事例本文(ダン)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:52 (株)ダン   事例発表日:平成13年8月6日
事業内容:靴下の企画・製造・卸・小売、フランチャイズ・チェーン
売上高:84億円
2000年度
従業員数:88名 資本金:2億272万円 設立:1977年3月
キーワード アパレル、フランチャイズ制、靴下専門店、繊維業界、
顧客中心主義経営、在庫削減、人材開発、売れ筋把握、
POSシステム、SCM
「ダン・ネットワークシステムとマーケティング戦略」

(株)ダン URL:http://www.dansox.co.jp

(株)ダン 常務取締役 丸川博雄氏
プロフィール

昭和18年生まれ。大和証券を経て1967年(株)ダスキンに入社。経営企画室長として、アメリカ、ヨーロッパなどと提携する事業を日本に導入する際のコンピュータ・システムの構築などを手がける。その後関連会社の代表取締役に。1988年(株)ダンに入社、1996年から常務取締役として現在に至る。

~ネットワークが支える顧客中心主義経営~

靴下の卸・製造業の(株)ダンは、全国に「靴下専門店」というユニークなフランチャイズチェーンを展開し小売でも急成長を遂げている。これを支えているのが川上の工場から川下の店舗まで全てをネットワーク化したサプライ・チェーン・マネージメントシステム(SCM)である。豊富な品揃えで若い女性の変化しやすいニーズに的確に応え、しかもどの段階においても無駄な在庫を持たず、売れ筋商品が最適なタイミングでお店に届くという「店の隣に工場があるような」体制をゼロから創り上げた丸川常務にここに至るまでの業務革新への発想からシステム化内容までお話しいただいた。


会社概要
企業名 株式会社ダン 創業 1968年(設立1977年)
代表者 越智 直正 資本金 2億272万円
社員数 88名 売上高 本部売上 84億円(平成13年2月期)
事業内容 靴下の企画・製造・卸・小売、フランチャイズ・チェーン靴下屋の展開
店舗数 214店(直営68、FC146)

株式会社ダンの、ビジネスチャンスを逃さず、利益の阻害要因となる在庫を無くすという考えで構築されたPOSシステムについてのビデオ紹介の後、講演をいただいた。

小売りに業界がなかった靴下業界、情報化に苦労
  私は知人の紹介で14年前に株式会社ダンに入社いたしました。当時の株式会社ダンは、マーケティングカは非常に素晴らしいものを持っているが、システムは何もございませんでした。私は、ダスキンやミスタードーナツ等14の企業のシステム構築や予算化等に携わってきましたので、殆ど、どんな事業でもシステム化、フランチャイズ化はできる自身を持っていましたが、お話を伺っているうちに、この業界の難しさを知り、お断りをしました。しかし、社長より「丸川さん、何もないからやりやすいでしょう。中途半端にあったらやりにくいと思う。私も一緒になって徹底的にやるから、一緒にやりましょう」とお話をいただき、入社いたしました。
  最初に、社長にどんなシステムがいいですかといろいろお話しを伺いましたら、「店の横に工場があるようなシステムを作ってほしい」。これが一番目です。二つ目に、「店頭と同じ呼吸をするメーカーさんという形でつないでほしい」。これは非常に抽象的なんですが、おっしゃっていることは絶対問違っていないという想いがありました。
  当時ダンは卸屋で、全国に小売店がありましたが、営業マンが各店に訪ねていかないと、靴下売り場が減り、マフラーや手袋や帽子が売られたりする。こういう状況では、経営の安定化は絶対に図れない。まして靴下というのは、小売りに業界がないのです。これが情報化で一番苦労しました。アパレルでもメーカーさんには靴下組合という業界がある。卸もレッグニット組合という業界がある。小売りになると最近でこそ電話帳に靴下屋ってありますが、当時はまったくありません。それと同じなのが、ネクタイで、小売りに業界がない。それから、手袋もタオルもない。これ、全部今苦しんでおられる。なぜ苦しむのかというと、情報を集めることができないからです。そうしたら出てくる答えは、自分たちで集める方法しかない。これが出発の原点です。

