支援制度活用事例

2010.07.01
販売促進
~ 店舗の強みを探り、Webサイトの戦略活用へ ~



有限会社プリンス
伊勢佐木町店の店頭。顧客とゆっくり話をするためテーブルとイスを用意

吉田親弘代表取締役
所在地 神奈川県横浜市中区曙町3- 40
業種 高級紳士服ならびに婦人服の販売
従業員数 20名
URL http://www.yprince.com
店舗 本店のほか、伊勢佐木町店、蒲 田パリオ店、川崎アゼリア店を構える。


始まりはITに対する素朴な疑問だった

 神奈川県横浜市、歌謡曲「伊勢佐木町ブルース」で知られる伊勢佐木町商店街に店舗を構えるプリンスは、県内に4店舗を持つ高級紳士服洋品店である。イタリア製を中心にした上質な品揃えが特徴で、購買力のある比較的高い年齢層が主要顧客だ。
 バブル時には店舗を15まで拡大した同社も、バブル崩壊による経済の冷え込みや紳士服の低価格化により、同程度の売上を維持するのは困難な状況になった。吉田親弘社長は店舗数を絞るなどのリストラを行い安定利益を確保したが、最近になって一つのことが気にかかりだした。
 それは、「世の中はIT、ITと言うが、いったい何なのか、IT化に乗り遅れるとこれから会社をやっていくこともできなくなるのではないか」という不安だった。
 ITに明るい世代である息子さんからの勧めもあって、店舗経営にITを活用しようと有名ショッピングモール「楽天」に出品を試みる。反応はあったものの思ったほどには売れず、どうしたものかと悩みは深まる。ITベンダーの営業はひっきりなしにやって来るが自社の製品を売ろうとするだけ。自分の疑問に答えてくれる相手にはならなかった。
 そんなころ、横浜商工会議所の研修会を契機に中立な立場でIT活用の相談にのってもらえるITコーディネータの存在を知る。ITCなら自分の疑問に答えてもらえるかもしれないと期待をもった吉田社長は、手始めに、3分の1の費用負担でアドバイスが受けられるIT推進アドバイザー派遣制度を使い、コンサルティングを依頼することにした。

ITコーディネータとともに会社を客観的に分析

 ITコーディネータの小野敏夫氏と大西和志氏は、いきなりWebサイトの改訂を提案するのではなく、基本に戻ってまずは経営状況の分析に着手した。吉田社長とともに同社の現状を整理し「特にプリンスの強みはどこなのかを実際に各店舗を見ながら探っていった」(ITC小野氏)という。
 同社は、吉田社長が社内で育てた店長たちがそれぞれ個性を発揮して店舗経営を行っている。その結果、顧客との強い関係が築かれており、年間数10万円の買い物をする固定客をつかんでいることが大きな強みだった。しかし顧客は自然と高齢化していき、その数は減ってしまう。現在の顧客層に続く次の固定客をどう開拓していくかが同社の課題として浮き彫りになってきた。
 吉田社長の直接的な悩みがホームページの改善だったこともあり、IT活用の具体的な行動はホームページのリニューアルからスタート。店舗での接客が強みの同社の特徴を活かすべく、Webサイトでは洋服を売ることよりも来店を誘導することを目的に「プリンスのファッション・コーディネート力を見せる「トータルコーディネート」サイト」(ITC大西氏)の構築を目指した。

リニューアル途中で、早くも顧客開拓成果が

 パソコンの導入からネットワークの整備といった設備準備、またWebページで提案するコーディネート例を自ら撮影し、自力でWebサイトを作成する作業まで......。現在同社は、ITCと共にIT活用による改革のステップを一歩ずつ歩んでいるところだ。
 Webサイトの改訂方針が明確になった後、一時的な措置として旧来のサイトを一部改良してみたところ、北海道から「掲載した服を一式欲しい」という問合せがきたり、常連顧客がホームページのURLを口コミの資料として使い新規顧客を紹介してくれたりなど、早くも効果が表れた。本格リニューアルが完了すれば、顧客開拓への新しい道が開けるのも間違いないだろう。
 吉田社長はこの経験を通じて「ITというものが少しずつわかってきた」という。今後もITCのアドバイスを受けながら、さらに改革を進めて行きたいとのことだ。


ITコーディネータ紹介

 10回におよぶアドバイザー派遣の後、吉田社長から継続契約を依頼され、直接契約によるコンサルティングを行っている。経営分析の過程で同社には洋服のサイズ直しに高い技術力があることを発見し、これを顧客来店のきっかけづくりに使うことを提案するなど、視点を変えたアドバイスも行っている。

小野敏夫氏

大西和志氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

「ITは、一人でやろうと考えない方が良い」
 ITを使わないと時代に取り残されてしまうという思いがあったものの、何をすればよいのかがわかりませんでした。
 ITコーディネータは何でも聞けるアドバイザーでもあり、日々、進歩を見ていてくれるサポーターでもあります。このプロセスを通じて、ITというものの価値が少しずつ見えてきました。
 経営者は自分一人でITをやろうなどと考えない方がよい。良い相談相手を作ることが有効だと思います。


<IT推進アドバイザー派遣事業とは?>

 中小企業基盤整備機構が実施している制度。この制度を利用すると、派遣費用の3分の2が補助され、1日1万5000円の費用負担でアドバイザーのコンサルティングが受けられる。本事業への申し込みはITコーディネータ協会でも受けつけている。「IT推進アドバイザー派遣事業」の詳細はこちら >>



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2010.07.01
組合一丸で改革遂行
~ 「顧客の変化がわかる町」へ意識改革と契機を作る ~



湯沢町温泉旅館商業協同組合
所在地 新潟県南魚沼郡湯沢町
総合案内 http://www.yuzawaonsen.gr.jp/

新幹線で新潟駅から1時間、東京駅から90分。川端康成の小説「雪国」の舞台としても知られる町。
    湯沢町のIT化を推進する
湯沢ビューホテルいせん
井口智裕専務取締役
湯沢町温泉旅館
商業協同組合理事長
松泉閣花月 代表取締役
富井松一氏

18のスキー場を持ち、温泉、自然、各種スポーツ施設と年間を通じ豊富な観光メニューを有する。温泉旅館商業協同組合には町内15の温泉旅館が加入。


人気観光地に押し寄せる顧客構造変化の波

 東京駅から上越新幹線で90分弱。越後湯沢の大きな駅舎を出ると、目の前には山々を背景に温泉旅館や飲食店が連なる情緒ある街並みが広がる。ここ新潟県南魚沼郡湯沢町はスキーのメッカとしても知られる温泉地だ。
 都心からのアクセスが良く四季折々に観光ポイント持つ湯沢町は、全国各地でシャッター通り化する温泉街が増えつつある中、変わらぬにぎわいを続けている。しかし、旅館の経営者たちは、近年顧客構造が変化しているのを敏感に察知し、改革の必要性を感じていた。
「お客様の行動範囲が広がり、町をトータルで楽しむようになった。宿泊した旅館のサービスが良いだけでなく顧客の嗜好に町全体で応えることが求められている」――旅館「松泉閣花月」代表取締役で湯沢町温泉旅館商業協同組合理事長を務める富井松一氏は、その変化を旅の楽しみ方の転換ととらえる。
 顧客に何度も湯沢を訪れてもらうためには、宿泊した旅館のサービスがよかったというだけでは心もとない。これからは、店舗も観光名所も一体となった体制づくりが必要だ。富井氏は、湯沢のリピーターを増やすカギとなるのは複合型観光需要に対応できる「町全体のレベルアップ」だと認識し、地域全体で顧客を知る仕組みを作れないかと考えたのだった。

自ら学習し、ITの意義を体感

 そこで、2003年6月から半年間、組合が主体となりITSSP事業の経営者交流会を開催。「湯沢町の強みとはなんだろう」「ITの活用で顧客の姿をつかむことができるのではないか」など、忙しい仕事の合間をぬって集まった経営者が、ITコーディネータである坂下知司氏、岡田怜氏、水谷哲也氏らのサポートのもと、真剣な議論を戦わせた。他の観光地のIT化事例などを学んでいく過程で「顧客の年齢層や行動パターンなどを町全体で収集しその変化について行く」という計画案が作られ、大筋の合意が得られるまでになってきた。
 しかし、いざITの活用となるとそこには投資が伴う。実際、「成果の見えない段階でお金をかけることはできない」という意見も出た。組合員がITの意義を実感しなければこの計画を合意をもって進めることは難しい――そこで、意識改革への第一歩としてITCの坂下氏は「お金をかけずにIT活用を始め、小さくてもよいから成功を実感する。その上で次のステップに向かう」というプロセスを提案した。旅館業の要はなんといっても宿泊予約。まずはITを活用した予約増に焦点を絞り、Webからの予約を増やす仕組みを考えていった。
 Webでの宿泊予約というと旅行代理店各社が運営する宿泊予約サイトも重要な役割を演じているが、急な予約への対応や特徴ある部屋の販売には自社Webをもっと活用できると便利だ。そこで関係者は初期投資が不要な商用ネット予約サービス「RoomBank」に注目する。
 RoomBankは、空室在庫を複数の旅行代理店サイトと自社Webサイトで共有できる仕組み。ここに空室を登録しておけば、自社Webからでも加盟代理店のWebからでも顧客からの予約が入ると旅館側にメールで連絡が送られてくるというものだ。各旅館が任意にRoomBankに加入し、新たな予約システムを運用し始めた。
 組合におけるIT化のリーダー的存在である、湯沢ビューホテルいせんの井口智裕専務取締役は、「部屋数は少ないが特徴のある部屋などを自社Webで自由に売れるようになったのは大きい」と説明する。また利用料金が成約1名につき100円(自社Webで利用した場合)と投資額が低いこともメリットだという。

[湯沢町の計画]
第一ステップ...商用ネットの共同利用で「結果を出す」
第二ステップ...ネット予約の拡大展開
第三ステップ...顧客データベース整備のための計画書策定

顧客データベースの活用でさらに魅力ある町づくりへ

小さな成功が組合員の意欲向上を促し、次のステップへ

 新方式の採用から2ヶ月、予約件数は期待を上回り、これまでの月300件程度から月900件以上に大幅に増加した。わずか9万円程度の手数料で月1000万円の売上増を実現したことになる。RoomBankを利用中の旅館による予約受付ランキングでも、湯沢町の旅館は全国でも上位ランキングに顔を連ねた。
 少ない投資で目に見える効果を上げたことで、関係者はITの威力を目の当たりにする。今までWebを十分に活用していなかったことでこれだけのお客さんを逃していたことに気付き、この後、ほとんどの旅館がこの仕組みを利用するようになったそうだ。
 電話予約や旅行代理店経由の予約数に比べればまだ少ないものの、この成果は参加者がIT化の効果を実感し、さらなるIT活用を考えるきっかけになった。今後は、全旅館の空室状況が一覧できる仕組みや町全体の宿泊客の特性をつかむ仕組みなども考えていきたいという。
 一気に大掛かりな改革を行うのではなく、IT化の成果を実感し合意を得て次のステップへ。この第一ステップは確実に前進した。ITC岡田氏は「理事長が組合員に働きかけ、ベンダー主導ではなく利用者主導で進めてきた結果」と評価する。大きな成果は小さな成果から――第一歩を歩み出した湯沢町は、この実績を踏まえ、今後は町を上げての「顧客を知る仕組み」の構築に挑む。

*湯沢町の顧客データベースプロジェクトは平成16年度のIT活用型経営革新モデル事業に採択されました。


ITコーディネータ紹介

 ITコーディネータ実務研究会に属する坂下知司氏(写真中央)、岡田怜氏(写真右)、水谷哲也氏(写真左)は2003年6月スタートのITSSP事業経営者交流会から湯沢温泉のサポートを開始。組合という形態であるがゆえ、各経営者の意向がまとまりにくい危険性もあったが、坂下氏らは、現状分析の支援から始まって、1つ1つ組合員の合意を形成しながらIT化を推進している。



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2010.07.01
施工実績の共有からスタートした建設業の生き残り策



株式会社日栄建設
小山内守常務取締役
所在地 北海道札幌市厚別区厚別西1条1丁目1番50号
創業 昭和50年
従業員数 50名
URL http://www.nichiei.ws
事業内容 土木工事全般に対応。高い技術力を強みに、VE(バリューエンジニアリング)提案型工事を得意とする。
  1年間に実施する工事は40件ほど。2000年6月にISO9001を取得し、品質管理の充実を図る。道内石狩、苫小牧、函館、帯広に営業所を所有。


