IT経営研究所 年度活動計画・活動報告

 

IT経営研究所は2011年4月に発足しました。

以下、各年度の活動成果の概要を掲載します。 

 

 2017年度(平成29年度)活動報告

 2016年度(平成28年度)活動報告

 2015年度(平成27年度)活動報告

 2014年度(平成26年度)活動報告

 2013年度(平成25年度)活動報告

 2012年度(平成24年度)活動報告

 2011年度(平成23年度)活動報告

 


2017年度(平成29年度)の活動報告

 

 2017年度は、主に、ITコーディネータの実践力の整備に努めた。ITコーディネータの仕事(タスク)とスキルをIT経営推進プロセスガイドラインに沿って整理した。整理に際してまとめる形式はIPA(情報処理推進機構)で体系化したiコンピテンシー・ディクショナリに平仄を合わせて整理した。18年6月末に公開をした。

 構成は、一般の方向けに①IT経営のためのタスクとスキル、②イノベーション経営のためのタスクとスキル、ITコーディネータの方向けに①IT経営のためのタスクとスキル、②イノベーション経営のためのタスクとスキル、③ITコーディネータ営業のためのタスクとスキル、さらに経営者・IT経営推進者向けのIT経営実践力チェックリスト、イノベーション経営実践力チェックリストを整備した。活用を頂きたい。

 尚、2012年に設立されたIT経営研究所は、2017年度をもって役目を終え、2018年度以降は研修制度デザイン部にその機能を移管する。

 

 


2016年度(平成28年度)の活動報告

 

 2016年度は、前年に策定した知的資産改訂の中期計画(3ヶ年計画)に従って改訂を進めた。IT経営推進プロセスガイドライン(旧:ITコーディネータプロセスガイドライン:PGL)の改訂を実施した(Ver.3.0)。続いて、ITコーディネータ実務ガイドを新しいPGLに対応させて改訂した。さらに、IT経営の実践事例をコンパクトにまとめ、ITコーディネータが顧客先で経営者と経営課題や、IT課題にして確認する際に活用できる事例集としてIT経営アプローチ事例をまとめた。以上の3つが2016年度の成果である。

 

 1.IT経営推進プロセスガイドライン(Ver.3.0)

 本書のタイトルを変更し、広く経営者層、IT経営を推進する方々をメインの読者に据え記述した。また、プロセスモデルも従来のウオータフォールモデル的に見られがちであったが、もっと自由度を高めてプロセスを遂行することをねらいにして、プロセスモデルを変更した。また、経営者層などが平易に内容を理解できるようにするための成果物の概要、用語集などを整備する。

 

 2.ITコーディネータ実務ガイド

 ITコーディネータが、企業のコンサルティングを実施するプロセスを、営業フェーズ、コンサルフェーズに分け、具体的な進めかた、活用するツール、実施事例等を解説している。 

 

 3.IT経営アプローチ事例

 IT経営の実践例をIT経営力大賞受賞会社などを中心にそのアプローチ事例をまとめた。まとめ型の工夫として、本事例を顧客に説明すると同時に、その場で、ITコーディネータが、いろいろ顧客と対話ができるような質問・内容確認のためのシートを入れている。

 ITコーディネータの営業活動に活用できるようにした。

 

 

 


 

   2015年度(平成27年度)活動報告

 

今年度は、広く識者を募り、以下に示すコミュニティ活動を新たに展開した。特に、ITCAが保有しているガイドラインなどの知的資産の見直し、2016年の1月から実施されるマイナンバー制に対応するための研修、クラウドサービスにITCがどう関与していくか等の検討をした。

 

1.コミュニティ活動

 

  ・知的資産棚卸タスクフォース

 

 ITCAが保有する各種知的資産を棚卸しすることを目的にタスクフォースを組成した〈2015年6月〉。知的資産をいくつかの基準で評価し、改定すべきものを抽出し、さらに緊急度を設定し評価した。その結果、PGL、ITCの実務ガイド、事例などが最優先で改訂すべき資産とした。

 16年1月から、改訂WGと査読WGを公募し、2016年7月公開を目標にして活動を開始した。

 

  ・クラウドサービス・コミュニティ

 