小売への進出、フランチャイズ制の導入-情報化は人海戦術版POSで
  そこで、社長自らが自分で作った靴下を自分でコントロールできる店が欲しいということで、神戸三宮の三愛さんに約10坪の売り場を出しました。これが私どもの出発です。だから、卸としては延々と続いてきましたが、その10坪の小売りコーナーに、初めて社長が納得できる靴下を並べたわけです。
  それから、フランチャイズ・チェーン1号店として久留米に店ができて、私が入社した頃にはそういう店が30店舗ありました。どう運営がされていたのかというと、靴下のゴム口の所に管理カードというのを付けて、それに自分で5桁の番号とカラー番号を2桁付けていたんです。お店でお客さんが買ってくれると、それをはずして1週問分ためて本部に送る。本部にはアルバイトがたくさんいて、模造紙にそれを種類ごとに貼っているんです。よく考えると、POSの人介戦術版をやっていたわけです。
  全国で30店舗分の情報をつかんでいますから、メーカーさんもその情報に基づいて物を作るということで、情報化をするという土台ができた会社だったのです。これでPOSを入れたらその情報は簡単に引けるのですが、繊維業界においては、取引に関する契約が整理できていない点もありまして、フランチャイズを提案しました。これは結果論になりますが、フランチャイズというのは中問である卸と小売りを契約で結んでいます。
  メーカーに対してはどうしたかというと、実は組合を作り組合法という形でこれも約束事の中に入れる、当時そういうことで進めました。

当初は役に立たなかったPOS情報
  そして、POSの方についてなんですが、最初は15店舗に導入し、本部に情報を集めて、情報に基づいて経営を行う。その15店舗の情報で、300店舗のメンバーズショップのお店に何か役に立つのかというと、基本的に役には立ちません。情報というのは最低何店舗分なければ役に立たないという、これ原理原則です。本当は100店舗分ほしかったのですが、50店舗分作ってから情報として活きてくることができました。
  店側からいえば、情報を本部が利用しているだけで、お店にとって何かメリットがあるのかと言われたら、なかったんですね。しかし、途中でメリットを付加することができます。現在はPOSで本部に発注ができるという所まで持ち込んでいますので、お互いにメリットがある形になった。
  本部に集めた情報をメーカーさんに100%持ち込んで、商品を作ってくださいとお願いをしましたが、いろんな理由があって実際にメーカーさんは情報を見ません。見ているのですが、役に立たないから見ない。なぜかというと、店頭で集めた情報を全部本部にオンラインでつないで、その情報を全部メーカーに渡します。平均的なメーカーさんで、大体50品番扱っています。これをカラー展開していますので、10色展開すると500足になります。500足ということは、コンピュータ画面に500行数字が出てきます。昨日どれだけ売れたのかというのが、5桁の色で昨日29足としますと、29行ダーッと続きます。これが一体何を意味しているのかメーカーさんでは分からない。
  どこに一番問題があったかというと、そのメーカーさんの商品が果たして260店舗全部で展開しているのか、10店舗でしか展開されてないのか、150店舗で展開されているのかが大きな問題なのです。
  二つ目に、売れ出しても、お店に在庫がある靴下とない靴下とで、また違ってくるわけです。そして、本部に在庫がたくさんあったらどうなるのか。お客さんが昨日買ったという情報だけで慌てて物を作ったら大変な目に遭うということが起きたわけです。そうしたら、メーカーさんはどうしたらいいのか、毎日毎日の細かい動きを見てもさっぱり分からない。分からなければ、1週間分ためて見たらどうか、1週問分ためるのだったら手作業でやっていたときと一緒だ。ということで、まったく役に立たないということが分かりました。

メーカーへの発注中止、メーカーは物流センターの在庫の補充で過剰生産を抑制
  現在はメーカーさんに、これだけの靴下を作ってくださいという注文をやめました。注文をやめたら、メーカーさんは何に基づいて商品を作ったらいいのかというのが、先ほどビデオで見ていただいた、物流センターのあそこに棚があります。お店から注文が来たら、棚から商品が減ります。減った分を補充してください。それがメーカーさんの売上ですよ。ということにしたのです。そうしたら、メーカーさんが見に来ないといけない。そこでこの物流センターは、メーカーさん8社全て車で10分で来られる範囲内である広陵町のど真ん中に作りました。ですから、毎日見に来られる。そして、毎日のデータと両方見てやっと分かりだしたというのが今のPOSです。