淘汰の事態をどう生き抜くか―IT活用の長期ビジョンを立てたい

 「この先公共工事が減るのは自明。当然淘汰される会社が出てくるが、うちは何がなんでも生き残る。そのためには一歩でも二歩でも先に行かなければ」――穏やかな表情とは対照的に、日栄建設の小山内守常務は強い決意を口にした。
 土木工事を事業の主体とする北海道札幌市の日栄建設は、受注の100%が公共工事。北海道開発局、北海道、札幌市が主な取引先だ。公共事業では、電子入札や電子納品が進んでおり、この部分のIT化は早々と整備。その他にも無線LANの導入や通信用専用線の導入、Webサーバー・メールサーバーや現場の写真を蓄積するサーバーの設置と、同業他社の中では一歩進んだIT導入を行ってきた。
 ところが、小山内常務は「ITは取り入れてきたが、その時々の課題に個別に対処したものであり、長期ビジョンに欠けていた」と述懐する。そして将来を考え、総合的なIT化を模索したが、個々のシステムベンダーでは相談相手にならなかった。そんな小山内常務の「ぼやっとした思い」を明確なビジョンに変える手助けをしたのがITコーディネータの赤羽幸雄氏である。

ITコーディネータとともに工事実績やノウハウの共有化へ

 赤羽氏が運営する協同組合は2004年2月にITSSP事業として建設業を対象にした経営者研修会を実施。研修会に参加した小山内常務はITコーディネータの中立性や考え方に共鳴し、札幌中小企業支援センターの専門家派遣制度を利用して長期ビジョンに基づく情報化に歩み出した。
 日栄建設の強みは技術力。近年は施工会社が工事の技術提案を行う「VE提案型」工事が増加していることもあり、安定した技術力を発揮できれば他社との差別化がはかれる。それには「今まで担当者が個々に持っていたノウハウをきちっと系統だてて蓄積し共有していく」(小山内常務)ことが必要だ。そこで、過去の工事実績をデータベース化し社内で共有することが計画された。類似工事の内容を参照することで、経験の浅い担当者でもノウハウを習得し適切な工法を選択できるというわけだ。
 工事実績の蓄積は、赤字工事を出さないという面でも効果があるという。道路工事一つとっても、土質や立地によって施工の原価は変化する。従来、こうした判断は担当者の経験や勘によるところが大きく、利益を圧迫することもあった。過去の工事実績を参照できれば、経験だけに寄らずに実勢に近い原価が把握できるようになる。
 技術力の底上げと適正な原価管理――これまで現場担当者が個々にパソコンに記録していた工事実績の情報を全社で共有することで、二つの課題を克服しようというのだ。

取引先を含めたネットワーク化が最終目標

 システム構築にあたり、ITC赤羽氏が最初に提案したのは通信環境の整備だった。本社は128kの専用線、営業所と工事現場からは電話回線によるダイヤルアップ接続を行っていたが、「OCN Bフレッツ」(100Mbpsと高速な光ファイバーによるインターネット接続)をメインにしたブロードバンド回線に切り替え、各拠点をセキュリティにすぐれたVPNで結んだ。
 この理由について赤羽氏は「当初から通信インフラの整備を第一ステップと考えていました。作業現場や営業所からリアルタイムでデータを参照するには相応の環境が必要です。IT化にあたり通信インフラは意外に見過ごされがちですが、正しく整備すればランニングコストがかなり圧縮されます」と説明する。建設業では電子納品に対応するため現場から画像を送信することも多く、ブロードバンドは作業効率を上げる点でも大きなメリットがある。2004年7月の切り替えからまだ2ヶ月だが、月次の通信コストはおよそ40%削減できたそうだ。
 このブロードバンド環境をベースにいよいよデータベースシステムの構築がスタート。本システムは、「札幌市中小建設業経営IT化促進モデル事業」の認定を受け、ソフトウェアやサーバー等のシステム導入費500万円のうち200万円に補助金が支給されることになった。
 システム完成予定の2005年春が待たれるところだが、日栄建設の情報化にはまだ次のステップがあるという。それは「協力会社も含めてネットワーク化し情報化を進めること」(赤羽氏)。建設業はつねに協力会社との協業でプロジェクトが進むので、発注や請求など、工事部門の情報が共有できると効率化がさらに前進する。こちらの動きも楽しみなところだ。

ITコーディネータ紹介

 専門学校の副校長でもある赤羽氏は、道、市、商工会議所などとのネットワークも強く、様々な支援制度を活用して道内企業のIT化をサポートしている。
 北海道の主力産業の一つである建設業界に詳しく、建設業を対象にしたITセミナーやコンサルティングも行っている。2004年9月には北海道情報産業クラスター・フォーラム事業の連携促進事業として、「建設現場のIT化」をテーマとする建設業情報化研究会を発足させた。

戦略経営ネットワーク協同組合
北海道ITコーディネータ協議会
http://senryakukeiei.net

赤羽 幸雄氏



<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

「建設業の業界特性を理解していただきありがたい」

 建設業は特殊な事業があり、業界を知らないコンサルタントやベンダーにはなかなか細部まで理解していただけません。そのような状況で、建設業に強いITコーディネータは本当に助かります。また、中立な立場なのでベンダーの意向に左右されないところが良いと思います。
 我々建設業では、営業が苦労して受注した仕事について、最小限のリスク・適正原価で工事をすることが求められます。今回ITCのアドバイスを受けて構築したシステムで経験値の共有が進めば、弊社の大きな強みになっていくと思います。(小山内守常務取締役 談)



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2010.07.01
経営分析からIT化へ
~ 自社の現状を分析し新経営戦略が見えてきた! ~



八戸塗料販売株式会社
本社 青森県八戸市大字長苗代字前田54
創業 昭和49年
従業員数 12名
URL http://www.miesc.or.jp/
事業内容 船舶を中心に、八戸市の豊かな産業、また近隣地域の火力・原子力発電、米軍基地など各種産業用塗料の卸売りを行う。岩手県久慈市に営業所を設置。同業者の上位5位がすべて八戸に拠点を持っている。
 

地場産業の構造変化がもたらした事業の転機

 青森県八戸市で塗料の流通業を営む八戸塗料販売(以下、八戸塗料)は、昭和60年代に入り事業の転機に直面した。原因となったのは二百海里問題や日本人の食生活の変化。食生活の変化と塗料がいったいどう結びつくのか、ピンとこない組み合せだが、これは八戸が東京湾以北最大の漁港であることに起因している。
 創業から10年あまり、同社は船舶用の塗料を主力商品として扱ってきた。漁獲量が下がり入港する船の数が減れば、塗料の売上も伸び悩むという構図なのだ。塗料販売ビジネスはそれだけ納品先企業の業界構造や景気と関係性が深いとも言える。
 2代目経営者の西川禎常務は、県北や岩手県北部へと商圏を拡大する一方、船舶から建設、工業、その他の地域独自産業に取引先のシフトを図ってきた。価格以外のメリットを打ち出すべく模索を続けていたとき、ITSSPの経営者研修会と出会う。「ITって名がつくと経営者は引いてしまうものです。私も当初はパソコン操作を習うのかと思っていました。実際は経営分析やマーケティングの視点を学べ、また会社の弱点が見えてきた」ITSSPは経済産業省が推進する戦略的情報化の支援プログラム。八戸商工会議所の青年部から誘いを受け、西川常務が3日間にわたる経営者研修会に参加したのは2003年9月のことだった。

ITSSPの個別コンサルティングで改革ステップを明確化

 13社の企業経営者が参加した研修会を終えるころには、自社の課題と経営戦略が明確になってきていた。「ここまでやってきたのだから具体的な形にしたい」と、翌年1、2月に実施されたITSSP「計画書策定コンサルティング」へも参加の手を挙げる。ITコーディネータである佐藤賢一氏と中田哲男氏に、5回にわたる個別コンサルティングを受けることとなった。
 この間の取り組みを、ITC佐藤氏は「バランス・スコアカードを利用して業績評価を試み、会社の実情を踏まえた戦略を立案しました。経営改革すべきものと情報化すべきものに分け、情報化では既存の資産を活かすよう留意しました」と説明する。実情に合わせ、ステップを踏んで具現化する取り組みであった。

お金をかけずに情報化 社員教育も視野に

 八戸塗料の改革テーマは五つのキーワードに整理、まずは「在庫管理」「営業情報共有」の二つに重点的に取り組むことにした。在庫管理は作業の効率化と正しい数値の把握を目指し、既存の販売管理ソフトをフル活用。新たにPDAを用いたバーコード入力を導入しリアルタイムに在庫を把握できるよう計画している。効率化が進めば、捻出した時間を営業活動に当てることができる。IT化が遅れている塗料販売業界において、社内在庫管理にこうしたシステムを用いる例は少なく、先進的な取り組みとなった。さらにデータ分析ソフトの追加でデータを様々な角度で分析し、販売に役立てる予定だ。
 もう一つの「営業情報の共有」は、納品先企業の動きが販売業績に直結する同社においては営業面での重要課題だ。しかし、営業活動はどうしても個々の担当者に拠るところが多くなる。仕入れ価格が担当者によって変わったり、別々の担当者が同じ案件に異なる額の見積もりを出し、顧客に迷惑をかけることもあったという。
 そこで、「正確な現場情報のフィードバックのみならず、横の情報共有を目指す」という認識のもと、顧客情報や営業情報を一元管理するソフトウェアの導入も決定した。
 塗料の販売機会はいろいろなところに潜んでいる 。家の外壁を塗り替えたい消費者を探し塗装業者に紹介して同時に塗料を卸すなど、顧客紹介を伴うケースもあるという。西川常務は「価格以外の面でサービスが強化できるよう、アンテナを張って情報を共有していきたい」と話すが、各営業担当者からの生の情報が共有できれば、そのアイディアもさらに冴えることだろう。
 ただ、実際に必要な情報を本当にきちんと書いてくれるのだろうか、という不安もある。これについては、システム導入直前の2005年1月に、ITCが「会社が成長するために一人ひとりがすべきこと」や「情報共有を行う意義」といった事柄について個別の社員教育を行うそうだ。社員それぞれがその意義を自覚してこそ結果が出る――人材の育成まで視野に入れた本システムの稼働で、同社のさらならる販売力向上が期待される。なお、この取り組みは、中小企業経営革新支援法の認定を受け、補助金交付と融資が行われる予定である。

ITコーディネータ紹介

 東北地方のITC活動を牽引するITコーディネータの一人。
 ITSSPの経営者研修会では、仮想の「ビジネスホテル八戸」を教材にケース研修のプログラムを開発。参加13企業がすべてのプログラムを終了し、経営計画を立案することに成功した。
 八戸塗料販売のコンサルティングでは、過大な投資を防ぎ、既存のシステムを活かす方向でIT化を推進。投資総額が少なかったためIT活用型経営革新モデルへの応募はできなかったが(同事業には投資総額の下限が定められている)、経営革新支援法の承認を受けることに成功した。

株式会社IT経営コンサルティング
http://www.it-management.jp

佐藤 賢一氏



<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

「我々にない視点でのアドバイスが有効だった」
 ITSSPの経営者研修会からITコーディネータの方と一緒に経営分析を進めてきましたが、社外の客観的な視点は大変役に立ちました。自社の立場や強み・弱みなどが言葉で把握できたのはとても大きな収穫です。思いを文書化することで、社員に経営方針を説明しやすくなりました。 (西川禎常務取締役 談)



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2010.07.01
栽培プロセスを消費者に伝える!
ミカン農家80戸がパソコンと格闘




株式会社地域法人無茶々園

情報化プロジェクトリーダー
宇都宮 広 氏
所在地 愛媛県西予市明浜町狩浜3-134
代表取締役社長 片山 元治
設立 1993年
従業員数 7名
URL http://www.muchachaen.com/
 
事業内容
無茶々園は、除草剤や化学肥料を使用せず、農薬をできるだけ使わない栽培方法で柑橘類の生産・販売する連合組織。このうち、加工・販売部門が株式会社となっている。
 取引の約3分の1が個人消費者への直接販売である。取り扱い品目は柑橘類(温州みかん、伊予柑、ポンカン、ネーブル、甘夏、河内晩柑、レモン等 )、加工品(ジュース、ゼリー、マーマレード、みかん酢等)、海産物、真珠、野菜など。ISO14001認証取得。


健康で安全な農作物作りを目指して

 愛媛県の県庁所在地松山から車で90分。野福トンネルを抜け段々畑を見ながら九十九折を下りると眼下には宇和海が光る。海と山に挟まれたリアス式海岸に立地する西予市明浜町は、南向きの斜面に恵まれミカン栽培の適地となっている。
 ここに、無茶々園という「意志を持った農家」の連合組織がある。
 無茶々園が取り組んでいるのは除草剤や化学肥料を使用せず、また農薬をできるだけ使わない柑橘類の栽培だ。農薬を多用して人と環境に負担を強いる農法を見直し、健康で安全な食べ物の生産を通してエコロジカルな町づくりを目指そうと、片山元治氏を代表者に30年ほど前にスタートした。現在の参加農家は約80戸。
 平成5年、ミカン以外の地域特産物も販売するため販売部門を独立させ「株式会社地域法人無茶々園」を設立した。
 最近では店頭で有機栽培の農作物を見かける機会が増えたが、価格が若干高めになることもあり、主な購入者は健康や環境に関心の高い人々だ。実際、同社の取引は約3分の1が個人の消費者への直接販売だという。

ミカンの「育ち」を伝え、消費者との関係を強化したい!

