事例本文(ヤマナカゴーキン)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:54 (株)ヤマナカゴーキン   事例発表日:平成13年9月18日
事業内容:金型製造
売上高:不明 従業員数:230名 資本金:8000万円 設立:1966年7月
キーワード プレス周辺設備、金型製造業、
KKDからの脱却、受注生産、少量多品種生産、製造リードタイムの短縮、不良率低減、
CAD、CAE
「製造業におけるIT取り組み事例」

(株)ヤマナカゴーキン URL:http://www.yamanaka-eng.co.jp/


(株)ヤマナカゴーキン 常務取締役 山中雅仁氏
プロフィール

1994年 米国オハイオ州立大学機械工学科修士課程修了
同年  (株)ヤマナカゴーキン入社
1997年 常務取締役

~技術で生きる専門メーカー、ITは顧客要望の実現ツール~

 (株)ヤマナカゴーキンは金型技術を基盤とした技術開発型企業である。金型生産には少量多品種・注文生産という特徴があり、高精度な製品を短納期・低コストで生産できる技術と体制が企業の成長を支えてきたと言える。この背景でコンピュータシステムをどう活用し、どんな効果があったのか等、製造業におけるIT活用事例として山中常務にお話しいただいた。


会社概要
企業名 (株)ヤマナカゴーキン 創業 昭和36年2月(設立昭和41年7月)
資本金 8,000万円 代表者 山中 政夫
従業員数 230名(平成13年現在)
取扱品目 精密冷間鍛造金型、温・熱間鍛造金型、粉末燃結金型
複合成型金型鍛造解析シミュレーションソフト、プレス周辺設備
取引産業 自動車、ベアリング、鍛造、伸銅、弱電、建築、鍛圧機械メーカー

はじめに
  当社の本社は、関西の地場産業の一つで金型メーカーです。鉄を扱っていることから硬い会社で、自分の考えていることも硬いなと思っております。
  当社にかかわらず、金型メーカーを取り巻く環境が厳しい中にあって、我々にしてもいろいろな取り組みをしてきました。この取り組みが当を得ているか、今日の西岡先生の話を聞かせていただいて、ものすごく取り組み自体が甘いなと思い、本当に反省しています。
  製造業のITの取り組みと言うことで、皆様方にマッチングしているかどうか分かりませんが、製造業としてのIT関係の話をさせていただきます。

基幹業務系システム導入でリードタイム大幅短縮
  先ず、基幹業務系として、営業から受注、発注までの管理等の紹介をいたします。メインは自動車関係が8割以上で、生産品目は冷間用の金型製作で、常温のまま素材から作る作業であります。鉄に熱を加えて加工する熱間鍛造金型加工より規模が小さいと言えます。国内に3工場で、主力は佐倉で社員は100名程です。また、大型プレス機を所有し、お客様の要望に応じて試作をするテストプレスなども行っています。
  数年前から、海外からの注文も増えてきましたが、これもITの効力かなと思っています。それは、海外からインターネットでホームページを見たよと問い合わせが有り、最近は、欧米、中国、韓国からの試し打ちも行っており、ITを入れた効果というものがございます。
  金型生産の特徴と言うものは、量産ではなく、お客様から図面をいただいてその図面どおり一品一品作り込んでいくこととなりますが、客先の生産工場で設計変更がありますと、一番下流にある当社には、「明日、あさってまでに設計変更の金型を作って下さい」との注文も多くあります。
  基幹系のコンピュータの歩みですが、96年に本格的に導入を始めました。それから順次ホームページを立ち上げ、メールシステムを稼働して、2001年からは携帯のPHSを各社員が持ち、社内電話という形で大阪、佐倉、営業所間で全て内線の感覚で電話ができるようシステムを構築しました。一応リアルタイムでできるようになっております。
  一番の目的は、リードタイムの短縮であり7~8割の削減ができるとともに、バーコードにより管理することにより、営業においては製品が今どこの工程にあり、あと何日ぐらいかかるかとの確認が可能となり、非常に良い結果を得ることができました。
  しかし、デメリットも有りまして、西岡先生に質問しましたようにメールの増加の対応に頭を痛めておりますが、ルールあるいはやり方次第で改善できると思っております。

技術系システムはCAEの導入で短納期、高品質、低コストを実現
  次に技術系の関係でございます。
  先ほど回覧しました製品ですが、実はこの製品を立ち上げるまでにどのくらいかかったかと思いますか? 2年半かかりました。国内の有名な自動車会社の車種に利用されています。これが2年半かかったのですかと言われますが、試行錯誤も多く製品の特徴もいろいろとあり、工期や開発の期間が長く、84年からCADとかに取り組み始めております。
  部品を作るに当たっては、コンサルテーションから始め、工程設計、どのようなレイアウト、手順、金型設計、金型製作、プレス、試作を行なう事となり、その中でCAE(Computer Aided Engineering)の技術を取り入れてきました。
  ここ数年お客様からこれを作りたいとの要望が10倍近く増えましたが、製作スタッフが10倍増えたかと言うと、そうではありません。従前のスタッフで対応していることから非常に負荷が変動し、何とかこれを打破しなければなりませんでした。何かツールがないものかと考え、CAEを導入、設計への進出もしていこうとの動機がありました。
  ソフトの導入に当たって、世界標準と言われるアメリカ製を検討しましたが、6千万円の投資額となり中小企業では無理と判断し、自社で作ることにしました。いざ作って見ると、いろいろとメンテナンスも必要となり、人も取られ、コストもかかり、やっぱり専門会社のソフトを購入することとなりました。
  従前のこの業界の金型設計は、経験と感を頼りにエイヤーと言う感じで作っており、ダメならもう一度作ってみようと言うような繰り返しが多かったと思います。しかし、専門家のソフトでは事前に不具合が予測でき、お客様に余分な金型を作る必要もなくなり、寿命の良いものを早く作ることができるようになりました。

今後のIT活用-付加価値創造のための活動時間を生み出すことに
  当社は、ITはあくまでも道具であり、不良率の減少や原価の低減を達成するための目標を掲げると同時に設計や現場の作業をデジタル化し、データベース化して行こうと考えています。
  日本のある調査によると、働いている人が付加価値を創造している時間あるいは、その人しかできない仕事はどの位あるのかと一日スタディーしたら、それは7%でしかなかったとのことであります。ヨーロッパの同業者の友人は年間30日間も休むのに凄く業績を上げています。我が社は夜遅くまで働いていることから、その友人から生産性が悪いのではと言われる始末、この差は何か?
  今後は、付加価値創造の時間をどれだけ作って行くかが重要であります。
  私は、ITの一つの考え方ですが、簡単な仕事の部分はシステムにやらせて、本当に人間しかできない部分を人間が付加価値を創造して専念できるような状況を作って行きたいと思っています。

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