 昨今ITCを取り巻くビジネス及び技術環境の中で、重要なテーマであるクラウドサービスに焦点を当てて議論を進めた(活動期間2015年6月~12月)。クラウドサービスに見識をもつ独立系ITC、企業内ITC、クラウドサービスを提供しているITベンダー、および、クラウドサービスを受けるユーザ企業などが参加した。

 クラウドサービスのビジネス化の背景、そのメリット・課題、ITCが関与する際の役割、ビジネスモデル、それを支えるスキル(IPAのi-コンピテンシー・ディクショナリーに準拠)について議論し、報告書「クラウドサービス・コミュニティの活動報告」を作成した。

 

  ・マイナンバー・コミュニティ

 

 2016年1月から施行されるマイナンバー制度に関して、ITCも中小企業の支援ができるよう研修等の開発を目的に組成された。ITCで税理士、社労士を保有されている方、ITCで知見を持たれている方、弁護士等に参加いただきコミュニティを編成した。

 ITCの視点で特に中小企業のマイナンバー対応をどう支援していくかという観点で、研修を開発し、全国20数か所で研修を実施し、マイナンバー制を支援できるITCを育成した。

 

2.継続活動

 

 ・中小企業情報連携基盤推進の取り組み

 

 本年度は本取り組みのスキームを拡大し、つなぐIT推進委員会を編成し、共通EDI標準部会、つながる町工場部会、つなぐIT支援部会を設置し、その下にタスクフォースを組成し活動した。

 特に、昨今は、IoTについて官民挙げて盛んに活動している。協会もこれまでの成果を踏まえて、インダストリアル・バリューチェイン・イニシアティブ、ロボット革命イニシアティブ協議会のIoTによるビジネス変革サブ幹事会(中堅・中小企業)、IoT推進コンソーシアムなどに2015年10月以降参加している。16年度に成果を上げるべく推進する。

 

 



 

 2014年度(平成26年度活動報告

  

 

  2013年度から活動してきましたイノベーション経営の推進と、イノベーティブな人材の育成のための検討成果として、「プロセスで解き明かすイノベーション(イノベーション経営プロセスガイドライン)」(ITC向け呼び名:IPGL)を2014年5月20日に日経BP社から発刊しました。

 2014年度は、このIPGLの出版、および「IT融合人材(イノベーティブ人材)育成連絡会」の検討成果を踏まえ、イノベーション経営を推進するための支援ツールの開発とイノベーティブ人材育成に資する研修体系の構築を中心に取り組みました。

 

1.イノベーション経営の提唱、普及

 

(1)「イノベーション経営プロセスガイドライン」の発刊

 協会は、イノベーションを起こすには、戦略経営サイクルで示されるIT経営とは異なった基本原則・基本姿勢とプロセスで経営を行う必要があると考え、これをイノベーション経営と名づけ、13年度よりWGおよび委員会の手で執筆活動を行なっていましたが、年度初めに完成し、協会の監修作業を経て、書籍「プロセスで解き明かすイノベーション」(副題:イノベーション経営プロセスガイドライン)」(ITC向け呼び名:IPGL)として、2014年5月20日に日経BP社より発刊しました。

 

(2) 「IT融合人材育成連絡会」の検討結果等の公表、セミナーの開催

 産官学連携で進めておりましたIT融合人材(イノベーティブ人材)育成連絡会の成果(報告書)を広く世の中に知らしめ、理解を促進するための成果報告セミナーを、IPAと共催で2014年5月20日に開催しました。

 

(3)イノベーション経営の普及セミナーの開催

 IPGLの発刊を広く知らしめ、企業およびITCがイノベーション経営の推進や支援が行なわれるよう、「IT経営とイノベーション経営との違いが分かるセミナーを開催しました。また、イノベーション経営に取り組まれる大企業、中小企業の事例も講演に取り入れました。

 

(4)イノベーション経営研修の開発と展開

 IPGLに則った研修体系を整備し、2014年度から順次研修プログラムを投入しました。主な内容としては、いわゆる「実践的な学習の場」を提供する研修と、これらをうまく進めるための要素技法・技術の研修があります。

 <実践的学習の場>

  ・経営者に、イノベーションの必要性を気づいていただくための研修

  ・実務者に、イノベーション活動を進めるための実践的な研修

 <要素技法・技術>

・「デザイン思考」、「ビジネスモデル・デザイン」、「アイディア発想法」などを開発しました。

 