 無茶々園が出荷するミカンの箱の中には生産者名と農薬使用の有無などが記載されたメッセージが入っている。消費者は注文したミカンの「育ち」を理解し、作り手の存在を強く意識することになる。「誰によってどのように作られたミカンなのか」――同社は消費者との相互理解によって事業基盤を形成しているのだ。
 80軒の生産情報を適宜記録するとなるとIT化は避けて通れない。無茶々園ではISO取得への取り組みを契機に、2000年夏、各農家へのパソコン導入に踏み切る。しかし農業従事者は高齢化が進んでいる。
 無茶々園も最高齢者は75歳だ......。
 「マウスを上に動かして、というと腕を上に上げる人もいましたね」。
 無茶々園の事務局で情報化のプロジェクトリーダーを務める宇都宮広氏は導入時の奮闘の様子を振り返る。しかし、皆の努力の積み重ねにより、徐々にメール経由で在庫情報を集められるようになってきた。

システムをバージョンアップしたいが、どうすれば...

 システム活用が進むにつれ詳細情報の収集や2箇所の事務所での出荷情報共有への対応など、バージョンアップの必要性が出てきた。
 宇都宮氏は以前から交流があったえひめ産業振興財団産業情報センターに相談を持ちかける。同財団の関わる「愛媛県戦略的情報化連携支援事業」を利用してITコーディネータ田中知彦氏のコンサルティングを受けることにした。
 現場から出された様々な意見を元に、ITC田中氏は業務課題を整理しシステム要件を絞り込む。数回の議論の結果、新しいシステムでは、ミカンの生産プロセス情報を開示し、個人消費者を現在以上にサポートすることが第一目標とされた。
 各生産者が入力した畑作業の記録や出荷・在庫数情報をデータベースに保管。この数値を無茶々園事務局が行っている受注・販売と連動させ、生産から出荷までの詳細情報を一元管理する。消費者から注文があった際には生産者別の最新在庫数を参照し、出荷日などを即答できるようにするというものだ。
 また、日々蓄積される生産記録はミカンのトレーサビリティとして今後Webで公開していく予定である。

誰でも使えるWebを選び、ISDN回線でも使える工夫を

  情報を滞りなく集めるため、システムにはインターネットの技術が採用された。生産者はWebブラウザーから情報を入力、インターネットを経由して情報がサーバーに集積される仕組みだ。
 ITC田中氏は「汎用性のあるWebを活用することや入力量を減らすために画面から項目を選択できるようにするなど使いやすさを追求しました。また、誤入力の発生も考慮して事務局で入力情報を精査するプロセスも設けています」とシステムのポイントを説明する。
 残念なことに明浜町ではまだブロードバンドが使えない。田中氏はサーバー側にミドルウェアソフトを用いてISDN回線でも快適に使えるよう助言したそうだ。
 顧客との関係性を深めるためのシステムは稼働間近。しかし、無茶々園には本システムを使って実現したいことがもう一つある。
 宇都宮氏は「今はミカンだけでは食えない時代となっている。生産情報として開示する情報も大事だが、蓄積した農家個々の情報を経営にどう生かすのか。これからも明浜町で百姓を続けていくための経営分析データとして活用したい」と説明する。 目指すはこの土地で暮らし続けるために必要な農業経営の実行だ。
 明浜町ではITが人と自然の共存に貢献しようとしている。

ITコーディネータ紹介

 伊予銀行グループの株式会社アイ・シー・エスに勤務。平成15年から無茶々園のコンサルティングを担当中。
 当初、無茶々園はシステムの機能追加や設計仕様についてアドバイスを求めていたが、田中氏は一度しっかり経営課題分析を行うことを提案。このシステムを導入する意義や目的を共有し、方向性を明確にした。
 また、データを入力する農家の人々がそれほどパソコン操作に慣れていないことを鑑み、操作性や入力画面の設計には特に気を配った。

NPO法人 ITC愛媛
http://aspgw1.ehime-iinet.or.jp/itc/

田中 知彦 氏


支援機関にもITコーディネータが

 えひめ産業振興財団産業情報センターでは平成14年度からIT化支援員(ITに精通した離職者)が企業を訪問してアドバイスを行う独自の支援制度を実施、15年度からはより高度な支援が必要な企業にNPO法人ITC愛媛からITコーディネータを派遣する事業を行っている。無茶茶園は同制度を活用してIT化を進めた。同財団は、職員の西川昌祐氏がITコーディネータの資格を所有しており、愛媛県内のITコーディネータ組織との連携に強く、IT化の支援体制が整っている。

財団法人 えひめ産業振興財団
http://www.ehime-iinet.or.jp/
i・愛・えひめ
http://shop.ehime-iinet.or.jp/

西川 昌祐 主査

<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

  こちらはシステムを入れたいと希望しているのに「業務の問題点を言ってください」と言うのですから正直、驚きました。しかし、課題を整理していくうちに「最終的に何がしたいか」が明確になってきました。
 それまではどんな機能が欲しいかばかり考えていたのですがシステム化のポイントはそこではなく、目標点を定めてそこに向かうことだと気づきました。
 この制度を使って本当にトクしました。周囲にも活用を薦めたいと思います。
(無茶茶園・宇都宮広氏談)



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2010.07.01
金融機関がIT化需要を掘り起こし
ITコーディネータとのマッチングへ




名古屋支店について
中小企業金融公庫 名古屋支店
大野晴久 支店長(写真右)と
野田祐司 融資総括副長
所在地 名古屋市中村区名駅3-25-9 堀内ビル8階
URL http://www.jasme.go.jp
事業内容 現在、約1600社と取引中。IT活用促進資金の貸付は年々融資額が伸びており、また、支店内総融資額に占めるIT貸付の割合は全国平均より高い数値を示している。
 同支店では担当者が企業に積極的に足を運び面談する「フェイス・トゥー・フェイス」の意思疎通に努めている。IT活用セミナーや経営者研修会へ多くの企業が足を運んだのも、こうした基盤があってこその結果と言える。

中小企業金融公庫とは
中小企業金融公庫は全額政府出資で設立された政策金融機関。特別貸付を中心とした長期・固定金利が特徴である。IT関係では、「IT活用促進資金」という特別貸付が設定されている。
 貸付以外にも企業診断や経営革新事例提供など、幅広いサービスが展開されている。店舗は全国に61箇所。

 ITに興味はあるものの、具体的な行動となると的確な相談相手が見つからず足が止まってしまいがちだ。しかし、もし金融機関が背中を押してくれたらどうだろう?
 愛知県名古屋市の中小企業金融公庫名古屋支店では、2004年春から、取引先経営者にITを活用した経営改革を積極的に呼びかけている。IT関連イベントや経営者研修会を案内し、ITコーディネータとのマッチングの機会を増やしているのだ。
 金融機関からの「IT経営のススメ」は経営者の迷いを行動に変える触媒となった。

ITフェア、研修会に過去最高の参加者が

 2004年6月に名古屋で開催された中小企業IT化推進フェア。その講演会場には450名もの参加者が集まった。IT系のイベントでは全国でも珍しい来場者数だ。会場では名古屋ソフトウェアセンター内のITコーディネータ組織「NSC―ITCC」のメンバーが講演や個別相談会を実施、相談会に参加した10企業のうちの3社が具体的なコンサルティング契約に至った。現在、情報化による経営改革に取り組み中だという。
 また、その後に同組織のメンバーが実施したITSSP事業の経営者研修会(本年度からはIT経営応援隊の経営者研修会)には、定員の20名を上回る参加希望者があった。いずれも「IT投資に対する意識の高い経営者の方々に来ていただいた」とNSC―ITCC事務局長の江坂昭氏は言う。
 確かに、人数だけ多くても興味の薄い人ばかりでは、マッチングもうまくいかない。意欲ある経営者が足を運んだ背景には、中小企業金融公庫名古屋支店の働きかけがあった。しかし、IT経営への潜在ニーズをどうやってキャッチできたのだろうか。

企業との信頼関係がIT化支援に結びつく

  大野晴久支店長の言葉の中にその秘密があった。
 「私どもでは担当者それぞれが70から100社の企業を受け持ち、頻繁に訪問して経営者の方とざっくばらんにお話をさせていただいております。意思疎通による信頼関係が、お取引のベースにあります」
 フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションを重ね、取引先と深く知り合う中で、ITに対する興味を引き出し、参加意欲を高めたのだ。企業を訪問する担当者には説明会を実施し、IT経営やITコーディネータについての理解を深めたという。
 また、ITフェアの案内にあたっては、定期的に実施しているアンケートにITに関する質問項目を設けIT活用に関心を持つ企業を事前に把握するなど、準備も念入りに行った。
 「お客様の悩み事を伺って、分野ごとに解決の入口にお連れするのも私どもの仕事だと考えています。その先は専門家にバトンタッチ。ITの課題であれば、ITコーディネータへとなるわけです」
 同支店の野田祐司融資総括副長は融資先企業への「人」や「情報」の紹介も金融機関の役目だと言う。
 融資先企業のメリットを追求した結果のITコーディネータとのマッチング。つまり、それだけITコーディネータへの期待も高いということだ。
 これらの出会いを生かして数件の企業と顧問契約を結んでいるITコーディネータの水口和美氏は、1年を振り返り「経営者研修会では経営者やCIO、経営幹部の方がグループになり、具体的に討議を進めていますが、他社や別のポジションの方の意見を聞くことでさまざまな「気づき」が生まれます。今後は、機会をさらに増やすとともに、きちんと成果を出していくのが我々の使命です」と力強く語った。
 企業、金融機関、ITコーディネータそれぞれに利益がもたらされるWIN―WINのモデルが、ここ名古屋では生まれつつある。

「企業経営にとってITとは?」
中小企業金融公庫名古屋支店
大野晴久 支店長に聞く

 ITが言われ始めて約10年。長い歴史があるわけではありません。最初のころは中小企業サイドでは「ITはまだ関係ない」という状況でしたが、発注側はどんどんインターネットを通じて依頼をしてくる。もう、ITなしでは仕事にならなくなりました。中小企業がITを使うのは当然、そうでもしなければ厳しい環境で生き残ることはできないでしょう。
 しかし、IT活用は受発注にとどまらず、自社の経営に用いるとどうなるかという発想で捉えていただきたいものです。経営者はもとより経営陣全体、できれば課長クラスまで意識改革が必要ではないかと思います。
 個別の企業が具体的に何をするかという段階では、ITコーディネータの役割は大きい。ITは工場の機械と違ってどうやって動いているか見えにくいという性質上、特に専門家のサポートは有効です。
 幸い、この地域は勉強熱心で意欲の高い経営者の方が多い土地柄です。お客様の「成果」を皆様にお伝えすることで輪を広げ、愛知県全体の発展に寄与したいと思っております。
 やはり一度はセミナーや経営者研修会に参加を。まず行ってみないと始まりません。

ITコーディネータ紹介

 ITコーディネータとして自立的なビジネスを展開。江坂氏は愛知県中小企業振興公社、サブマネージャーの顔も持つ。水口氏は株式会社ARUの経営者でもあり、またIT経営応援隊の教科書作成ワーキンググループメンバーとしても活躍中(6月に発表されたIT経営教科書β版には水口氏がコンサルティングを行っている大津鉄工の事例が掲載されている)。
 企業と個別契約を結びコンサルティングを担当する際には人材育成、特に幹部研修を実施するケースが多いという。「幹部がいっせいに育つと会社のレベルが上がる。人間系はすぐ効果が出る」(江坂氏)との理由からだ。企業の課題に沿った個別の研修セミナーを実施できるところが、NSCITCCメンバーの強みと言えそうだ。
 2005年6月8日に開催された「IT経営応援隊in名古屋」では、これまでの取り組みを紹介する講演会が開かれ、大盛況だった。
 大野支店長は「ITコーディネータはITと経営の両方に強い人材ですが、特に経営に強くないと経営者に受け入れてもらえません。その点すばらしい方々」と両氏の活動を評価している。