内見会、展示会、数入れの中止で不良在庫削減
  アパレル業界では、春夏秋冬の前に現在9割までが内見会、展示会というのをやっています。オーナーに来ていただいて、数入れというのをしていただきます。これが注文です。その数入れに基づいてシーズン当初に、お店に商品を送り込みますが、これも止めました。何故かというと、フランチャイズというのはマクドナルド、ミスタードーナツ等々にありますように、成功を売るというのがコンセプトになっています。こういう店を作って、こういう看板を掲げて、作り方はこうで等本部が全部教え、マニュアルで全部徹底されています。その基本は素人でもできるというわけです。脱サラでもできる、これがフランチャイズの非常に大切なところです。
  靴下屋も店頭、店舗はきちんと本部が作ります。それと商品も全部本部から送り込みます。売り方も全部教えます。そうしたら素人でもできますということでやりながら、数入れをオーナーにさせるというのは矛盾しているのではないかと。なぜかというと、3ヵ月目のオーナーさんも15年目のオーナーさんもいる。この靴下が売れる、売れないという判断はなかなか難しい。それから、大体1シーズン700品番の9000アイテムが動き、立ち上がりで350品番の4000アイテム位が店頭に出ます。どの靴下の隣にどの靴下を置いてとか、どのグループをまとめてとか、実際に店頭の棚に商品を並べてみます。そして、40年からやっている社長以下デザイナー、営業マンが見え方というのを全部工夫して、このように置いたらいいという形で店頭に送り込むということを現在はやっています。だから、お店からの注文は受け付けないという形で立ち上がるようにしています。
  内見会では、仮受があります。例えば400品番の6000アイテムを並べるとすると、必ず一番注文の多いものから、一番注文のないものまで6000番の順番がつきます。そうするとメーカーさんは、オーナーが一回も店頭で売れてないのに注文していったのを眺めて、店頭で一つも売れていないのに、注文がきたときにすぐ売れるように、この分を仮生産する。仮受の上に仮生産が乗る。そうしたら何が起きるのか。店頭でオープンし、蓋開けた時に、もうすでに死に筋が発生している。その死に筋自体がとんでもない数量であるということが分かりましたので、この内見会等をやめてから非常に在庫を少なくすることができました。

店舗経営者・スタッフへの研修を義務づけ-作り手の想いを理解し販売に活かす
  靴下屋というのは専門店。専門店の場合、すべて情報は掴んでいますが、一番専門店で大切なのは、結局、店自体が専門店としてふさわしくなくてはならない。それは本部が徹底してやっています。その次に商品。この商品も専門店としてふさわしくなければならない。そして、もう一つ大事な事は人です。専門店を名乗って専門の商品を置いておきながら、こういう商品がありませんかと聞くと、まともに応えられる人が殆どいない。これが専門店が苦しくなっていった理由だろうといつも思っています。私どもダンに関しては、フランチャイズですから、店がオープンする前に本部に研修に一週間来ていただきます。この一週間でほぼこの位のマニュアルを全部覚えていただきます。一番大切なのは、朝一番から女の子に工場に入ってもらい、自分で糸を立てて一足の靴下を作ってもらう。これがだいたい夕方までかかります。その出来上がった靴下を見て、社長が「自分で作った靴下をはいてごらんなさい」と言うのですが、今まで履いた人は一人もいません。これはもう宝物にしています。
  実は私どものお店は、全国でフランチャイズ146店舗、直営店68店舗、一般店等々含めて約300店舗あるんですが、フランチャイズ店、直営店の店長で靴下を片手で触ってる人間がいたら本部に教えてください。ということをはっきりと公言しています。なぜ公言できるのかというと、本当にこれだけ人の手をかけて、これだけの想いで出来上がった商品を片手でぞんざいに扱わないように徹底した教育をしています。

お客様第一主義への意識改革-本部もメーカーも全てお客様のための組織
  私どもの経営理念は「お客様第一主義」。どこの会社にもあると思うのですが、その考え方を改めました。どう改めたかというと、ここに糸商さんがある、ここに染色業者さんがある、そして染め屋さんのお得意さんは糸屋さんです。糸屋さんから染めを頼まれなかったら仕事になりません。糸屋さんのお客はメーカーなのです。メーカーのお客は本部です。本部のお客はお店なのですが、お店のお客様が、どう考えてもそれはおかしい。本当は店頭で一足の靴下を買ってくださるお客様が唯一のお客様であって、ここはそのために存在している組織なんだ。だからこの一足の靴下をお買いあげいただくお客様が、本部から見ても、メーカーから見ても、糸商から見てもお客様なんだ。というふうに社内の教育体制から物の考え方から全部変えました。