(5)イノベーション経営力評価指標の開発

 IT融合人材育成連絡会で課題となっていました「組織のイノベーション経営力(能力)の評価軸」の検討をWGで進め、イノベーション経営力指標(イノベーション経営成熟度診断ツール)を開発しました。

 

 

2.継続事業

 

(1)中小企業情報連携基盤推進の取組み

 中小企業情報連携基盤の取組みについては、今年度も委員会活動として推進しました。継続的に検討してきている「共通EDI」、「コーディネート連携」などのテーマについて、2014年度は、特に、IT利活用が全体として遅れている小規模企業に焦点を当てて検討しました。

 IT活用の空白ゾーンを埋めるための検討テーマとしては、IT活用のアプローチ方法、共通EDI、コーディネート連携、中小企業支援団体・組織との連携のあり方などを検討しITC協会としてITC、関連団体などに提言しました。 

 

(2)ビジネス競争力強化ツール(自己診断ツール、課題解決ツール)の展開

 ITCのビジネス支援(商談から実践までの)の武器となる本ツールを、協会としては広くITCの方々にお使いいただきたいと考えています。本ツールは商談獲得、経営者の気づきの喚起、ITCビジネスの成果物の質の向上、蓄積された事例からの傾向分析など、多岐にわたり効果が期待できます。活用の促進策を積極的に展開するため、講師養成コースを受講していただき講師を育成しました。

 

(3)知のネットワークの展開

 届出組織やテーマ研究を行っているグループに、今年度も新たな「テーマ研究」の募集を行ないました。協会の「知のネットワークを共通インフラとして利用していただき、全国ベースで関係する情報交換や人的ネットワークの拡大をサポートできるようにしました。

 

(4)「ITクラウド連携推進事業」での実証

 中小企業でのクラウド活用については、IPAとの共同調査や自治体での導入推進のための支援をはじめ、ITCでの活動も広がっています。2014年度は経済産業省の施策「ITクラウド連携推進事業」に採択されましたので、中小企業の経営革新のための、ITクラウドを活用したシステム構築と実証を行ないました。

 

 

 



 

2013年度(平成25年度)活動報告

   

 

 中小企業のみならず、大企業においてもビジネスイノベーションが求められています。従来ITコーディネータの支援は、経営戦略の見直しから入って業務プロセスの改善を行い、そこで必要となるITの利活用を行うことに重点が置かれていました。これをIT経営として推進としてきたところですが、ITのコモディティ化に伴って、従来の殻を打ち破るイノベーション経営の必要性が叫ばれるようになりました。
 
 折しも、平成24年9月に産業構造審議会情報経済分科会人材育成WG報告で、次世代高度IT人材、すなわちイノベーションが創出できる人材の育成の必要性が謳われ、ITコーディネータはこの人材に近いところにいるとして期待が高まりました。

 

 

1.イノベーション人材に関わる施策の積極的な推進

  

 平成25年度の施策として、ITCのイノベーション力強化を目的とした研修を開発することとし、委員会、WGのメンバーを公募し多数の参加を得て活発に活動しました。イノベーション研修は3回実施しました。

 それと並行してイノベーション経営への取り組みに必要となる基本姿勢とプロセスを「イノベーション経営プロセスガイドライン」(IPGL)として開発し、経営者や一般の方にも読んでいただける書籍として、平成26年5月20日に日経BP社より出版するに至りました(書名「プロセスで解き明かすイノベーション」)。

 

 もう一つの施策として、組織を超えた国レベルでのイノベーション推進を目指すため産官学と連携した取組みを行いました。

 平成25年7月に「IT融合人材育成連絡会」の立ち上げを情報処理推進機構(IPA)と共に呼びかけ、大手企業、IT関連団体、学会の12組織から参加を得て、IT融合によるイノベーションが創出できる人材をIT融合人材と位置づけ、9か月にわたる議論を得て、平成25年3月に最終報告を取りまとめました。

 最終報告では、IT融合人材の人材像、能力、育成フレームの策定と、実践的学習の場の必要性、およびイノベーションを創出する組織能力の重要性を訴えています。ここでの議論では、当協会がIPAとともに共同事務局を務めることによって、各団体・学会・経済産業省に対し、イノベーションに関し当協会が先導する姿を示すことができました。