名古屋ソフトウェアセンター
NSC-ITCC
江坂 昭 氏(写真右)と
水口 和美 氏

URL:http://www.nagoyasc.co.jp/



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2010.07.01
統一規格のない3次元CADに一工夫
経営分析通じオープン経営の基盤づくり



株式会社サンワテクノス
所在地 広島県呉市築地待ち6-5
設立 昭和38 年
従業員 71 名
事業内容 プラント配管の設計・製作、圧力容器の設計・製作、CAD/CAMシステムの開発・販売。
URL http://www1.odn.ne.jp/sanwatechnos/
     
     
                              ↑代表取締役社長 長行事義人氏(左)
                                 プラント事業部 松井 俊二 氏
                                 CIM推進グループリーダー

  5000平方メートル近い工場で火力発電所や原子力発電所の配管を設計・製作―広島県呉市のサンワテクノスはスケールの大きいものづくりに携わる企業だ。
  「ものづくりの会社がコンピューターというとまずCAD。人をサポートするより機械をサポートするほうに意識が向きますね。私が社長に就任した平成13年以前からサーバーを入れてLANも敷いていましたが、仏作って魂入れず状態と言いますか......」
  サンワテクノスの長行事義人社長は、業界が3次元CADへシフトする流れを受け、自社の対応姿勢を検討していた。さらに社内の改革を目指してERPソフトを導入したいという思いを抱き、4年ほど前、ITSSP事業の経営者研修会に参加した。
  ところが予想外の展開に。
  「IT成熟度の診断を受けて、がっくりきました。LANも入っているし、そこそこと思っていましたが最終図面が手書きだとIT化しているとはいえないとの診断でした」(長行事社長)
  さらに、導入を企画していたERPソフト(予定費用500万円)の話を持ち出すと、担当のITコーディネータ(ITC)石川敬三氏から「外の標準を当てはめるだけでは業務は変わらない。まず業務の全体像を掴んでフローを作りましょう」との指摘を受けた。
  懸案の3次元CADについては、取引先が使用しているシステムに互換性がなく一つの方式を選ぶことができない。一方、すべてに対応できるシステムを構築すると費用が高騰してしまう。よってもう少し時期を見て対応することにした。
  CAD、ERPといったシステム導入を一旦保留し、受注から設計・製造までのトータルな業務フロー作成を第一目標としたのである。


ITを入れる前に
業務の全体像を描く


 同社でコンピューターの管理やシステム運用を担当し、研修会にも足を運んだ松井俊二氏は述懐する。
  「それまで社内では各部門で書類を作成して次の部門に渡していましたが、書式や項目の名称などがバラバラでした。そこで、担当者に集まっていただき、約1年かけてルール作りをしました」
  各部署が独自で作成している書類もルールをそろえてデータでやり取りすれば、入力工数やミスが減り、また意思疎通もスムーズになる。同社は従業員の参加によって現状を洗い出し、会社全体の業務フロー図を完成させた。
  本プロジェクトは、社長命令で、「担当者は他の仕事に優先してこれを行う」と徹底。これはプロジェクトをやり抜く原動力となったと同時にもう一つの効果も生んだ。
  それは、長行事社長が方針として挙げる「オープンな経営」を実現する基礎づくりだ。
  「仕事をブラックボックスにせず、透明で皆が状況を理解できる会社にしたい。私のこうした考えを示すチャンスでもありました」(長行事社長)
  従業員が参加して自ら考える機会を通して、会社の方針が徐々に理解され始めたのだ。IT活用の前に行う自社の業務分析は、社員が「新しい会社」を肌で感じる絶好の場ともなるのだ。

3次元CAD問題には
発想を転換してチャレンジ


 こうして立案した業務フローと社内システムだったが、大掛かりな仕様となったため、導入は中期的なスパンで検討することに。
  優先すべきは本業の設計を効率化するCADシステムとの判断で、まずは、3次元CADシステムに取り組んだ。
  以前とは発想を変え、「お客様からは2次元CADのデータをいただき、そこから3次元のデータを自動生成するシステム」(松井氏)に挑戦。3次元データをそのまま受け取るには対応ソフトが必要になるが、一旦2次元で受け取り、その後に3次元に変換できれば取引先のデータを活かすことができる。
  本システムのサポートを行ったITC白石英雄氏は「社内で一番時間を要しているのは設計。ここを短縮すれば生産性が高まり受注量も増やせる。会社全体が良くなっていくはずです」とシステムのねらいを解説する。
  開発にあたってはバブ日立プラントシステムズというパートナーを得て、無事システムも完成。他社から一歩抜きん出るシステムが成果を見せることで、オープン経営の担い手となりつつある従業員の意識も、さらに高まることだろう。


ITコーディネータ紹介

 2002 年広島に在住していたITC 中四国倶楽部の古家後啓太氏が、ITSSP 事業実施にあたりメンバーに参加を呼びかけたことがきっかけで、長行事社長は本事業に参加。直接的には広島県中小企業家同友会呉支部の経営者から紹介を受けたそうだ。
  ITC 石川敬三氏は、ITSSP 事業を通じて、サンワテクノスの業務フローの洗い出しおよび整理の部分をフォロー。自社のIT 成熟度は高いと考えていた長行事社長に「業務の結果がデータ化されなければITを上手に活用しているとはいえない」と厳しい指摘をしつつ、同社の実情を踏まえたIT の導入ステップを指南した。
  一方、2 次元CADを活用した簡易型3 次元CADシステム構築に向け、IT 活用型経営革新モデル事業への申請およびシステム構築をサポートしたのがITC 白石英雄氏だ。無事モデル事業の採択を受け、システム構築費用の2 分の1 にあたる補助金が支給された。
  製造業の業務システムに強い石川氏、システム構築や補助金の申請に詳しい白石氏と、適材適所でうまく役割分担した例だ。

オーディット有限会社
石川敬三 氏(右)
株式会社コア
白石英雄 氏



<ITCを活用していかがでしたか?>

 ITコーディネータは「それぞれが得意分野を持つ家庭教師」のようなものだと思います。独学でシステムを構築するのとポイントを教わりながら進めるのとでは結果に格段にの差が出ます。どんなシステムが欲しいかというベンダー向けの提案依頼書(RFP)はITCコーディネータなしでは書けなかったと思います。社内にシステムの専門家を置くのはお金もかかるし、その人が持っている世界に限定されてしまいますから。(長行事社長 談)


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2010.07.01
一歩先行く組合のIT活用・建設鉄工協同組合
同業者間で「手の内」を明かす!? ブランド確立は結束力から




福井県建設鉄工協同組合
所在地 福井県福井市林町62-5
組織形態 同業種同志型組合
組合員数 78 社
設立 昭和41 年
代表理事 岡本征雄
業種等 建設用・建築用金属製品(主に鉄骨)製造に携わる企業の集まり。
特色 総務財務、共同受注、経営企画、技術広報、外国人雇用の5 つの委員会をもつ。事務所を所有していることもあり委員会活動が活発で組合企業間の意思疎通が図られている。


福井県建設鉄工協同組合の
IT化推進プロジェクトメンバー

写真右から順に、
副理事長・宮川隆治氏
(フクモク工業・社長)
理事・福岡武幸氏(福岡・社長)
事務局長・水野日出雄氏

IT活用 平成12 年には組合事務局にインターネットを導入。翌年からIT 化推進活動を展開、Eメールによる組合行事案内も開始した。平成17 年3 月現在の調査で、全組合員のうちインターネット接続率は83%。
URL http://www.fukui30000t.com/
一般公開している組合のホームページ「てっこつ一家3 万トン」組合各社の紹介機能も果たしている。

足の引っ張り合いより、総受注量アップを

インターネットの検索エンジンに「てっこつ一家」とキーワードを入れて検索すると、「てっこつ一家3万トン―全国に誇る月総生産3万トン」とキャッチフレーズがついたWebサイトにたどり着く。福井県建設鉄工協同組合のホームページだ。企業紹介が充実し、「鉄工」「組合」という言葉からイメージする堅さを感じさせない雰囲気は、本組合の活動状況そのままを映し出している。
同業者の組合は協調しつつもけん制し合う面がある。一つの意思を持って活動するのは簡単ではないはずだ。にもかかわらずWebサイトから伺えるように、福井県建設鉄工協同組合は、78社ある組合員企業が結束力をもって協力し合う体制を整えている。
2005年度はホームページの戦略的活用に加えて、組合内で企業の作業状況を公開し受発注を行うシステム「てっこつ一家求援隊」を開発。自社の生産量を上回る受注を受けた企業が、生産力に余裕を持つ企業を探し応援を求められるようにするマッチングツールだ。
応援を求めるなら、競合する近隣の同業者より、商圏が異なる企業に声をかける方が自然な気がする。同組合は、なぜ県内企業どうしの受発注システムを必要としたのだろうか。
「以前は県内の仕事だけだったが、現在は70%が県外の仕事になっている」
IT活用推進メンバーの一人である組合副理事長・宮川隆治氏の言葉にそのヒントがある。
建設鉄工とは、建築物の骨格となる鉄骨を加工し現場で建てること。建築物の根幹を支えるゆえ高い品質が求められ、取り扱う鉄骨のグレードによる工場認定制度が整備されている。「建設」と冠がついているが製造業としての色合いも強いのだ。
バブル期を過ぎると建築ブームも落ち着き、建設鉄工業界では倒産や廃業が増え出した。福井県内でも需要と供給のバランスがくずれ始める。
しかし、事態に直面した同組合の企業は、県内需要を奪い合うことをしなかった。首都圏など他県の取引先を開拓。そして協力して供給力を高め、より多くの受注を目指そうと考えたのだった。
組合理事の福岡武幸氏はこの様子を「一社のキャパシティを超えた仕事を依頼されても県内でまかなえる。こうすれば県内の総受注量は増え、個々の企業の工場稼働率も上がる。足の引っ張り合いではなく仲間作りで仕事を獲得している」と表現する。同業者が多いことを逆手に取ったうまい戦略だ。

同業者間での仕事情報の共有。電話、FAXでは限界が...

こうして仕事の受注状況に応じて、親しい同業者に電話やFAXで仕事の打診をすることが日常化した。もし親しい企業間だけでなく組合員78社にネットワークを広げられれば競争力はさらに増す。しかし、適切な方法はなかなか見つけられなかった。
2年ほど前、同組合の事務局長からこの悩みを聞いた福井県中小企業団体中央会の間宮務氏は、課題解決にはITの活用が有効と考え、ITSSP事業(現在のIT経営応援隊)やITコーディネータの存在を紹介。それがホームページ(受注量増)と組合内システム(供給量増)の二面からなるIT活用プロジェクトへと結実していった。
福岡理事は言う。「目標は、鉄骨を福井のブランドにすること。それには十分なキャパシティも条件となるので、二つのシステムが必要だった」
主旨はシステムのネーミングにも反映されている。同組合事務局長の水野日出雄氏によると「巨大なバーチャルカンパニーであることを示すために、そして現在の県内鉄骨生産量2万トンを3万トンに増やすことを目標として「てっこつ一家3万トン」とキャッチコピーをつけた」のだそうだ。

ITCのアドバイスでWebベースの企業間情報共有システムを構築

システムの構築にあたり、栃川昌文氏、橋脇典子氏の2名のITコーディネータがサポートを担当。栃川氏は、「第一回目の会議に参加して熱意の強さを感じた。要望を整理して使いこなせるシステム提案依頼書にまとめることを心がけた」と振り返る。
組合のWebサイトに関しては、各社それぞれの企業がインターネットを通じて簡単に更新できる方法を導入。受発注システムもWebベースで開発し、各社が仕事受注状況を入力してデータを蓄積する仕組みとした。
電話やFAXを使っていた時に比べ、より広い企業から即座に協力者を探しだせるようになった。
宮川副理事長は「手の内を明かすシステムですから、互いの信頼関係がなければできない。すでにそうした関係が成り立っているので実現できた」と分析するが、この点は企業内でシステムを導入する場合も同じだ。明確な目標設定と風土醸成がなされてこそ、ツールが生きてくるに違いない。
心配される点として挙げられるのは、78社がきちんとシステムを活用できるかどうかだが、同組合は、組合内のIT導入も早く、会員企業へのパソコン操作指導なども積極的に行ってきた。「福井の人間は新しもの好きだし、業務の性格上パソコンを使うことへの抵抗も少ない。今後はきちんと時間をかけてデータが集まる習慣を作っていきたい」(福岡理事)とのことだ。3万トンの鉄骨受注が実現する日は遠からず訪れるに違いない。

