事例本文(佐倉きのこ園)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:53 (株)佐倉きのこ園   事例発表日:平成13年9月18日
事業内容:きのこ製造、販売
売上高:不明 従業員数:16名 資本金:300万円 設立:1996年5月
キーワード 産地直送販売、農業、
顧客データベース、ダイレクトメール、リピート客、受注管理、
e-コマース、クリック・アンド・モルタル、ショッピングモール、一斉同報FAX
「電子商取引の紹介と取り組み方の事例」

(有)佐倉きのこ園 URL:http://www.kinokoen.jp/


(有)佐倉きのこ園 代表取締役社長 齋藤勇人氏
プロフィール

1986年 横浜市立大学商学部経営学科卒業
1986年 (株)リクルート入社
1990年 (株)ヨークプランニング入社
1994年 佐倉きのこ園創業

~クリック・アンド・モルタルの強みを活かす~

 佐倉きのこ園の園長さん齋藤勇人氏は平成6年に脱サラしきのこ園を創業。完全無農薬の椎茸栽培に取り組み、現在生椎茸年間45tの生産量を誇るまでになった。通販への販路拡大、観光農園の展開、インターネットモールへの出店により、複数チャネルの相乗効果を活かした、いわばクリック・アンド・モルタルの成功モデルである。園長さんにきのこ園創業からの事業展開と、その中で既存顧客中心のターゲット・マーケティングや新規顧客開拓に、低コストの販促ツールや電子小売店という道具(IT)を何故導入し、どのように活用してきたのかを語っていただいた。

会社概要
企業名 (有)佐倉きのこ園 URL http://www.kinokoen.jp/
代表者 齋藤 勇人 創業 平成6年9月(法人設立平成8年5月)
資本金 300万円 従業員数 16名
生産品目 生椎茸、干し椎茸、米、野菜、有機肥料
生産量 生椎茸年間約45t

生産量による市場価格の変動に疑問、等級別価格の直売に
  平成6年9月からシイタケの栽培をはじめまして、中国産の入りたての頃でありましたので市場では高く売れる時期でありました。いざ始めてみると、同じコストをかけて作っても、毎日値段が変わって高い時と安い時があって、何ともむなしいものを感じる様になりました。
  そこで、市場出荷を止めて、直接自分で値段を付けて売る直売というものをやりました。直売するに当たっては、先ず学校給食とかスーパーに営業をかけて獲得し、今では地元の子供たちは私のところのシイタケを食べて育つと言うところまでになりました。
  私が物を売るという中で考えたのは、これだけのコストが掛かっている物はこれだけの値段で売るべきだという考えが基本にありまして、等級別価格販売という事を始めました。それまではシイタケが多く採れると安く、少ないと高くという市場で変動する値段では、これだけ菌を仕込んで人件費をかけてみても売上が不安定という、今、日本中の農家が抱えている悩みと同じだと思っています。
  そのようなことから、シイタケの一番良いのはAAだから3,000円と自分で値段を付け、一番悪いのは規格外だから800円と約4倍の値段差をつけました。この値段は、学校給食、スーパー、レストラン、ホテル等どこへ行っても同じような営業をしました。
  そうすることにより、特に学校給食の栄養士さんは喜んでくれました。その理由は、一食何百円と決めて献立を作る際、シイタケの値段が決まる事で一部の材料費が確定するからとのことでありました。以後、現在に至ってもこの等級別価格販売を継続しております。
  この6年間、1円の値上げもしていないし、また逆に値下げもしていません。このような状況で値上げができないということは辛いが何とかやっております。