 

 

2.中小企業情報連携基盤推進委員会活動

 

  本年度はユーザー企業を中核として運営しました。 ユーザー企業の立場から企業内・企業間をスルーした円滑な情報連携のための要件を取り纏めて関係者に提示するとともにこの要件を実現する情報連携基盤の実用化と普及を目的とした各種活動を行いました。

 

委員会のもとに部会やタスクフォース(TF)を設け活動しました。

①中小企業共通EDI標準部会

 部会としてはH25年度4回開催し、「中小企業共通EDI仕様v2.0」バージョンアップ仕様策定などを行いました。

②中小企業EDI実証TF(小島プレス工業)の成果

 愛知県補助金を活用し、金融EDIを考慮した中小企業EDI実証実験を実施しました。

③コーディネート連携実証TF(今野製作所)

 コーディネート連携のタイプと連携プロセスの検討を実施しました。

④ITカイゼン研究会の成果

 下記の検討課題についてそれぞれ有志メンバーがチームを編成し、「ツールをベースとしたITCビジネスモデル検討」、「ユーザー視点のビジネスモデル検討」などを行いました。

 ユーザー(中小製造業)の視点でビジネスモデルを検討した結果、ITカイゼンステップ3の企業間情報連携の実現が、中小企業の発展にとって重要であると確認しました。

 

 

3.ビジネス競争力強化ツールWG活動

 

 平成25年度は「ビジネス競争力自己診断ツール」に続く「ビジネス競争力課題解決ツール」の研修化を進めました。座学の部分はeラーニングで事前に学び、集合研修時には具体的なツールの使用方法を学ぶ形式にすることとしました。

 H26年度から「自己診断ツール」研修と「課題解決ツール」研修をスタートします。

 



 

2012年度(平成24年度活動報告

   

 

 平成24年度は上期における「ITコーディネータ実践力ガイドライン」V2.0への改版、公表、および下期では「次世代高度IT人材育成」検討活動に取り組みました。後者については、平成24年9月に公開された産構審情報経済分科会人材育成WG報告を受け、下期より重点的に活動を開始いたしました。同報告書ではIT融合時代における次世代高度IT人材像と育成施策の方向性が提示され、イノベーションを担う人材育成の必要性が強く謳われています。

 またITコーディネータのイノベーションスキル強化および今後の人材育成・能力評価等の検討におけるITコーディネータ制度の知見活用への期待が寄せられています。当協会として10月以降、提案検討のための委員会、WGを立ち上げ、構想案を取りまとめてきました。

 今後、ITコーディネータのイノベーションスキルアップ研修の試行・導入や産官学連携によるイノベーション推進体制の立ち上げに向けて積極的に取り組むことを計画しています。

  •   

(1) ITコーディネータ協会の知的資産のエンハンス

 平成23年度に改定した「ITコーディネータプロセスガイドライン(PGL)」V.2.0の内容(IT経営認識プロセスを追加)と同期をとるために「ITコーディネータ実践力ガイドライン」をV.1.0からV.2.0への改定を行いました

 また、今後はIT経営にイノベーションが欠かせないこと、ITコーディネータ自身もイノベーション能力やグローバル対応能力を向上させることが実践力につながることを加筆し「ITコーディネータ実践力ガイドライン」V.2.1として改定を行いました公開に当たっては、初の試みとして日経BP社から書籍出版いたしました。平成25年3月20日から大手書店の店頭に並んでいるほかBP書店、アマゾンでも購入できるため、ITコーディネータの認知度向上、資格価値向上に資するものと考えています。

 

 (2) ITコーディネータの自立的調査研究活動支援

 平成24年4月に立ち上げた経営情報学会とITコーディネータ共同での「中小企業のIT経営研究部会」では、9月の浜名湖での研究合宿、11月の金沢での学会での研究発表、平成25年3月の熊本での農業と地域活性化をテーマに研究発表会を開き、研究成果をホームページに公開しました。また、「望ましいIT経営のあり方研究WG」を組成し、これまでにないアンケート調査分析により、中小企業におけるIT経営の成功モデルを導き出す活動を行っています。