コラム ~地域を支えるIT化のプロデューサー~

福井県建設鉄工組合がWebを活用した受発注強化に取り組むきっかけを作ったのは、福井県中小企業団体中央会の間宮務振興課長とITコーディネータ(ITC)の先織久恒氏だ。
間宮氏は日ごろから地域の専門家との情報交換を行い、IT経営応援隊事業やITコーディネータなどの存在や意義も理解していた。
同組合の課題はIT化で解決できるとの判断で、ITC先織氏が理事長を務めるNPO法人・福井県情報化支援協会主催のITSSP事業(IT経営応援隊の前身)への参加を助言。ITCと組合とのマッチング、そしてIT化の実行をサポートした。
間宮氏は「課題を解決する手段として使えるならITを入れるべき。最後は意思決定に役立つかどうかが判断ポイントだと思う」と言う。
すでに県内の和紙協同組合へのIT化支援実績を持つ先織氏は、本事例では直接的な支援の立場ではなく、広く組合とITCとの関係強化を支えた。
「組合の活動で意識が高まれば、個々の企業がIT化に踏み出す契機にもなりうる」(先織氏)
ITC側のビジネスを発展させる意味でも、組合支援は重要ポイントになっているとのことだ。
地域のIT化推進には、こうしたキーパーソンの活躍が不可欠といえそうだ。


福井県中小企業団体中央会振興課
  課長 間宮務氏


NPO法人 福井県情報化支援協会
理事長 先織久恒氏

ITコーディネータ紹介

福井県で活躍するITコーディネータ。福井県のITCは、先織氏が先頭にたって基盤作りを行い、各ITCが場面に応じて持ち味を発揮するというコンビネーションに優れる。
組合のような組織体のコンサルティングでは、一般に意見のとりまとめが難しいといわれる。栃川氏と橋脇氏はプロジェクトメンバーの考えを言葉で整理し、仕上がりイメージを提示して合意を得ることに心がけた。ホームページ制作においては、組合企業に参加するメリットを理解してもらうことにも力を注いだという。
ITコーディネータ
NPO 法人 福井県情報化支援協会
URL:http://www.itc-fukui.jp/

有限会社ビジネスアイ
栃川昌文氏

有限会社ブリッジ
橋脇典子氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
「物を作るには図面、設計書が必要ですが、ITもそのとおりだと感じます。ベンダーに依頼した後に大幅な変更が発生することもなくスムーズでした」(水野事務局長)
「本プロジェクトを仮に組合内だけで進めていたらいろいろな意見を整理しきれず、頓挫したかもしれません。専門知識はもちろん、人格的にも良いITコーディネータの方に担当していただき、満足しています」(宮川副理事長)

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2010.07.01
顧客データ活用に挑む  お客様は今、何を注文した?レジを変えたら店舗が見えてきた
兵庫県高砂市 飲食業 入船の場合




株式会社 入船
所在地 兵庫県高砂市高砂町横町1033
創業 大正5年
資本金 1,000万円
代表 代表取締役 入江祥浩
事業内容 一般給食、委託給食、仕出し、レストラン(わっさ、ごちそう村、炭火焼肉いこる家など17店舗)
URL http://www.irifunet.com/
      入船 レストラン事業部 企画課長
      安木 一正 氏
    店舗風景
↑レジ風景。 このデータはインターネットを経由してサーバーに蓄積。適宜、本社のパソコンから店内の状況をリアルタイムに確認できる。 ↑オーダーはPDAに入力。 メニューを選ぶだけなので、スタッフは難なく使いこなしている。店内の通信は無線LANを利用。社内では入力した情報を時間単位やメニュー単位で分析して活用中。


店舗の販促効果、どうすればわかる?

神戸・元町駅前にある炭焼居酒屋「わっさ」は、手作り料理と落ち着いた照明や堀炬燵式の和風座席が、訪れた人をゆったりとした気持ちにさせる店だ。
店舗内では、「ちょっと意外」なものを目にすることができる。
お酒や料理を注文する。そのときスタッフが手にしているのは紙の伝票ではなく、携帯情報端末・PDAだ。タッチペンを動かして手馴れた操作で注文を取っていく。そして料理と空間を楽しみ会計に向かうと、レジにはなぜかパソコンが置いてある...。
同店を運営する入船(兵庫県高砂市)は兵庫県内に17の直営店舗を展開。「食の喜びの創造」を経営理念とし、多様な顧客ニーズに対応した店舗作りを行っている。
飲食店には来店を促す販売促進が欠かせない。同社ではレストラン事業部企画課長の安木一正氏が責任者となり、クーポン券をつけたチラシや雑誌広告など様々な宣伝活動を実行。その過程で、安木氏は「販促してもデータがすぐ取れず翌日でないと結果がわからない。しかも手計算で、正確性にも疑問がある。何とかならないか...」と考えていた。

中小企業支援センターを入口に、ITCの地域コミュニティと出会う

安木氏は財団法人ひょうご産業活性化センターの専門家派遣制度を利用し、ITコーディネータ(ITC)のアドバイスを受ける。そこでは、自社の方針に則ったPOSシステム作りがポイントとされた。
安木氏は、アドバイスを受けたITCが所属する地域コミュニティ「まいど! フォーラム」のメンバーと交流を深めつつ、具体的なシステムを探し始める。しかし価格も含めて今のレジメーカーには希望に沿うものがない。そんなときに、同フォーラムのメンバーであるITC永田祥造氏から、自身が経営するシステム会社「エムトーン」が提供するASPサービスの無料試用の提案を受けた。
本サービスはパソコンにレジ機能を持たせ、入力した情報をインターネットを経由してエムトーンが運営するサーバー上に保管し、活用するというものだ。店舗側はパソコンとインターネット設備があれば始められ、また必要に応じたカスタマイズができる。

ASPを試して効果を実感 そしてさらに詳細データを

試験的に利用した結果「パソコンならではのカスタマイズのしやすさ」を実感。初期費用は格段に安いし操作性も問題なかった。そこで安木氏は考える。
「これならもっと詳細なデータも取れるのではないか。新メニューの滑り出しはどうか、単品別オーダーランキングはどうか、チラシを見て来店した方は何組か...」
入船は、2005年春より、同フォーラムのITC太田垣博嗣氏、中川普巳重氏らの協力を得て本格的なカスタマイズに取り掛かった。
この時点でシステムの焦点は、POSを超え始める。POSは精算時、つまり顧客が帰ったあとのデータだ。それ以前、顧客が入店してから帰るまでの90分のリアルな情報を取りたい。そこで、スタッフが注文時にオーダー情報をPDAに入力して、その情報を活用する「POO(Point Of Order)システム」が企画された。
「店舗ごとの来店者数やオーダー内容が本社で瞬時に把握でき、対応策が取れる。また、得られたデータは、最適な座席配置など店舗経営にも活かせる」とITC太田垣氏は説明する。
販売管理を超えて、店舗内の顧客の動向をリアルタイムに伝えるシステムへ。こうした進化は、「システムを試しながら使う」というステップがあってこそ生まれたものだ。安木氏は、「店舗運営担当部門がデータを元に時間帯でスタッフのシフトを変えたり、商品企画のチェックが細かくなったりしている」と社内の変化を説明する。現在では、混雑している店舗がすぐわかるので、本部からヘルプに入るのもスムーズになった。
今後は、スタッフが持つPDA端末を使った顧客サービスの充実を考えていきたいとのことである。。


サポーター紹介 ITコーディネータ

ITコーディネータ(ITC)の有志による勉強会を発端として形成された組織「まいど! フォーラム」のメンバー。同フォーラムでは、ITコーディネータの基本手法「プロセスガイドライン」を活かしつつも、中小規模企業のIT化においては、体感からスタートし仮説→検証サイクルを積み重ねる「検証ユニット」が有効と考え、実証研究を進めている。
今回の入船の事例では、安木氏の課題意識をフォーラムのメンバーそれぞれがポジションを活かしてサポートした。大きな役割分担でいうと、公的な支援制度の紹介やサポートが中川氏、POOシステム導入に関わるコンサルティングが太田垣氏、本システムのITベンダーが永田氏である。
太田垣氏がユーザー側のITC、永田氏がITベンダーの立場として仕事をする場面では、公平性が失われないよう配慮。「どのITCやITベンダーにするかはすべて入船さんに選択していただいた。また、打合せで太田垣氏と永田氏が同席することはなく、入船さんが自由に意見を言えるようにしていた」(中川氏)とのことだ。

まいど! フォー ラム 代表
太田垣博嗣 氏
http://www.ekimae-it.com/

京都リサーチーパーク
EBSセンター 所長
中川普巳重 氏
http://www.krp.co.jp/ebs/

エムトーン  代 表取締役
永田祥造 氏
http://www.m-tone.co.jp/
     


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
ベンダーを含めた3名のITCが地域コミュニティを形成しながら、具体的なIT活用を支援。企業とITCが対峙するというより、納得を得ながら背中を押すという進め方だ。
安木氏は「ITコーディネータの方にいろいろ励ましていただき良いアドバイスをもらっている。またASPで0円からスタートする方法などは自分だけでは到達できなかった」とその成果を語っている。

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2010.07.01

取引先の要望に応え、選ばれる会社に!
欲しいのは生産の現状を把握できる仕組み


池田工業株式会社
所在地 愛知県刈谷市宝町2-3-7
創業 昭和28 年
売上高 19 億円
従業員 75 名
事業内容 カーエアコン部品、フォークリフト部品、繊維機械部品の製造。豊田自動織機を主要取引先とする。
URL http://www.ikeda-ind.co.jp
代表取締役社長 池田 裕幸 氏
     
       



 「世界のトヨタ」のルーツ企業である株式会社豊田自動織機。同社の愛知県刈谷市の本社・工場敷地向かいに立っているのが、池田工業の工場だ。
  豊田自動織機から独立した祖父が始めた事業を、父が会社として設立・発展。現在も豊田自動織機を主要取引先に、カーエアコン部品やフォークリフト部品の切削加工を営んでいる。
  2003年に社長となった池田裕幸社長が心がけているのは「時代に合った経営」だ。「お客様のニーズや働く人の意識の変化をしっかり捉え、お客様も従業員も満足できる会社にしていく」ことを指向している。

課題は生産管理
しかしその前にすべきことが


 社内業務において気になっていたのは生産管理、特に納期面の管理だ。トヨタグループは、有名な「かんばん方式」により、無駄な在庫を持たず、後工程が前工程に対して必要な部品を発注する仕組みをとっている。池田工業へは、事前に内示があった後、「かんばん」が来るが、このデータを社内でどう取り込み、実際の生産計画と連携させていくかが課題となっていた。受注は電子データで受けるものの(EDI)、社内の生産状況は人による管理が中心だったからである。
  池田社長はITを活用した生産管理を実現したいと考えたが、良い方法が見出せないでいた。
  思案していた2004年の夏、中小企業金融公庫名古屋支店から、IT経営応援隊の経営者研修会を紹介される。
  「経営者の研修会でなおかつITでしたから、これは良いと。しかも無料なのは珍しいですし」
  研修では、ITが先ではなく経営面が大切だということを再認識。他社の経営者と議論を交わすスタイルに少し戸惑ったものの、研修が進むうちに同じような悩みを抱えている企業が多いことがわかり、有意義だったという。
  ここで学んだことを具体的に実行しようと、講師を務めたITコーディネータ(ITC)の水口和美氏に社内研修(マネジメント研修)とコンサルティングを依頼、引き続いて中小企業基盤整備機構・中部支部の経営支援アドバイザー(専門家継続派遣事業)の支援を受けてIT導入コンサルティングを依頼し、2007年の新システム構築を目指すこととなった。
  水口氏が池田工業でまず実施したのは「意識改革を目的としたリーダー研修」だった。水口氏は、企業が改革に成功するためには、まず従業員の意欲・意識が大切だと考えている。
  同社では「技術」「品質」「IT」の3つのプロジェクトを立ち上げ、社員自身が現状分析から解決策の提案、目標の設定を行った。