パッケージシステム導入で事務作業を効率化、リピーターの増加にも役立つ
  当社は、コンピューターと言われるものを最初に導入したのは平成7年の6月です。ヤマトシステムによりクール宅急便で全国のお客さんにシイタケを送ることから始め、特に業務用でレストランが多く使っています。
  宅急便の送り状が1年近く経つと700~800通程たまり、その同じ方がまた送ってくれと注文がきたときに、送り状を見ながらまた伝票に書くことが非常に大変で、字が下手であるからなおさらの事でありました。お客様から電話で注文を受けて、自分が一生懸命書いて送り状の控えをお客さんに送ると、郵便振替の振込書記載欄に「もう少し上手な字で書いてくれ」というお客さんもあったくらいです。
  導入したシステムは、ヤマトシステム開発からのお奨めの「産直くん」です。来た注文や送り先をドンドン入れて行き、次に同じ人から注文の電話が来たら、電話番号を入れていくだけで、その前のデータ内容が全部判り、送り状も簡単にできると言う画期的なシステムだと思いました。現在も使用しており、16,000の顧客データを集めております。現在、「産直くん」を受注管理、宅急便の送り出し、請求、最後のダイレクトメールと利用しています。
  物販で販売促進のためのダイレクトメールを手書きで出すことは非常に大変で、100名位は「メールは心だ」と言って宛名は手書きで書けと郵便局のDMセミナーで講師の方が言っていたが、私のように字が下手でものぐさな者は、3,000、5,000だと書く気がしない。書く気がしないと出す気がしないとなり、結局データが死んでしまいます。それで、「産直くん」を活用して宛名ラベルを出して、はがきはコピーし、広告郵便等を利用すると45円掛からない安いコストでDMが出せることになりました。DMは年に4回ほど出します。DMを持参した方は卵または野菜プレゼントと書くと、持参するお客さんも多くなり、リピート客を増やすためにこの「産直くん」は非常に役立っております。
  このように通信販売をしながら、お客さんが来たときにシイタケ狩をしたいとか、どんなところで作っているとかの興味を満たすためにハウスを見学したいとか、更には採取したシイタケを焼いて食べたいとの要望を満たすために、バーベキューガーデンを始めるなどして観光農園を展開して参りました。

電子市場「楽天市場」に出店、リアル店舗との相乗効果で新規顧客を獲得
  やはりお客さんを集めるには広告が必要で、DMによりリピーターは有りますが、企業としては新規のお客さんを開拓しないと死んでしまいますから、広告料として直売の1割ほどを投入しています。
  その中で、効率良くお客さんを集めるには何が良いかと試行錯誤を重ね、ケーブルテレビや新聞に広告を出したり、有効な手段を探していたときに異業種交流会の友人からe-コマースで売れるよアドバイスを頂きネット販売を始めることとなりました。前職の上司にe-コマースで物を売りたいからホームページを作ってくれとお願いしたら、物は売れるところに出店しなければダメだと言われ、楽天市場を紹介されました。昨年3月に出店し、シイタケを出したとたんに、全国から注文が殺到するかと思いきや、まったく注文がありません。毎月5万円の出店料で始めましたが、1年間実施してみて、売れても月5万円ほどであり細々と継続していました。
  普通ならばそれで止めてしまうのですが、きのこ園は観光農園でありますので物を売るのみならずホームページの中にシイタケ狩りやバーベキューガーデン等楽しい状況を写し、リアル店舗が判るとお客さんが来てくれるようになりました。また、ホームページの仕掛けとして、ホームページの写しを持参すると5%割引をするなどして週末にはお客さんの増加となり、売れないけど見に来てくれる客が多くなりました。また、楽天市場を見たと言って来てくれた焼肉屋さんの見学では、「こんなに美味しいシイタケは初めて食べた」とプロの方にも評判を博しました。
  一度、楽天市場を利用して注文が来ると、その後は電話やメールによる注文で来ることとなり、楽天市場の売り上げは伸びないけれど、トータル的には楽天の出店料は十分にペイしており、止めずに続けてきました。
  ある時、楽天の担当者からプレゼントコーナーをやってみたらとのお勧めがあって、プレゼントはただの物貰いだろうとバカにしていましたが、いざ実施してみたら多くの方が来ていただき、余分な買い物までするなどの予想外の反響を得たところであります。

既存顧客はDM・FAX同報サービスできめ細かくフォロー
  お客様の関心を得るためにいろいろな方法を講じてきましたが、封書、はがきによるほか、一斉同報FAX(リクルート社FNX)による安さ・簡便さなどもあり、情報の価値は、紙で送るのが一番であると思っております。
  また、ネットのお客さんの年齢層は20代30代と若く、本当に通販を利用して年代を実感することができました。

  商売を継続していく上で、インターネットは無くてはならない状況で、今後もITを利用した経営をし、お客さんに喜ばれる美味しいシイタケを作っていきますので是非ご利用ください。
インターネット・FNXでの集客フロー図

このページのトップへ