 IIBA日本支部とは、ITコーディネータ有志と共同で、半年間にわたりイノベーションプロセスの研究に取り組み、一般に公開する予定です。日本プロジェクトマネジメント協会とは、関西でのセミナー共催や研究会を通じた連携を始めました。新たに、日本医業情報コンサルタント協会との連携については、相互の研修乗り入れから活動が始まっています。また、IPAの研究事業に参加したITコーディネータによるITコーディネータ支援ツール化を目指す「テーマ研究会」も3月に立ち上がりました。

 その他、届出組織での自律的な「テーマ研究会」は、今年度7件の応募があり、具体的な成果物は協会ホームページから公開しています。内容的にも充実した研究となっており、他のITコーディネータにとって有益な知見が提供されています。

 

 

(3) ITコーディネータ人財育成企画           

 「ITコーディネータ実践スキル向上」に向けて、新規に「フォローアップ研修」カリキュラムの開発、整備および実践研修コースの導入等につき取り組みました。

 

(4)データ連携調査研究委員会活動

 平成24年度は協会内にIT経営研究所が発足したのに伴い、IT経営研究所が所管する調査研究の位置付けに変更し、活動を継続しております。

 本委員会の活動目的は、中小企業のIT活用促進のために企業内・企業間データ連携のあるべき姿を調査研究し、その成果を国及び関係機関に提言し、実用化のための活動を支援することにあります。

 

 <中小企業EDI部会の成果>

 経済産業省が主催する次世代EDI推進協議会(JEDIC)へ平成21年度~平成23年度の3ヵ年間、本委員会より委員を派遣しました。JEDICは大手3業界(自動車業界、電機電子業界、石油化学業界)が中心となり、業界を越えたEDI取引の検討を進め、平成23年度末に業界横断EDI仕様V1.1ビジネスインフラガイドブックを成果物として取りまとめて公開しました。

 この活動の中でITコーディネータ協会は中小製造業の企業間取引に利用する情報種とデータ項目を取りまとめて中小企業の立場からの提言を行ない、上記のJEDIC成果物に反映することができました。

 JEDICは平成23年度末で解散し、平成24年度以降についてはこの活動が国連CEFACT日本国内委員会サプライチェーン情報基盤研究会(SIPS)に引き継がれましたので、本委員会はSIPSに委員を派遣し継続して中小企業EDI仕様の確立と普及問題に取り組みました。SIPSは業界横断EDI仕様を海外でも利用できるようにすることを発足目的の一つとして新たに発足した民間団体です。

 SIPSは平成24年度の活動としてタイ国内取引の調査を行い海外取引にも利用できる業界横断EDI仕様をV2.0としてバージョンアップを行ないました。本委員会はこれらのSIPSの活動成果を参照しつつ中小企業業界版EDI仕様の検討を行い、業界横断EDI仕様V2.0の中に中小企業共通EDI仕様V1.0の組み込みを行ないました。

 

   <“ITカイゼン”部会の成果>

 サポイン製造業(サポーティングインダストリー:ものづくり基盤技術)の基幹業務に“ITカイゼン”ツールを導入してデータ連携に関する実用化検討を継続して実施しました。平成23年度に実施した東京都産業交流事業の集合型“ITカイゼン”研修に引き続き平成24年度も継続して本事業に採択されました。本年度の研修コースは企業のIT活用成熟度レベルに応じた研修に組替え、「基礎コース」と「応用コース」として実施しました。これにより短時間での研修で現場主導の新しい中小企業IT導入支援を行なえる目処をつけることができました。この成果によりこれまで十分なIT活用サービスを享受できなかった小規模中小製造業へ、企業規模に応じた身の丈にあったIT投資での支援が実現に近づきました。

 さらに東京商工会議所様においてもITコーディネータ協会との共催で「基礎コース」を開催し、同様の効果を確認することが できました。今後、多くのITコーディネータによる活用加速をどう図っていくかが大きな課題であり、当協会として情報の幅広い発信、周知に取り組んで行きます。

 