事業拡大を目指すから
システムが必要


 このうち、IT面=生産管理システムが目標とするのは数千点におよぶ製品の製造の進捗状況をコンピューター上で管理し、納期や在庫の問い合せにすぐに対応できること。同時に無駄な事務作業を削減し、新しい仕事の創造に時間を使える体制を目指す。
  ITC水口氏は「仕事量が増加したときや、イレギュラーな事態にも迅速に対応できるよう、社長のパソコンから会社の現状が見えるようにする」と説明する。
  内示↓かんばんという独自スタイルに対応するパッケージソフトが見つからず苦慮したが、水口氏の奔走でめどは立った。今後は細部の仕様検討に入る。
  池田社長が思い切ったシステム構築に踏み切った背景には、次のような思いがある。
  「まず、常に努力をしてお客様に選ばれる会社であること。将来は自分たちが考えた商品を世に出してお客様に喜んでいただけるとなお良い」
  現状に甘んじることなく、ものづくりの喜びをさらに追求するために、池田工業は新しいシステム導入に取り組んでいるのだ。

コラム 中部地区の中小企業に経営改革の機会を提供
中小企業金融公庫 名古屋支店

 池田社長はIT 経営応援隊の経営者研修会に参加し、ITコーディネータ水口氏との出会いやIT 活用に踏み切る機会を得た。
  名古屋地区そして中部地区の経営者にこうした研修会への参加を積極的に呼びかけているキー機関が中小企業金融公庫名古屋支店である。
  「この地域は堅実でローコスト経営を実現している企業が多く頼もしい。今はスピード経営の時代ですから、在庫、出荷など経営者が自社の実態を把握していることが大前提になりました。となれば、ITを駆使するのは必然です」と熊田善三郎支店長は地域企業を激励する。
  政府系金融機関である中小企業金融公庫は、国家施策の流れを汲み中小企業を支援することが使命だ。「融資はもちろんですが、全国規模で収集される経営改革事例のご提供や、コンサルティングなど、幅広いご支援を行っています」という野田祐司副長の言葉どおり、担当職員は企業訪問の際に、常に企業が抱える課題を掴むよう心がけているという。
  その中で、専門家による具体的なコンサルティングが有効と思われる場合には橋渡しを行っており、IT に関連しそうな課題を持つ意欲ある企業には経営者研修会への参加を薦めている。
  名古屋地区では昨年経営者研修会が3コース開催されたが、いずれも満席。池田工業のように個別のコンサルティング契約に至る会社も見られた。
  ただ、紹介する以上、研修会の内容が満足できるものでなければ、融資先企業からの評価は下がってしまう。この点については、「国の推進事業であるIT 経営応援隊であること、名古屋ソフトウェアセンターという信頼できる機関が主催していることで自信を持って推薦できる。そして、ITコーディネータ水口和美さんのように、親身に経営者の立場に立ってコンサルティングができる人材の存在が大きい」(野田副長)と説明する。
  熊田支店長は地域の経営者に向け、「経営者は立場上、独りよがりになりやすい面を持ちますが、私どもは今後も良き相談相手でありたいと考えています。IT に関してはリスクマネジメント、セキュリティの部分も忘れずに取り組んでください」とメッセージを送る。
                
 熊田 善三郎 支店長(左)    野田祐司 副長

ITコーディネータ紹介

  水口氏が経営するコンサルテーションファーム・ARU は名古屋ソフトウェアセンター内にオフィスを構える。別会社ではあるが名古屋ソフトウェアセンターのコンサルティング組織に近い活動形態を取り、中小企業金融公庫や依頼先企業から安心感を得る一つの要因となっている。
  水口氏の経営者研修会は「迫力にあふれる」ことで定評がある。名古屋ソフトウェアセンターの高嶋雅樹専務も「企業の経営を改善したいという熱意が伝わってくる。水口さんを頼ってセンターに相談に訪れる企業も多い」という。
  名古屋地区の経営者研修会はすぐに満席になる好評ぶりだが、高嶋専務は「中小企業金融公庫の皆様のお力で経営者研修会が広まってきたが、この良さをもっとアピールし、地域企業のご支援を進めたい」と気を引き締めている。
IT名古屋ソフトウェアセンター
代表取締役専務
高嶋雅樹 氏(左)
http://www.nagoya-sc.co.jp
 
株式会社ARU 代表取締役
ITコーディネータ
水口和美 氏
http://www.aruinc.jp/



<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
 経営者研修会の後、水口先生のセミナーを聴講したり、何度かお話する機会がありました。研修会で学んだことを実践に移すにはどうしたらよいか思案していたときに、幹部研修のご提案を受けましたのです。社内から多くの参加希望者があり、内容的にもとても良い研修会でした。それから、継続的ご指導いただいています。
  ITというとその部分ばかりに目が行きますが、今回、経営全体を見てITを道具として使うアドバイスをいただける方に初めて出会うことができました。信頼を持ってご指導いただいています。他の経営者の方にもお勧めしたいですね。(池田社長 談)


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2010.07.01
二代目社長がITコーディネータとともに目指す経営改革①経営戦略立案中
第三者との議論がとまどいを自信に変えた 事業計画立案で新体制を出航


有限会社松浦製作所
所在地 東京都大田区南蒲田2-25-16
資本金 300 万円
設立 昭和40 年(創立は昭和15 年)
従業員 8 名
事業内容 精密機械部品。試作機や特注機部品の単品受注製作製造。現在は微細加工に意欲的に取り組んでいる。
URL http://www.e-matsuura.co.jp/
代表取締役社長 松浦貴之 氏
  平成17 年に社長に。年齢は社内で一番若い。近隣には同世代の経営者も増えており、ビジネス面での協力体制はもちろん交流も活発とのこと。
     
       



 「社長って、何でも自分で思ったことを決断できるんだ、良い意味で好きにやっていいんだなと、前向きな面がどんどん見えてきました。初めは全責任があるというプレッシャーの方が大きくて...」
  松浦製作所の松浦貴之社長は2005年秋に経営を受け継ぎ、まもなく1年。この数カ月に手ごたえを得たようだ。
  試作機や特注機器に用いられる部品、大量生産ではなくオーダーメードによる一品ものの精密機械部品が同社の主事業。大量生産品が「安い」「早い」を求められるのを横目に、付加価値の高い仕事を確実にこなす経営にシフトしてきた。
  数年前から社長になる心構えはできていたとはいえ、それまでは現場で工場長的にものづくりに携わっていた。「そろそろ経理面や経営の勉強をしなければと思っていた段階で、準備不足」(松浦社長)な状態で社長に就任。
  責任の重さを感じ、何から手をつけようかと思案していたちょうどその頃、幸運なことにITコーディネータ(ITC)の支援を受ける機会を得た。第三者の客観的な眼を持つことで、新社長としての現状把握や経営方針策定が円滑に進み始めた。

「話すこと」からスタート
有効だったITCのサポート


 松浦社長は、まず率直に自分の思いを話すことから始めた。
  担当となったITコーディネータの小野敏夫氏は、SWOT分析(企業の現状を強み、弱み、機会、脅威の4つの視点で把握する分析手法)などを用いながら、「どこに経営課題があり、これから何を重点的に行っていけばよいかを一緒に考え整理し、社長ご自身が方向付けできるようにした」。ここで現状把握を行い、次の事業計画策定へつなげていこうというものだ。
  具体的な事業計画の立案には、まず、会社の経営数値への理解が必要だ。そこで工作機械の稼働率なども考慮して、収支のシミュレーションを行った。
  一方で、市場環境―対象となる顧客と顧客が求める技術―を検討し、松浦製作所の技術を、今後どのような方向に発展させていくべきか事業計画書としてまとめている。
  こうしたプロセスによって、松浦社長は社長として数値で事業を捉える目を養い、また、今後、ものづくりで自社はどの分野を究めていくべきかが見えてきたという。

積極的なアピールと
社内コミュニケーションも


 これらを踏まえて、松浦社長は「今後は微細加工に力を入れ、納品が自転車で行えるような会社を目指したい」と決意を新たにした。
  同社は30ミクロン(100分の3ミリ)のドリルで部品に穴を開けることに成功。肉眼ではほとんど見えないミクロの世界であり、この技術は取引先の製品づくりに革新をもたらす。ただ、取引先はこれほど微細の穴が開くことを知らないケースも多いので、自らアピールし、新しい受注を獲得する姿勢が求められる。
  「依頼を受けた仕事をきちんとこなしつつ、こうした技術を使った提案を積極的に行っていきたい」と次のアクションは明快だ。
  そして経営方針について、松浦社長はもう一つ付け加えた。
  「自分一人で技術を追求しても限界があります。皆で同じ方向を向いて進めるよう、社員とのコミュニケーションを重視していきたい」
  卓越した技術とコミュニケーションが新体制の柱といえそうだ。
  いずれ同社にも若い社員が入社してくることだろう。新しく醸成された風土によって、「ものづくりは奥深く、面白い」と目を輝かせられる社員が増えていくことを期待したい。

コラム ITコーディネータとの橋渡し
――大田区産業振興協会 &ITC カンファレンス


 松浦製作所がITコーディネータを活用したのは、2005年秋のITCカンファレンス(ITコーディネータ協会が主催するITコーディネータ向け総合セミナーイベント)のプロジェクトがきっかけ。
  同カンファレンスにおいて、財団法人大田区産業振興協会の協力のもと、「日本のものづくりを支える大田区の製造業企業の成長・発展にITコーディネータがお役に立とう」というコンセプトで地域企業を訪問。希望企業に具体的なコンサルティング支援を行い、成果を出すことをねらいとした。支援先候補企業の一つが松浦製作所だった。
  話を持ちかけられたのが、ちょうど当時の松浦貴之専務が社長に就任するタイミング。
  「困っていることを教えて欲しい」と言われ、松浦社長は「何が困っているかもわからず困っている。いろいろ教えて欲しい」と答え、コンサルティング支援を受けることにしたという。

ITコーディネータ紹介

 ITCカンファレンスまでのコンサルティング支援は無料で行ったが、その後も、IT 推進アドバイス事業や大田区産業振興協会のビジネスサポート事業の支援制度を活用し、有料コンサルティングを行っている。
  IT の活用に関しては、用松氏がパッケージソフトの活用による経理や販売管理の合理化を具体的に支援中。今後はホームページの改善も計画しているという。
ITコーディネータ小野敏夫 氏(左)
itccono@au2.mopera.ne.jp
 
有限責任事業組合ITC 総合研究所
用松節子 氏
http://www.iri-llp.biz



<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
ちょうど社長を引き継ぐ時期に出会え、タイミングが良かったと思っています。わからないことをそのままぶつけられ、精神的にもいていただけることが役立っています。最終決断を下すのは自分ですが、その前に考えを整理したり意見を聞いたりできる相手の存在は大きいですね。(松浦社長 談)

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2010.07.01
最優秀賞連続受賞企業の止まらない進化
煎餅のトレーサビリティで顧客に安心・安全を提供




三州製菓株式会社
所在地 埼玉県春日部市豊野町2-8-3
創業 昭和25年
従業員 225名(正社員42名)
代表 代表取締役社長 斉之平伸一
事業内容 高級米菓の製造販売。商品別売上は、せんべい5 0%、あられ3 0%、洋菓子その他20%。卸売を通さず、地域有名菓子販売店をはじめ有力取引先と直接取引を実行。OEM商品も取り扱い、高い評価を得ている。
年商 28億円
URL http://www.sanshu.com/
     
↑左から総務部ゼネラルマネージャー宮下隆信氏、廣瀬菜穂子氏、藤本恵美子氏
斉之平伸一社長


業界に先んじてトレーサビリティを


IT経営百選・最優秀賞を連続受賞した三州製菓は、新潟県に続く米菓生産県・埼玉県においてトップシェアを誇る米菓製造企業。
  卸売を介さず有力取引先に直納品するのが特徴だ。業界に先んじて生産管理システムを導入し、受注した商品は翌日出荷するというスピーディな受注生産体制を持つ。
  IT活用にも先進性を見せる同社は、2年ほど前からトレーサビリティシステムを企画。ITコーディネータ町田行雄氏のアドバイスを受けつつ、システムの構築を行っている。