本部の売り手都合を廃し、店舗から一足単位の発注を可能に
  それから、レジメの中にシーズンということを書いてありますが、私どものお客様の6割から7割が女子高校生です。女子高校生がどういう特徴を持っているかといいますと、1ヵ月に一回小遣いもらいますから、月に一回来店して店頭を見ます。それで前の月に来たときと同じ店頭だったらダサい店なんです。だから、フェイスを変えなきゃならない。バレンタインデー、ホワイトデー、卒業式、入学式、ゴールデンウィーク、このゴールデンウィークにものすごく売れる。文化祭、運動会、クリスマス。それに全部対応しなきゃならない。その時に、お店にとっても、本部にとっても、メーカーさんにとっても、利益を最大に圧迫するのが在庫です。アパレル業界は最後在庫で泣くのです。シーズンの末にドカーンと返品が戻ってきて、利益がどこかに吹き飛んでしまう。これ今の日本のアパレルの9割がやっています。
  在庫を持たないようにするには何が一番いいのか、POSを置いてオンラインでつないでというのですが、もっと原理原則を守らないといけない。これは何かと言いますと、成績を上げるために売り手理論で店に接してはならない。こういう形にしたのです。立ち上がりは店がきちっと構成できるように本部から送り込みますが、それ以後はお店からの注文しか本部は売らない。これはどういうことかと言うと、営業マンが一足たりともお店に押し売りをしてはならない。ものすごく厳しい規則なんです。押し売りは出来ない、でもノルマはある。お店からの注文も一足単位にした。この一足単位というのはアパレルで本当に少ないのです。せいぜい上代で私どもでも800円前後です。800円前後の下代ゆうたら、300円から400円になるわけです。その下代を一足で注文されたどうなるのか。だから大抵の靴下業界は1デカ(10足)単位です。手袋とかでいいますとダースです。ですから売り手側からすれば、一足の注文は嫌なんです。ダースとかデカで売ったほうが売りやすい。しかし、それをしないで一足から注文できるように切り替えました。

店舗でなければ収集できないマーケティング情報-企画の修正に活用
  もう一つ、絶対に本部のコンピュータからは店頭が見えません。だから、店頭でこの靴下が3足売れた、この靴下が5足売れた、どんなお客様がどういう理由で買いにきてくれたか、本部では見えない。お店の店長しかわからない。この靴下はあるクラブ活動で今回買い切りで6足買いました。という形で買っていってくれたとします。次に、もう6足買ってくれるのかというと買ってくれません。こういう状況が全部店頭で読めます。本当に売り場はお店でしか分からない。だからお客様の声、それはお店に聞けとよく言われるのですが、店頭でお客様の声を聞くというのは非常にしんどいです。なぜかというと、アンケートを取っても、アンケートはまともに書いてくれません。それから調査がありますが、本当のことを言ってくれるかどうか分かりません。だけど、私ども靴下屋ではこういうことがあるのです。女子高校生3人位で買いにきます。この靴下どこがええ、悪いとか色が濃いとか、デザインがあーやこーや、ようこれだけゆうなというくらい喋っている。それが本当の声です。自然に聞こえてくるのがいいんですね。
  じゃ、どうするのか。実は私どもの店長さん、アルバイトさん、同じ位の年代です。制服を着ていません。もう一つ理由があります。お客様は商品を触ります。触った商品を元通りきれいに戻してくれません。きれいに並べているだけに、触られると、ものすごく不細工な店になる。それをそのままほっといたら、見るに耐えかねる。これをどう解決するのか。ダンではそれを分からないように店長さん、アルバイトさんが直しながら、お客様の声を収集しています。

お客様一人ひとりのニーズに応えるための新たな挑戦-ここでもITを活用
  これからは、お客様のことを考えて豊富な種類の商品を提供し、しっかりと売っていく仕組みを作らないとだめだということで東京の吉祥寺と静岡の呉服町で、腰から下を触らずに測定できるシステムを導入しました。あなたはSのJJJですね、あなたはLLのJですと出てくる。それを1週間待ってください。そうしたら本部から取り寄せてお売りしますと。店頭にはMとLとJJ位や一番売れ筋を置いて、全てを置かずに済むシステムです。
  個別対応というのも重要で、売り手理論と本当にお客様が要望されていることは全く違うということがあります。実は今回、経済産業局の3月締めきりの経営支援法で私どもは認可を受けました。何をしたのかといいますと、デジタルカメラで足下をパソコンに取り込みます。そうしたらその日はいている靴と靴下が映ります。どんな靴下がいいですかと聞いて、トラッドと言われたらトラッドの模様になる。花柄がいいといったら花柄にばっとなるんです。色もどんどん入れ替えていけるのです。そこに刺繍の要望があれば、刺繍がぱっと入るのです。今日、私は黒い靴をはいてきたけど、白い靴を希望すると、白に変えるとかピンクに変えられるということで、その情報をすべてオンラインで広陵町につないで、1週間後にお客さんに対応できるかどうか、ということの経営革新をやりました。これには行列ができました。それだけ関心があるということですので、どうも売る側が決めこむのではなく、お客様が望んでおられることを達成してゆくことが重要と思いました。