(5)「ビジネス競争力自己診断ツール」の強化

 平成24年度から本格的使用が始まった「ビジネス競争力自己診断ツール」については、研修を受けた80名による活用が始まっています。今年度は、当ツールを製造業以外の業種へ適用できるよう、ビジネス競争力強化ツールWGにて業種別自己診断表の開発も行いました。また、今年度さらに自己診断後のIT経営の実践支援に役立つ「ビジネス競争力課題解決診断ツール」を開発しました。これにより提案から支援までITコーディネータ活動の武器が揃うことになり、ITコーディネータの強力なコンテンツとしてITコーディネータ活動に資するものになると考えています。ツールは活用されて価値を発揮するので、利活用者の拡大に継続して取り組んで行きます。

 

(6)次世代高度IT人材への取り組み

 平成24年度の「IT経営研究所」の取り組みの一環として、産業構造審議会情報経済部会人材育成WGが9月17日に公開した、「次世代高度IT人材」報告に対し、当協会としての対応の方向付けを行うとともに、次世代高度IT人材育成の実現に向けた具体案を「IT融合人材育成・認定制度構想書」としてまとめ、12月に経済産業省に対し提案を行いました

 この「次世代高度IT人材」報告者では、IT融合時代において社会や企業にイノベーションを起こすことができる人材の育成の必要性について提言がなされており、かつITコーディネータがイノベーション能力を高めることで即戦力として期待できることにも言及しています。

 IT経営改革の推進・支援人材であるITコーディネータにとっても、イノベーション能力は当然に求められる時代の要請であり、我が国経済の閉塞感を打破し、経済再生への一翼を担う事を目指し、当協会として次世代高度IT人材の育成に取り組むことにいたしました。

 平成24年9月から、協会内に協会理事、協会役員、ITコーディネータによる「次世代高度IT人材育成推進準備委員会」やWGを設置し、育成や能力評価のあり方、ITコーディネータ制度との関係などを議論し、具体構想としてまとめ、12月に経済産業省に提案いたしました。

 その後の外部識者、事業戦略委員会、運営企画委員会、理事団体、理事企業等へのヒアリング結果を踏まえ、平成25年度事業計画においては、経済産業省へ提案した事業構想のうち、ITコーディネータへの研修・育成を先行して進めていくことにしており、イノベーション人材育成事業として盛り込む予定です。

 

(7)情報処理推進機構(IPA)からの調査事業の受託

 

 昨年度に引き続き、IPAより「クラウド利活用促進のための自立的なネットワーク形成と新たなビジネスモデルの構築に関する調査等」事業を受託し、検討部会を通じ提言を含む全体報告書を取りまとめました。

 

 



 

2011年度(平成23年度活動報告

   

 

 中期計画で掲げた当協会シンクタンク機能の強化を狙いとする「IT経営研究所」を、2011年4月に立ち上げました。当研究所は現場に密着したITコーディネータの幅広い知見のネットワークを基盤に、中小企業・IT経営に関する調査・研究を行い、中小企業経営者およびITコーディネータに情報発信をするとともに、政策提言につなげることを目的としています。大学教授や調査機関のリサーチャーなど3名の有識者を、客員研究員として招聘し、ITCカンファレンスでの講演等もお願い致しました。2011年度は、PGLの改定、ITコーディネータ支援ツールの開発、経営情報学会をはじめとする外部の専門家団体との連携の確立を行ってまいりました。

 

(1)  ITCプロセスガイドラインの改定

 育成・認定委員会からIT経営研究所所管となった継続テーマとして、ITコーディネータの実践力強化を目指したITCプロセスガイドライン(PGL)の改定を5年振りに行い、8月末にVer.2.0として公開を行いました。今回の改定では、IT経営プロセスを定義し、環境変化に対応できる認識プロセスを新たに組み込みました。12月からは、eラーニングによる普及研修を行い、3月末までに1,971名が受講を済ませました。PGL改定を受け、引き続きダイジェスト版(蛇腹)の改定と、ITC実践力ガイドラインの改定に取り組んでいます。

 

(2) データ連携調査研究委員会活動

 本委員会は、平成21年度に(財)機械振興協会から受託した調査研究事業(テーマ:中小企業モノづくりの生産性向上に貢献する企業内・企業間データ連携手法)の中で立ち上げた委員会で、平成22、23年度はITコーディネータ協会の自主事業として継続活動を行いました。

