を改めて確信しました。

■より利便性の追求のためネット化を目指したい
  通常の私どもの業務はネットで配車や受注をするのではなく、ファックスや電話のアナログの方法です。しかしいつまでもそれでいいわけではありません。24時間体制年中無休で走るわけですから、車は京都だけではなく6割は府下に出ています。そのうちの半分は関東、東北、九州、中国という広範囲を走っています。納期の問い合わせが非常に多い業態で、携帯電話は全車が持っていますし、カーナビは6割が設置しています。携帯とカーナビの連携により10キロ先の交通情報がわかりますので、渋滞等に対処できますし、道路情報を見ながらお客様に報告して車を進めています。こうした部分をもっとスムーズにネット上で展開できないかと考えているところです。受発注はもちろん、お客様がネット上でカーナビを見ればいちいち問い合わせをしなくても今どこを走っているか把握できるようになれば、顧客満足度の向上につながると思います。
  スポットという仕事柄、京都で400社くらいのお客様と取引していますが、その顧客情報のほとんどを本社が持っています。例えばA社からの依頼でB社から荷物を引き取ってきてくれとか、A社からB社とC社へ行ってくれという受注があると、各社の地図を組合員にファックスで送っているのですが、これも画面上で出せればもっと便利になると思います。費用対効果の関係でなかなか実現がむずかしいのですが、利便性を追求すればするほどお客様に満足を提供しなければいけないので、ネットを最大限に活用する必要があるでしょう。私どもの業種は単純作業なだけに合理化がむずかしい側面ももっていて、だからこそ、カーナビを含めてネット上で少ない配車で最大の効果を発揮することを考えていかなくてはなりません。

■さらに物流業者の真価が問われる時
  私の夢は、全車にカーナビを含めたネット体制を確立し、そこに指示や本部の持っている情報を流せるような体制ができることです。最終的には、京都を出発して全国に拠点を設けたいと考えています。北海道から九州まで主要都市においてはカーゴを作りたいと考えています。
  ここ3、4年ほどで商習慣や物流がかなり大きく変わると思っています。今までは大企業の商品は発送部や業務部がやっていましたが、その部分が分社化しロジスティックスということで、大企業では物流子会社を作りました。その子会社は車を1台も持っていません。我々がそこの下請けとなりますが、今までの料金から10~20%は値引きしろという傾向が強くなってきています。この子会社がここへ来てのたうち回っている状況です。親会社がカンバン方式も含めて日本国内で物を調達していたところから、世界を窓口にするようになったため、無条件に納品させてもらえる状況ではなくなったためです。存続の危機、物流子会社の再編成が起こっています。
  の高速道路と通信技術の発達で考えますと、何も倉庫を建てて管理する必要がない時代になりました。今までの物流とはもう一段変わってくると思います。私ども物流に関わっている者にとってはここらへんがこわいところです。
  アメリカと日本の違いは、通販がどこまで伸びるかというところにもあります。我々はコンビニの情報の配送をしていますが、コンビニが利便性の核になって商品の受け渡しを担い、コンビニの近くの配送は増えていくのではないかと思います。「スポット」「ハンドキャリー」「ビジネス定期」の3つの柱で業務を行ってきた我々がコンビニと組ませてもらえれば、地域配送業務がこれからも増えていくと期待しています。

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