ITコーディネータに求めたアドバイス

「お客様の安心・安全意識の高まりに応えるため、生産履歴をすぐに調べられるようにしたかった」
  本システムのリーダー役、総務部の宮下隆信氏は意図を説明する。
  一つの米菓に何か問題が生じたときに、どの材料が使われ、同じ材料で製造したものがどこに流通しているかを把握できるようにしようというものだ。データがわかれば取引先への回答もスピーディに行える。
  しかし、以前から記録はつけていたというものの米菓の材料は、醤油、塩など、形が一定でないものが多数ある。どういった区分で管理していくのだろうか。
  三州製菓が考案したシステムは、原材料を製造時の投入ロット単位で管理し、どれか一つ原材料のロットが変わる単位で異なる識別番号を付与していくというものだ。例えば、米A、醤油A塩Aで製造ラインが動いており途中から米がBになると(米B醤油A、塩A)識別番号が変わる次に醤油がBになるとまた変えるといった具合だ。
  したがってシステム上では、原材料が入庫した時点でデータを入力し2次元バーコードを発行、これを原材料に貼り付ける。そして製造指示書には商品ごとに投入する材料が指定される。製造現場では投入前に原材料のバーコードを読み取り、指定された原材料であることを確認するという流れだ。最後に、商品の識別番号と出荷先の対応関係を記録しておく。
  以上のプロセスをすべてデータ保存することで、問い合せへの迅速な回答や商品追跡を可能にするのである。

すぐに大手取引先から反応が

斉之平伸一社長は、「大手のお取引先からは、さらに安心して発注できると、すでにご評価をいただいております」と手ごたえを感じている。安心・安全への取り組みは、三州製菓の企業価値をさらに高めていくことだろう。


「なぜ、トレーサビリティなのか―三州製菓の経営理念と実践」
斉之平伸一社長に聞く


――社長に就任された20年ほど前、取引先の方向転換を図られたそうですね。
斉之平:9割は流通経由でスーパーなどへ納品していましたが、お客様のニーズがつかめないことやこの市場は大手企業が有利なことから、主要都市の和菓子一番店やテーマパークなどとの直接取引に切り替えました。ニッチマーケットでトップシェアを狙うのは中小企業が取る一番正しい戦略だと思っています。

写真・斉之平伸一社長
斉之平社長は『3倍「仕事脳」がアップするダブル手帳術 右脳手帳・左脳手帳』などの著書を持つ。
――独自性が強い分、他社の真似をすることによる省力化はできませんね。
斉之平:常に先頭に立とうという姿勢で製造ライン、教育体制、コンピューターシステムを方針に沿ったものに変えてきました。お客様の満足を創造する視点で見たときに「安全・安心」は重要テーマであり、今回のトレーサビリティシステムにつながりました。
――良いシステムであるのは間違いありませんが、これですぐ利益が上がる投資ではない。なぜ決行を?
斉之平:消費者ニーズがある以上、それは優先すべき事項です。私どもは経営理念として「安心・安全、クレームを無くすことで顧客満足度を向上する」ということが共有されています。この取り組みをお客様にご評価いただければ、長い目で見れば売上増につながると捉えています。
  製造業はとかくメーカー発想に陥りがちですが、弊社はあくまでも顧客視点で発想し、今後もその考え方を徹底していきます。

ITコーディネータ紹介

首都圏を中心にコンサルティング事業を展開。ITコーディネータを育成するITCインストラクターでもある。
  三州製菓のトレーサビリティシステム導入においては、毎月1回、IT委員会開催に合わせて訪問し(IT推進アドバイザー派遣制度を利用)、約1年にわたり業務分析やシステムベンダーへの提案依頼などを行った。
  本システムは原材料のロットが変わる単位で製造番号を付与していくという詳細情報を扱うシステムである。「時間をかければいくらでも細かくできるが、いかに短時間で必要な情報まで遡れるかの兼ね合いに留意した」と振り返る。

有限会社エム・エイ・コンサルティング
http://www.ma3.biz/


町田行雄 氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
パソコンに詳しい社員はいるものの、システムには素人なのでベンダーさんの言いなりになってしまう。高い見地からアドバイスをいただき過不足ないシステムを作りたいと思ったのがITコーディネータの方を派遣していただいた理由。中小企業ではITの専門家を社員としてなかなか採用できない。町田さんのような専門家に定期的に来ていただけるのは良い仕組みだと思う。
(斉之平社長談)

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2010.07.01
商品の画像データベース活用
佐賀県・有田焼商社 瑞祥 有田の「うつわ」は料理と一体
マニュアル化できない「感性」の商売




有限会社瑞祥
所在地 佐賀県西松浦郡有田町南原甲706-8  
代表取締役 桑原正登 氏
  自らIT 活用に取り組み、「トータルで数千万円レベルの投資をしてきた」。しかし、「IT は合理化、マニュアル化、効率化のイメージ
があり、われわれが大切にする感性をどうぶつけていくかが考えどころ」と強調する。
創業 昭和57 年
従業員 9 名
代表 代表取締役 桑原正登
事業内容 有田焼磁器の販売。とくに料亭、旅館、ホテルなどの高級和食器を中心に展開。うつわを道具としてではなく、料理と対等に競い合い磨き合うものと考え、コンサルティング営業を行っている。澤田痴陶人の作品を取り扱っている。
URL http://www.zuisyo.co.jp/
     
     
    瑞祥のCDカタログシステム
↑取扱商品を分野ごとに整理し検索できるようにしている。ここから提案したい商品画像を選び、組み合わせる。追加注文の場合も、商品名で対応するより画像の方がお互いの意思疎通が速いという。
  インターネット環境が整う会社にはFTP にて画像をアップする。
↑有田焼の作品。プロ向け商品は基本的に受注生産。町全体で分業体制が確立されており、品数が多いため、商社の情報管理力が与える影響は大きい。


提案営業をする「人」をサポートするITとは?

日本を代表する磁器の一つ、有田焼。佐賀県有田市の街に足を踏み入れると、藍や赤を基調にした食器、花瓶を並べる店が次々と現れる。400年の伝統を守り愛され続ける有田焼は、しかし一方で「洋食化する食生活」という時代の波を受け、苦戦を強いられている(総出荷額は平成3年をピークに半減)。
  その中にあって、創業25年ほどを経過した商社・瑞祥は、異業種・市外出身の桑原正登社長が持つ「伝統にとらわれすぎない客観的な視点」を元に有田焼の販売に奔走。取り扱うのは旅館、料亭、ホテルなど「プロ向け」の食器だ。
  プロ向け食器と一般向け食器はまず強度が違う。そしてさらに重要な点を桑原社長はこう説明する。
「和の世界は、器に描かれた自然の中に料理を盛り込みます。メニューと食器の色・絵柄は一体となって創造されるものです」
  つまり、店のコンセプトやメニューの内容をヒヤリングしながら、適した食器を選び出すという「提案営業」が必須なのである。さらに「ご発注前には現物をお持ちして器の質感や料理の盛り付けを確かめていただく」(桑原社長)と、現物のやり取りも欠かさない。
  きめ細かい営業プロセスは同社の強みそのものだが、オフィスのある場所は佐賀県有田市。そこから九州一円をはじめ北陸・伊豆までを4名で回るという現実がある。顧客先が一定数以上になると頻繁に訪問すること自体が難しい。
  さらに取り扱う焼き物の種類は12万点。一度販売した商品は何年経ってもリクエストに応えるのが有田流だが、依頼された食器を探し出すのに手間どることもある。
  桑原社長は対応スピードが遅くなりお客様をお待たせしていることを課題に感じたものの、人間的なつきあいの部分を簡略化したりIT化することを良しとしなかった。しかし、ITを毛嫌いしていたわけではない。
「営業の人間力を発揮させるために、それ以外の部分をIT化してフォローしていく方法を考えた」


商品画像を使って提案をスムーズに

具体的には、取り扱い商品を画像データベースとしてCD化し、ヒヤリングや提案をサポートすることだ。例えば、ヒヤリング後の仮提案段階なら、CDカタログの画像データからお勧めの食器をチョイスしてデータを送付すれば訪問を代替できる。これまで1社につき5回訪問が必要だったとすれば、3回程度に減らせるはずだ。
  営業担当者は、詳細ヒヤリングや見本品持参のクロージングなど、現場での感性やノウハウが求められる訪問に集中し、訪問先企業数の増加を目指す。
  一方、提案を受ける側も、次回の来訪を待たずして回答が得られるので、利便性が高まるのだ。

CDカタログリニューアルにITCのアドバイスを活用

数年前、第一弾の「CDカタログ」が完成したが、画像の鮮明さなどの点で課題もあり、バージョンアップを模索していた。ちょうどそのころ、佐賀県地域産業支援センターが実施した「平成16年度ITコーディネータ派遣制度」により、ITコーディネータ(ITC)坂下正洋氏の派遣を受けることとなり、同氏とともに経営刷新計画に取り組んだ。
  坂下氏は改革プロセスを次のように説明する。
「営業支援・販売チャネル増を目的に経営分析を進めていき、実現手段の一つがCDカタログのバージョンアップでした。対応可能なベンダーを探し、Web対応も視野に入れたシステム提案依頼書を作成しました」
  坂下氏からシステムベンダー・三和コンピュータへの橋渡しはスムーズに行われ「少しずつ桑原社長のお考えが理解でき、他業種でも応用できる仕組みが完成しつつあります」(三和コンピュータ・平野哲也氏)」。桑原社長はITCの広い視野での方向付け、ITベンダーの熱心
な働きぶり双方に満足しているとのことだ。
  新しいCDカタログシステムが訪問先企業数増を導けば、有田焼を使用する料亭の数も増え、豊かな食文化の提供につながる。
「感性」をサポートするのもITの役割の一つなのだ。


ITコーディネータ紹介

 佐賀県を中心に九州北部でコンサルティングを行っている。
  瑞祥の支援では、まず、バランススコアカードによる分析などを行い営業革新を目指した。その後、CDカタログリニューアルや営業支援システム作りを具体化するため、IT 推進アドバイザー派遣制度により派遣を受け、約8ヶ月にわたりIT 活用へのサポートを行った。
  現在は、CDカタログリニューアルのほかに、携帯電話とブログを用いた営業日報、Web サイトリニューアルによる販売推進を並行して進めている。

みのりITコンサルティング
http://www.minori-itc.com/

坂下 正洋 氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
以前も専門家派遣制度を利用したことがありますが、その際は満足した結果が得られませんでした。坂下さんは会社のことを深く理解してくださり、波長も合ったと思います。経営者は事業内容・経営全体が視野に入ったIT活用のアドバイスを求めています。坂下さんにはますますこの方向で指導してもらいたいと思っています。(桑原社長談)

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2010.07.01
Webの戦略的活用
三重県 津市 養豚・販売業 大西畜産
(平成18年度IT経営百選優秀賞受賞)




有限会社大西畜産
所在地 三重県津市久居明神町1252-4  
代表取締役社長
大西良和 氏

創業 平成14 年
従業員 9 名
事業内容 養豚業・食肉処理業・食肉販売業 ブランド名「頑固おやじのぶた」
URL http://www.gankooyazi.com/
http://www.rakuten.co.jp/gankooyazi/
     
    豚の左耳にトレース番号を記したタグがつけられている。
商品上のトレース番号を大西畜産のWebサイトで検索すると、 飼育環境や治療履歴などを調べることができる。



畜産業を製造業と捉え、経営改革を

「以前、豚肉価格が大幅に下がった時期があり、一生懸命作った肉が叩き売りされ、われわれは赤字。非常に悔しくて。これでは農業はいつまでたってもダメやと」
 三重県津市の大西畜産は年間3600頭の豚を出荷。大西良和社長は「畜産は製造業」と とらえ、コンピューターを使って豚の出産から出荷までを「生産管理」中。生産量の伸びも上々だ。
 しかし、農産物である豚は相場で取引される商品。丹精込めて作っても買い手の言い値で売るしかない。価格決定権を持つためには、自ら販売を手がけるのが近道だ。
 「お客様に頭を下げて売った経験がないわけですから、厳しいのはわかっていました。しかしあえて挑戦しよう、自分で値段をつけ、お客様の指示を仰ごうと思ったのです」
 生産と並行して小売販売(ミート事業)も行い農業経営の弱みを克服する――大西社長が大きな決断をしたのは平成15年の秋だった。


ITコーディネータとともに「安心・安全」の実現へ

直接消費者に販売するとなれば、スーパーなどで売られる通常商品との差別化が必要だ。大西畜産では品種やえさ、水の吟味と大西社長の研究の積み重ねで、野獣臭を抑え、脂身もおいしく食べられるさっぱり感のある肉を生産。「頑固おやじのぶた」というブランド名を付け、消費者に胸をはれるだけの「こだわり」があった。
 大西社長はこれに加え、消費者の安心・安全意識に応えられる生産情報の開示を企画。豚の品種や病歴など、飼育履歴を記録し顧客から閲覧できる仕組みを作るというものだ。「トレーサビリティ」に対応できれば、ブランドイメージも固められる。
 小売への進出とトレーサビリティ。二つの取り組みを具体化するにあたっては知人の紹介でITコーディネータの資格を持つ小柴光司氏をサポーター役に迎え、Webサイト制作やシステムの構築を進めた。また、同社の活動は三重県の「平成16年度 食の安心リーディングビジネス創出事業」で優秀賞を獲得し、補助金が支給されることとなった。