 本委員会の活動目的は、中小企業のIT活用促進のために企業内・企業間データ連携のあるべき姿を調査研究し、その成果を国及び関係機関(次世代EDI推進協議会)に提言し、実用化のための活動を支援することにあります。また、本年度は一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の金流・商流・物流情報連携研究会に参加し、特に中小企業金融EDI連携をテーマとしてWGを共同開催致しました。

 委員会及び分科会の組織体制は以下のようになります。

 

組織図.jpg

 

 

1) 企業間データ連携に関する成果

 中小製造業の企業間取引に利用する情報種とデータ項目を取りまとめ、JEDICに提案し、業界横断EDI仕様V1.1ビジネスガイドブックの取りまとめに協力しました。

 本年度末でJEDICが解散することになったため、今回取りまとめた「業界横断EDI仕様V1.1」については、JIPDECのホームページで公開・提供することになりました。また、ソリューション認定については見送りとなりました。

 今後、業界間のEDI取引に関する検討の場は、国連CEFACT日本委員会のサプライチェーン情報基盤研究会になります。

 

2) 企業内データ連携に関する成果

 サポイン企業(サポーティングインダストリー:ものづくり基盤技術)の基幹業務に“ITカイゼン”ツールを導入してデータ連携に関する実用化を開始しました。“ITカイゼン”ツール実用化に協力していただき、基幹業務システムの更新を実施しました。(株)由紀精密殿がIT経営力大賞優秀賞を受賞しました。サポイン企業のデータ連携実用化に向けて、東京都産業交流事業に参加して集合研修型支援の実証実験を行い、現場主導の新しい中小企業IT導入支援方法の目処をつけました。

 

3) 中小企業金融EDI連携WGに関する成果

 次の2つの実証実験を行い技術的には実現が可能であることが確認できました。残された課題の検討を継続して取り組んでいく計画です。

 ①サプライヤ企業が受注した注文EDI情報に基づく、無担保融資の仕組み

 ②金融機関を介した決済と支払の同期化

 

(3) ビジネス競争力自己診断ツールWG活動

 従来の成熟度診断ツールは、契約上2012年3月末を持ってその利用を終了致しました。それに代わるものとして、より実践的な提案につながり、ITコーディネータの営業にも役立つ「ビジネス競争力自己診断ツール」を開発しました。

 本ツール活用のための教材を作成し、当協会主催セミナーを3回開催しました。平成24年度は、本ツールをさらに広めるべく各地での研修を開催します。

 なお、WGでは基本の製造業のほか、「建設業」、「運送業」、「小売業」向けに、テンプレート類を開発し、本研修を受講したITコーディネータに提供を開始していく予定です。

 

(4) 専門家団体との連携

 ITコーディネータに近い立場で活躍されている方々との連携を深めることで、ITコーディネータの実践力向上に資すること、並びに関連他資格保有者にITコーディネータ資格への認知度を高めていただくことを目的として、専門スキル特別認定資格者団体との連携協議を進めてきました。

 平成23年度には、PMI日本支部(PMP資格)、itSMFジャパン(ITIL資格)、IIBA日本支部(BA資格)、PMAJ(P2M資格)、MCPC(SMC資格)、日本能率連盟(MC資格)、日本行政書士会連合会(行政書士)、経営情報学会の各団体と連携推進で合意致しました。その結果、MCPCのモバイル技術検定制度にITコーディネータ資格者の特典コースを設けていただくなど、ITコーディネータにメリットある連携も始まりました。また、経営情報学会とは、中小企業でのIT経営をテーマに平成23年9月に研究合宿を開催し、平成24年1月には学会オープンセミナーに協賛して参加するなど、具体的な連携研究活動を始めています。

 

(5) 情報処理推進機構(IPA)からの調査事業の受託

 IPAより「クラウド利活用促進のための自立的なネットワーク形成と新たなビジネスモデルの構築に関する調査等」事業として、全国5地域(北海道、関東、中部、関西、中国)を対象に「中小ITベンダとITユーザ双方にとって有効で持続的かつ自立的なネットワーク形成」、「事業化に向けた自立型ビジネスモデルの構築」、「ITコーディネータ等と連携した中小ITベンダ・ITユーザのマッチング」、「地域金融機関と連携したITユーザの発掘とクラウドサービスの活用」の4つをテーマとする調査、研究事業の事務局を受託し、検討部会を通じ提言を含む全体報告書を取りまとめました。

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