在庫ゼロで販売チャンスを逃さない仕組みを構築
  それから、もう一つどうしても触れておきたいことがあります。全国の靴下屋の統計をとりますと、月曜から金曜日まででだいたい30%から40%の売りです。1週間に対して、土・日の2日間で60%から70%売るのです。ということは店の在庫を同時に一番しっかりとしておかないとならないのが金曜日です。だから月末在庫がどうなるか、月初め在庫がどうなるかもありますが、小売りをやっている限り在庫で一番きっちりやらなきゃいけないのが金曜日、在庫ががたがたになるのが日曜日の閉店時です。日曜日の閉店後がたがたになるということは、元に戻すためにお店は日曜日の閉店後一番に発注してきます。だから月曜日に注文がたまる。これは仕方ないことです。チェーン展開していますからね。そうしたら、この日曜日閉店後に注文をしてくるのですが、月曜日の9時から本部は発送しないといけない。ピッカーさんがピッキングをして発送するのですが、実はこの日だけは6時に広陵町のあの建物はオープンしているんです。そしてメーカーさんに商品を納入できるようにしています。この7月8月は別なんですが、10月に入りますと12月31日まで、土日祭日、メーカーさんは一日も休みません。平均稼働時問が22時間です。日曜日の夜の12時までにオンラインで商品を棚に入れることが出来る。
  なぜそこまでやるのかというと、お店にとっての命は、頼んだ物がどれだけ来るかが知りたいのです。そしてファッション品ですから、100%来るということはできません。なぜなら一足づつ頼んで在庫ゼロで走っていますから。
  このお店からきた注文に対して何%送ることが出来るのか、この仕組みを作るまでは30%から40%でした。納入する前とか、調達する前になりますと、100足注文来ても30足から40足しか店に送れなかった。これが今どの辺まできているかというと、80%くらいまできている。お店に送ることができない商品を、きちっとこの時問帯に把握をして全店にバックして流す。そうすることで、お店はその商品が来ないんだったら代替品を頼みたい。ここまでの仕組みを組んでおります。

業界商慣習を改革、フランチャイズ店との取引代金は自動引き落としに
  もう一つ画期的なのは、このシステム図の中にもありますが、左の下に売上代金回収会社があります。売上代金回収会社というのは、本部がお店に商品を売ります。売ると20日締めの翌月6日自動引き落としで、加盟店さんの銀行口座から自動的に引き落とします。だから今300店舗ありますと、だいたい6億から7億、よく売れる月には10億、このお金を全国のお店の銀行口座から自動引き落としで持ってきて本部に入れてくれる。そうすると何がいいのかというと、お店にとっては売上が100%で仮に仕入れが60%だったら、この60%でまた商品を仕入れます。経営は40%のお金でしなさい。これキャッシュフロー経営です。それを徹底しています。そうすることによってお店が資金ショートを起こさない。
  もう一つ心理的なことがあります。本部から靴下を仕入れていただく。そのお金を本部が自動引き落としで取りに来たときに、お金を用意してなかった場合銀行がどう思うかというのがある。あの店は、一番中心の靴下の仕入れ代金すら払えない、危ないなと銀行は思うだろうと、お店のオーナーは勝手に思っているのです。だから必ずお金は用意してくれます。でも、300店舗全部回収できますかというとできません。振替え間違いとか、少しお金が足りないとか。そんな店がありますので、例えば数店だけ入らなければできなかったのがどこのお店の何万円という数店だけのリストがあるのです。このリストが売掛金台帳になっています。このため、私ども本部には売掛金を管理する女性がおりません。そういう形で二重にも三重にも得だと。

(株)ダンの情報システムについて
  この仕組みはいつ組んだのかと言いますと、私自身が昭和46年に構築したミスタードーナツのシステムと殆ど一緒です。だからいろんな業種業態をコンピュータで作られるとき、もし小売りがあって本部があってメーカーがあってお客さんがおられてというのを組むのでしたら、基本的な図はこの図になるだけで、所々が違ってくるだけだというふうにお受け取りいただけたらと思います。最後になりますが、この図の左にあります社長宅からも、例えば上海でどんな靴下がどれだけ作られているのかということも分かるシステムとなっています。



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