低コストのトレーサビリティ 直販は売上の10%に

直接販売については、加工方法や値決めなどを試行錯誤しながら学びつつ、近隣地区への移動販売とWebサイトショッピングモール「楽天」によるネット販売をスタート。Webサイトでは週2回、曜日を決めて顧客からのオーダーを受けている。小柴氏は、大西畜産の強みを引き出してWeb上で積極的にアピール。「頑固おやじ」のこだわりの内容をリアルに伝え、その価値を感じてもらうようにした。
 トレーサビリティについては、ICタグを使うような高度なシステムは費用もかかる。そこで、小柴氏の提案を元に豚の耳に個体番号を刻印し、病気や治療が発生した豚はデータベースに記録する方法を考案した。
 ただ、課題が一つあった。屠畜は社外で行うので、この段階で正しく番号を記録してもらえないとせっかくのデータも使えなくなってしまうのだ。
 屠畜場の担当者は、当初は難色を示したが、大西社長の懸命な依頼を受け、他県に先んじる先進的な取り組みに同意。現在は耳刻された個体番号が入れ換わることなく記録され、販売品のラベルに貼られるようになった。
 実際に小売販売を始めてから約2年半が過ぎ、直接販売は年間売り上げの約10%、1500万円を占めるようになった。Webでの売上はそのうちの1割ほどだ。大西社長は「食べ物の小売は非常に難しい。Webでの月間売上100万円を第一目標に、長い目で見て育てていきたい。正直に作り続けていけば支持が得られていくと思う」と長期計画を立てている。
 無理のないIT投資で課題の小売販売に踏みきれたことは、同社に自信と可能性をもたらした。


ITコーディネータ紹介

 現在は愛知県にオフィスを構え、三重県、愛知県の企業を中心にホームページ制作やシステム構築を行っている。
 大西畜産には財団法人三重県産業支援センターの専門家派遣制度を利用して、小売業展開のサポート、ホームページ制作およびトレーサビリティシステム構築を行った。
 ICタグを使ったトレーサビリティシステムなどは高額な費用がかかるため、目的を理解し、低予算ながら消費者の安心・安全要求に応えられるシステムを大西社長に提案した。
 「私がお手伝いしたのは社長が頭の中で考えられていることを引き出し、文書化して事業プランにし、形にすることでした」と振り返る。その結果が、三重県で認められ補助金交付にもつながった。

有限会社 シーエスプラス
http://www.csplus.jp/

有限会社
シーエスプラス
取締役社長
小柴光司  氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
小柴さんは大変親切にやってくださり感謝しています。私は肉のことなら普段の延長でどんどん考えますが、システムとなると専門ではありませんので。トレーサビリティシステムでは、養豚の特殊性や費用などの実情に即した方法が見出せました。IT分野だけでなく、販売に関わる具体的な手法にもアドバイスをいただいています。(大西社長 談)

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2010.07.01
従業員増加で会社の「変わり目」に経営戦略を策定し針路を定める
富山県富山市 金属板金業 コンチネンタル




有限会社コンチネンタル
所在地 富山県富山市水橋沖172  
代表取締役社長
岡田幸雄 氏

創業 平成3 年
従業員 36 名
事業内容 金属鋼板を利用した工作機械カバーの製作他
URL http://www.continental-ltd.com
     


中小企業向け公的支援制度「専門家派遣制度」を上手に活用している企業の経営者に利用のきっかけと会社の現状を聞いた。

――岡田社長は以前、呉服店に勤務されていたそうですね。
岡田社長(以下敬称略) 現在は工作機械のカバーを作る機械板金事業をしていますが、呉服という「商」の世界から来ましたので、その特徴が出ているかもしれません。鉄工所の中では「愛想の良い会社」だと思います。
――顧客対応への工夫としてはどのような特徴があるのですか。
岡田 現在、月間約2500の商品を受注生産しています。リピート注文は3割程度ですが、お客様に一度頼まれた品は、次の受注時に金額や図面、工程表といった資料をきちんと出したい。記憶をたどって必死に探すのですが、大変な作業で...。
ITでなんとかできないかと考え、受注管理のシステムを構築しました。
――財団法人富山県新世紀産業機構の専門家派遣制度を利用してITコーディネータを活用されたそうですが、どのようなきっかけからですか。
岡田 以前から足を運んでいた富山県新世紀産業機構のインターネット活用アドバイザーとして来てくださったのがITコーディネータの宇田川さんでした。それが縁で平成16年から今まで計3回(のべ25日間)ほど専門家派遣制度を使ってコンサルティングをお願いしています。ものの考え方が大変勉強になりました。
――相談内容は?
岡田 初めはホームページのリニューアルを相談しましたが、2期目はIT相談ではなく、経営戦略企画書の策定がテーマでした。
従業員が15人を超えたころから、会社が変わり目に来ていることを感じ、普段口では話している会社の方針や経営戦略をきちんと言葉にして従業員の方々に理解してもらいたいと考えたのです。宇田川さんは、私の話をうまく吸収して理解してくださり、企業として目指すべき方向性について、経営幹部と合意が図れました。

――社長として、ITの活用で留意されていることは何ですか。
岡田 「情報共有」とよく言われますが、共有できていない会社が多い。私は情報を伝えることには全精力を傾けています。
現在の受注システムでは品物の値段も作業にかかった時間も全部見える。わからないのは各人の給料くらいでしょう。
それとデータは必ず正確に入力します。正確でないと価値がありませんので。


ITコーディネータ紹介

 宇田川氏はITコーディネータの育成に関わるITCインストラクターも務める。コンサルティングにおいては大企業から中小企業まで多岐にわたる業務経験を活かし、経営幹部との合意形成をはかりながら経営革新をサポートすることを心がけている。
 インターネット活用のアドバイザーとして出会ったコンチネンタルの岡田社長には、経営者研修会を紹介したこともあり、4年にわたってサポートを行っている。
 岡田社長の元には他のコンサルティング会社からの営業も多いそうだが、「商売気の強い人、成功への方法を押し付ける人」には違和感を感じるそうだ。宇田川氏については、性格が正反対な点に相性の良さを感じ、「親身になって基本的なことからコーディネートする姿勢」を評価している。

有限会社システムユニオン
http://www.sys-uni.co.jp/
ITコーディネータ富山
http://www.itc-toyama.org/

ITコーディネータ
宇田川静夫  氏

有限会社
システムユニオン
ITコーディネータ富山



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2010.06.15
 

有限会社コンチネンタル



従業員増加で会社の「変わり目」に経営戦略を策定し針路を定める
従業員が15人超えたころから、会社が変わり目に来ていることを感じ、普段口では話している会社の方針や経営戦略をきちんと言葉にして従業員の方々に理解してもらいたいと考えたのです。

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有限会社大西畜産



値決めができない畜産業を超える安心・安全な豚肉を直接消費者へ
三重県津市の大西畜産は年間3600頭の豚を出荷。大西良和社長は「畜産は製造業」ととらえ、コンピューターを使って豚の出産から出荷までを「生産管理」中。生産量の伸びも上々だ。

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有限会社瑞祥



有田の「うつわ」は料理と一体 マニュアル化できない「感性」の商売
佐賀県有田市の、創業25年ほどを経過した商社・瑞祥。
異業種・市外出身の桑原社長のモットーは「伝統にとらわれすぎない客観的な視点」。 ITCと共に、営業を効率化するために桑原社長が挑んだCDカタログ活用による営業改革とは?

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三州製菓株式会社



IT経営百選最優秀賞連続受賞企業の止まらない進化
「なぜ、トレーサビリティシステムを導入するのか?」斉之平伸一社長が三州製菓の経営理念から解きほぐしてその理由を語る。

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有限会社松浦製作所



第三者との議論がとまどいを自信に変えた 事業計画立案で新体制を出航
東京都大田区南蒲田の精密機械部品製造 松浦製作所。 
二代目社長の松浦氏は経営を受け継ぎ、まもなく1年。大田区産業振興協会ビジネスサポート事業の支援制度などを活用し、ITコーディネータの支援を受ける機会を得てから、現状把握や経営方針策定が円滑に進み始めた。そのプロセスを紹介。

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池田工業株式会社



取引先の要望に応え、選ばれる会社に!欲しいのは生産の現状を把握できる仕組み

祖父が始めた事業を受け継ぎ2003年に社長となった池田氏は、ITを活用した生産管理を実現したいと考えたが、良い方法が見出せないでいた。
しかし中小企業金融公庫名古屋支店から参加を勧められたIT経営応援隊の経営者研修会でITCと出会い、2007年の新システム構築を目指すことになった。

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株式会社サンワテクノス



統一規格のない3次元CADに一工夫 経営分析を通じオープン経営の基盤づくり

火力発電所や原子力発電所の配管を設計・製作している広島県呉市のサンワテクノス。
長行事社長が方針として挙げる「オープンな経営」を実現するために、IT活用の前に自社の業務分析を行ない、IT活用型経営革新モデル事業の採択を受けて効果的なIT投資を実現した事例を紹介。

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株式会社入船



お客様は今、何を注文した?レジを変えたら店舗が見えてきた!

兵庫県内に17のレストラン直営店舗を展開する株式会社入船。飲食店には、来店を促す販売促進が欠かせない。
レストラン事業部企画課長の安木氏が、財団法人ひょうご産業活性化センターの専門家派遣制度を利用し、ITコーディネータのアドバイスを受け、販売管理を超えて、店舗内の顧客の動向をリアルタイムに伝えるシステム作りに成功した事例を紹介。

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福井県建設鉄工協同組合



同業者間で「手の内」を明かす?!ブランド確立は結束力から

78社の建設鉄工会社が結束し、協力し合っている福井県建設鉄工協同組合。応援を求めるなら、競合する近隣の同業者より、商圏が異なる企業に声をかける方が自然な気がする。同組合は、なぜ県内企業同士の受発注システムを必要としたのか?仲間を増やして供給力を上げた事例を紹介。

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中小企業金融公庫 名古屋支店



金融機関がIT化需要を掘り起こしITコーディネータとのマッチングへ

企業経営者とITコーディネータがいかに出会うか?きっかけ作りは、どの地域でも抱える共通の課題だ。愛知県の中小企業金融公庫名古屋支店では、ITC組織「NSC-ITCC」と連携し、ITコーディネータとのマッチングの機会を創出。金融機関が経営者の迷いを行動に変える触媒となり、IT経営への潜在ニーズをキャッチして成果をあげ、企業-金融機関-ITコーディネータそれぞれに利益がもたらされるwin-winのモデルが生まれつつある。


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株式会社地域法人無茶々園




栽培プロセスを消費者に伝える!ミカン農家80戸がパソコンと格闘

無茶々園は有機肥料を使い、安全で環境破壊をしない農法を行うミカン農家の連合組織だ。作り手と消費者との関係作りを更に強化するためにミカンの「育ち」=トレーサビリティをwebで公開し、これからの農業経営に取り組んでいる。

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八戸塗料販売株式会社



経営分析からIT化へ
~ 自社の現状を分析し新経営戦略が見えてきた! ~


青森県八戸市で塗料の流通業を営む八戸塗料販売。「在庫管理」と「営業情報共有」の改革を重点課題とし、販売力向上に取り組む。 中小企業経営改革新支援法認定。

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株式会社日榮建設




施工実績の共有からスタートした建設業の生き残り策

受注の100%が公共工事という、北海道札幌市の日栄建設。将来、公共工事の減少が予想される中、生き残りをかけ、長期ビジョンに基づく情報化を決意。最初に着手したのは、通信環境の整備だった。 札幌市中小建設業経営IT化促進モデル事業認定。

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湯沢町温泉旅館商業協同組合




組合一丸で改革遂行
~ 「顧客の変化がわかる町」へ意識改革と契機を作る ~


「街全体で顧客サービス向上へ」スキー場で有名な温泉地、湯沢町温泉旅館商業協同組合。ネット予約によりITの効果を体感したメンバーはITコーディネータと共に顧客データベース整備の更なるステップへと乗り出す! 平成16年IT活用型経営革新モデル事業採択決定。

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有限会社プリンス




販売促進
~ 店舗の強みを探り、Webサイトの戦略活用へ ~


横浜 伊勢佐木町商店街に店舗を構える高級紳士服洋品店「プリンス」。次世代の顧客開拓という課題に、実店舗の強みをHP上で展開していく戦略で、ITコーディネータと二人三脚で取り組んでいます。

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